ボリス・ヴィアンの嘲り

タイトルに惹かれて読み出した
ボリス・ヴィアンの小説、
『墓に唾をかけろ』。
ヴァーノン・サリヴァンの原作を
ボリス・ヴィアンが訳したものだと
「まえがき」には書かれている。

この小説は風俗攪乱の懼れありと
訴えられて話題となりベストセラー。
それも裁判でサリヴァンなる人物は
実はヴィアン本人だったという偽り。
このスキャンダルでさらに大ヒット。
ヴィアンはその13年後39歳で死ぬ。

一度は消えてしまったこの本が
再び脚光を浴びたのが20年後。
伊東守男が訳したものがこのとき
早川書房から出版されたのである。
金髪で黒い肌ではない米国の黒人が、
大金持ちの白人美人姉妹を殺す話。

戦後の人種差別問題を呈しているようだが、
単なるエログロの通俗小説と言って良い。
ヴィアンは技師であり小説家であり、
トランペットを奏でるジャズメンであり、
シャンソン歌手であり作詩作曲も手がけ、
映画監督、脚本家、画家と様々な顔をもつ。

文壇などの権威主義を愚弄し、
自由奔放に思ったまま活動する男。
自分で書いた小説を翻訳と偽り、
マスコミやお偉方を嘲笑う大胆不敵。
それ故に若者たちから熱烈に支持される。
小説ではやたらと人を殺しまくるが、
自分の命が長くないことを知っていたためか。