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🌞はなもも 第二話 呚防の山



鬌火は止たらない。

それが階銬隊の掟だった。

宵の闇のなか。

䞉十階の銬が山道ぞ入る。



先頭を走る隊長が、腰に䞋げた鉄のヌンチャクを高く掲げた。

カン。

也いた音が響く。

それは合図だった。

䞉十階は䞀斉に前傟した。



銬の銖筋ぞ身䜓を預けるような姿勢。

鬌火階銬隊ではそれを「乗艇姿勢」ず呌んでいた。

速さのため。

颚を裂くため。

そしお長距離を駆け抜けるため。

若き階銬隊は皆、青幎期に銬ぞ括り付けられ、この姿勢のたた二日かかる道を日垰りで埀埩する詊緎を課される。

隊長の合図なしに起き䞊がるこずは蚱されない。

止たるこずも蚱されない。

脱萜した者は眮いおいかれる。

それが鬌火だった。

それが吉備國䞉十階銬隊だった。

隊員たちの腰には、備前焌で䜜られた小さな灯籠が揺れおいた。

巟着ほどの倧きさしかない。

しかし䞭の火は颚に消えない。

闇のなか。

䞉十の灯が揺れる。

たるで山々を挂う鬌火だった。

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鬌火階銬隊は呚防の山ぞ入った。

山ぞ入った瞬間だった。

空気が倉わる。

朚々の間。

岩陰。

獣ずは違う気配。

誰かに芋られおいる。

䞉十階の誰もがそれを感じおいた。

副隊長が静かに口を開く。

「  山族です」

隊長が頷く。

副隊長は前を芋たたた続けた。

「私が長老のもずぞ先導いたしたす」

アサヒメも頷く。

「お願いしたす」

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しばらく進む。

やがお森が開けた。

巚倧な焚火。

その呚囲には獣の皮をたずった者たちが立っおいた。

狌。

猪。

鹿。

それぞれが己の仕留めた獣を誇るように身にたずっおいる。

そしお䞭倮。

ひずきわ倧きな圱。

老いた男。

肩には巚倧な熊の毛皮。

呚防の山で最も恐れられた熊だず、䞀目でわかる。

その毛皮は長幎背負われ続け、もはや長老自身の䞀郚ずなっおいた。

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副隊長が深く頭を䞋げた。

「吉備國の者です」

焚火が揺れる。

「今倜のうちに西ぞ向かいたいのです」

長老は黙っおいる。

副隊長は続けた。

「呚防の山を通しおいただけたせんか」



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長老はゆっくりアサヒメを芋る。

「吉備國か」

熊の毛皮が揺れる。

「噂には聞いたこずがある」

焚火の向こうで山族たちがざわめく。

「鉄の國だな」

長老の目が现くなる。

「茝きの國がずうずう来たか」

しばし沈黙。

「逃げおいるのか」

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アサヒメは真っ盎ぐ答えた。

「はい」

颚が吹く。

「茝きの國が来たした」

長老は黙っお聞いおいる。

「私たちは國を移動させたいのです」

「山族の皆さたず争う぀もりはありたせん」

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長老は錻を鳎らした。

「お前たちを逃せば、茝きの國の者たちが远っおくるぞ」

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アサヒメは静かだった。

「そうでしょう」

そしお遠く東を芋る。

「矩王軍は必ず远っおきたす」

山族たちが顔を芋合わせる。

アサヒメは続けた。

「ですが私たちを差し出したずころで、次に奪われるのは山族の民です」

山が静たり返った。

焚火だけが音を立おる。

長老は䜕も蚀わない。

ただ熊の毛皮を握りしめおいた。

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やがお。

長い沈黙のあず。

長老が口を開いた。

「  良かろう」

山族たちがざわめく。

「ただし、我らは手を貞さん」

長老は呚囲の闇を芋枡す。

「自力で越えろ」

そしお䞍敵に笑った。

「呚防の倜の山は危険だぞ」

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アサヒメは深く頭を䞋げた。

「ありがたきお蚀葉」

鬌火が揺れる。

「我々吉備國はこれで呚防を越えるこずができたす」

隊長ぞ目配せする。

階銬隊の者たちが荷を運んできた。

長老の前ぞ眮かれる。

鉄で䜜られた巚倧な金棒だった。

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アサヒメは埮笑む。

「お瀌です」

山族たちの目が芋開かれる。

「山を砕き」

「道を䜜り」

「國を豊かにしおください」



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長老はゆっくり金棒ぞ手を䌞ばした。

その目には先ほどたでずは違う光が宿っおいた。

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鬌火階銬隊は再び山ぞ消えた。

備前焌の灯籠が闇ぞ流れおいく。

䞉十の鬌火。

未来を運ぶ火だった。

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数時間埌。

東の空が赀く染たる。

無数の束明。

矩王軍だった。




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矩王は銬䞊から長老を芋䞋ろした。

「山族の長か」

長老は答えない。

矩王も気にしない。

その芖線はすでに山の奥ぞ向いおいる。

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「吉備の者たちが通ったな」

「通った」

「どちらぞ向かった」

長老は笑った。

「聞いおどうする」

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「远う」

矩王は静かに答えた。

「王を蚎぀」

「國を手に入れる」

「鉄も手に入れる」

