日本代表対アイスランド戦で見た「交代10秒ルール」|少年サッカーでの適用を考える
ワールドカップ本戦前の壮行試合となった日本代表対アイスランド代表戦を観戦していたときのことです。
審判員目線で試合を見ていると、どうしてもプレー以外の部分も気になります。
今回、私が気になっていたのは、このワールドカップで適用されるサッカー競技規則2026/27の改正内容でした。
その中でも注目していたのが、選手交代に関するいわゆる「10秒ルール」です。
そして試合中、そのルールが実際に適用される場面を初めて見ることになりました。
📝「あれ?」と思った主審のジェスチャー
アイスランド代表の選手交代の場面でした。
交代の合図が出たあと、主審が交代で入る選手に対して何かを制止するようなジェスチャーをしていました。
「何だろう?」
そう思って見ていると、解説者が
「退く選手が10秒以内に競技のフィールドを出なかったから、主審が交代選手に入らないよう制止したのでしょうね」
と説明していました。
そこで初めて、「ああ、これが改正された10秒ルールの適用か」と気付きました。
映像では、第四の審判員が交代で入る選手を制止しながら時間を計測しているように見えました。
その後、日本代表が小川選手のゴールで先制したタイミングで、交代選手が入場したように見受けられました。
ルール改正の適用事例を実際の試合で見たのは、私自身これが初めてでした。
📝交代10秒ルールとは
今回の改正では、退く選手は交代ボードが提示された時点(交代ボードがない場合は主審の合図)から10秒以内に競技のフィールドを離れなければなりません。
10秒以内に退かなかった場合でも、その選手は競技のフィールドを離れますが、交代で入る選手はすぐには入場できません。
再開後1分間が経過し、その後最初にボールがアウトオブプレーになったタイミングまで入場できないことになります。
つまり、交代を遅らせたチームは、一時的に数的不利な状態でプレーを続けることになります。
交代が行われるとき、競技者は10秒以内に競技のフィールドから離れなければならない。その時間 制限を超えた場合、交代要員は1分が経過した後の最初のアウトオブプレーまでフィールドに入るこ とができない。
「2026/27 競技規則の変更の概要」
より抜粋
📝この改正は効果がありそう
個人的には、この改正はプロレベルの試合では一定の効果がありそうだと感じています。
試合終盤、リードしているチームが選手交代に時間をかける場面は珍しくありません。
もちろん戦術の一部とも言えますが、見ている側としては「早く再開してほしいな」と感じることもあります。
そうした意図的な時間消費に対して、明確なデメリットを設けたという意味では、試合の進行をスムーズにする効果が期待できそうです。
📝では少年サッカーではどうなるのか
ここからが今回の記事で考えたかった部分です。
少年サッカー、特に8人制ではどうでしょうか。
私の経験では、少年サッカーで交代によって試合再開が遅れる場面はほとんどありません。
その理由は、多くの8人制大会で採用されている自由交代制度にあります。
ゴールキーパー以外の選手は、アウトオブプレーを待たずに交代できるため、そもそも選手交代が試合進行を止める要因になりにくいのです。
また、8人制サッカーでは退場が発生した場合でも、選手の入れ替えが可能です。
8人制サッカー競技規則
第12条「ファウルと不正行為」
競技者が退場を命じられた場合、その競技者のチームは競技のフィールドでプレーする競技者を補充することができる。
そのため、「交代が遅れたら一定時間数的不利になる」という考え方自体が、少年サッカーの競技環境とは少し相性が良くないようにも感じます。
現時点では、多くの少年サッカーの大会でこのルールがそのまま適用される可能性は高くないのではないかと思っています。
📝もし適用するなら課題も多い
仮に少年サッカーでこのルールを採用するとしても、実務上の課題は少なくありません。
例えば、
10秒のカウントは誰が行うのか
1分間の計測は誰が管理するのか
第四の審判員がいない試合でどう運用するのか
2人審判制で対応できるのか
指導者や選手への周知をどう行うのか
といった点です。
プロの試合であれば第四の審判員がサポートできます。
しかし、私たちが担当する少年サッカーの現場では、主審と副審だけ、あるいは2人審判制というケースも珍しくありません。
競技規則に書かれていることを、そのまま現場へ持ち込めるとは限らないということを改めて感じました。
📝大切なのは競技会要項を確認すること
今回、アイスランド戦で実際の適用場面を見たことで、ルール改正をより身近に感じました。
ただ、少年サッカーの現場で本当に重要なのは、「改正されたから必ず適用される」と考えないことだと思います。
競技規則が改正されても、年代や大会によって適用方法が異なることは珍しくありません。
だからこそ、担当する大会の競技会要項やローカルルールを事前に確認することが大切です。
今回の10秒ルールも、適用されるのか、適用されないのか、あるいは独自の運用があるのか。
その確認こそが、私たち少年サッカー審判にとって最も実務的な対応なのかもしれません。
テレビ観戦中に見つけた一つのルール適用シーンでしたが、改めて「競技規則を知ること」と「大会運営を知ること」は別だと感じた出来事でした。
