Jリーグでは見えない少年サッカー審判の試合準備|②メンバーチェックはただの「点呼」ではありません
Jリーグや日本代表の試合では、キックオフ前の試合準備の様子はほとんど映りません。
しかし、少年サッカーの審判は、試合開始までの短い時間の中で、多くの準備をしています。
このシリーズでは、テレビ中継では見えない「試合開始までの審判実務」を紹介しています。
前回はコイントスを取り上げました。
今回は、その前で行われるメンバーチェックについてです。
「選手の名前を確認するだけ」と思われがちですが、実際には試合を成立させ、安全に始めるための大切な確認作業でもあります。
📝メンバーチェックの目的は2つ
私がメンバーチェックで一番大切だと考えている目的は、次の2つです。
登録された選手が正しく出場しているかを確認すること
選手が安全にプレーできる状態かを確認すること
大会によって多少方法は異なりますが、この2つは共通しています。
また、誰がメンバーチェックを担当するかも、大会や審判人数によって変わります。
4人審判制では副審が担当することが多いですが、
2人審判制ではチーフ/サブ主審それぞれで分担することもあります。
少年サッカーでは、審判団全体で協力して進める実務と考えた方が分かりやすいと思います。
📝私たちが行っているメンバーチェックの流れ
私が経験してきた大会では、おおむね次の流れで進めています。
【メンバ―チェックの進め方】
① メンバー表を受け取る
② 先発・控えを含め、選手全員に整列してもらう
③ 背番号を読み上げ、選手本人に氏名を言ってもらい、メンバー表と照合する
④ すね当てを装着しているか確認する
⑤ スパイクやトレーニングシューズの足裏を確認し、危険なものがないかを見る
⑥ チェックが終わったらメンバー表を主審へ渡し、必要に応じて第四の審判員が保管する
都道府県大会などでは、これに加えて顔写真付きの選手登録証を、チーム指導者から受け取って、本人を照合することもあります。
テレビでは、数秒しか映らない場面ですが、
実際には一人ひとり確認しながら進めています。
📝イレギュラーは意外と多い
メンバーチェックでは、思っている以上にイレギュラーが起こります。
印象に残っているのは、メンバー表ではフィールドプレーヤーとして登録されている選手が、別の番号のゴールキーパーユニフォームを着て並んでいた試合です。
指導者に確認すると、前の試合でゴールキーパーが負傷し、その選手が代わりを務めることになったとのことでした。負傷した選手がベンチ入りしていないことも確認し、その内容を主審へ共有したうえで試合を開始しました。
メンバー表と実際の状況が違っていても、理由を確認し、審判団で情報共有することが大切だと感じた場面でした。
📝全員そろわないこともある
河川敷の会場で行われた大会では、トイレが競技フィールドから遠く、メンバーチェックの時間になっても、交代要員としてメンバー表に記載があった数名の選手が到着していないことがありました。
試合開始時刻は迫っています。
そこで、先に集まっている選手だけ確認し、未確認の選手には印を付けて、残りは第四の審判員へ引き継ぎました。
「全員が戻るまで待つ」だけでは、キックオフ時刻に影響することもあります。
審判団で中で1名、3級審判員がいて、競技規則に以下の文言があることを共有した上で、適切に役割分担できたからこそ、落ち着いて対応できたケースでした。
第3条「競技者」
1.競技者の数
(中略)
競技会規定ですべての競技者と交代要員の氏名をキックオフの前に届けなければならないとしているものの、チームが11人未満の競技者で試合を開始した場合、チームリストに氏名が届けられている競技者と交代要員のみが、到着後試合に参加することができる。
第3条「競技者」より抜粋
📝メンバーチェックは試合中にもつながる
もう一つ印象に残っているのは、ユニフォームチェックで決めた色とは違うソックスを履いていた選手がいた試合です。
確認すると、指定された色のソックスを自宅へ忘れてきたとのことでした。
競技規則や大会要項に従い、そのソックスでは出場できないことを指導者へ説明し、メンバー表にも印を付けました。
さらに、誤って出場させないよう第四の審判員にも共有しました。
メンバーチェックは、その場だけで終わる仕事ではありません。
試合中の選手交代やトラブル対応にもつながるため、審判団で情報を共有しておくことが大切だと感じています。
第4条「競技者の用具」
3.色
・両チームは、お互いに、また審判員と区別できる色の服装を着用しなければならない。
・それぞれのゴールキーパーは、他の競技者、審判員と区別できる色の服装を着用しなければならない。
・両チームのゴールキーパーのシャツが同色で、両者が他のシャツと着替えることができない場合、主審は、試合を行うことを認める。
(以下略)
第3条「競技者」より抜粋
試合開始30分前に、正副2組のユニフォームを持参して、審判員によるチェックを受ける。
(対戦相手と類似色の場合は、話し合いにより主審が決定する)
📝おわりに
テレビ中継では、選手が入場する直前の様子しか映りません。
しかし、その前には、登録された選手が正しくそろっているか、安全にプレーできる状態かを確認する大切な時間があります。
私自身も、さまざまなイレギュラーを経験する中で、一人で抱え込まず、審判団で情報を共有しながら進めることの大切さを学んできました。
これから主審や副審を担当する方も、メンバーチェックの目的と流れを知っておくだけで、当日の動きがイメージしやすくなると思います。
次回は、メンバーチェックでも確認している用具チェックについて、現場で気を付けているポイントを紹介します。