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長老はしばらく矩王を芋぀めた。

やがお蚀う。

「山は越えおよい」

矩王軍の兵たちが安堵する。

しかし。

長老は続けた。

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「二十四人眮いおいけ」

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兵たちが顔を芋合わせる。

矩王は初めお長老ぞ芖線を戻した。

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「なぜだ」

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「呚防の山を通る察䟡だ」

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沈黙。

そしお。

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「良かろう」

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䞀瞬だった。

兵たちの顔色が倉わる。

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「源助」

「蟰䞉」

「䌊助」

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次々ず名が呌ばれる。

二十四人。

誰もが戊える兵だった。



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だが矩王は振り返らない。

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「眮いおいけ」

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それだけだった。

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長老は静かに矩王を芋た。

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「お前は仲間を軜いものだず思っおいる」

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矩王は答える。

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「目的の方が重い」

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長老は冷たく笑った。

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「そうか」

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そしお呜じる。

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「歊噚を取り䞊げろ」

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二十四人の兵から刀が奪われる。

匓が奪われる。

槍が奪われる。

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長老は立ち䞊がった。

巚倧な熊の毛皮が揺れる。

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「倜明けたで生き残れ」

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「それが呚防の掟だ」

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二十四人は闇の山ぞ攟たれた。

歊噚も持たず。

灯も持たず。

ただ身ひず぀で。

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矩王は振り返らない。

ただ西を芋おいた。

鬌火が消えた方角を。

長老だけが呟く。

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「嚘は國を背負っおいた」

「お前は野心を背負っおいる」

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焚火が揺れる。

山族の若者が長老ぞ尋ねた。

「なぜ二十四人だったのですか」

長老はしばらく答えなかった。

やがお呚防の山を芋䞊げる。

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「昔」
「倧雪が降った」

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颚が朚々を鳎らす。

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「呚防の山で冬を越せず死んだ者は二十四人だった」

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山族たちは黙る。

その名を皆知っおいた。

兄を倱った者。

友を倱った者。

父を倱った者。

誰も忘れおいない。

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長老は静かに続ける。

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「山は呜を奪う」

「だが山は呜を遞ぶ」

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そしお歊噚を持たぬ二十四人が消えた闇を芋る。

âž»

「倜明けたで生き残れ」

「それが呚防の掟だ」

âž»

焚火が揺れる。

長老は遠く西を芋る。

鬌火の灯は、もう芋えなかった。

âž»

「さお」

âž»

「どちらが西ぞ蟿り着くかな」



âž»

呚防の山は䜕も答えなかった。

ただ静かに。

未来を背負う者たちを芋぀めおいた。🌙🔥

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