高齢者の犯罪はなぜ起きる?―その背景と、再犯を防ぐために必要な支援
高齢者の犯罪は、決して遠い問題ではない
高齢化が進む中で、「高齢者の犯罪」も更生保護を考えるうえで大切なテーマになっています。
令和7年版犯罪白書によると、2024年(令和6年)の刑法犯検挙人員のうち、65歳以上は4万1,070人で、全体の21.4%を占めています。もっとも、高齢者の検挙人員そのものは平成20年をピークに、その後は減少傾向にあります。
つまり、「高齢者の犯罪が一方的に増え続けている」という単純な話ではありません。
多いのは窃盗、特に万引き
高齢者の犯罪では、窃盗の割合が高いことが特徴です。
特に女性高齢者では、刑法犯検挙人員の約9割が窃盗で、そのうち万引きが約8割を占めています。
ただ、数字だけを見て「なぜ盗るのだろう」と考えるだけでは十分ではありません。
窃盗を繰り返す人の中には、クレプトマニア(窃盗症)と呼ばれる精神疾患を抱えている場合もあります。
その場合には、専門的な治療や自助グループなどにつながることが必要になることもあります。
高齢になると、経済的な困窮だけでなく、家族との関係、孤立、精神的な不安、生活環境の変化など、さまざまな問題が重なることがあります。
犯罪そのものへの責任を考えることと、その背景にある生活上の課題を見ることは、別のものではないと思います。
ただ、私も70代の対象者を受け持ったことがありますが、生活上の課題だけではなく、生育歴や人生の歩みの中で生じたさまざまな課題が複合的に絡んでいると感じました。
「罰したあと」をどう支えるか
高齢者の場合、刑務所を出たあとに、住む場所や頼れる人がいないこともあります。
また、これまでと同じように働くことが難しい人もいるでしょう。
だからこそ、再犯を防ぐためには、本人への指導だけではなく、福祉や地域との連携も重要になります。
犯罪をしたという事実だけを見るのではなく、その人が社会に戻ったあと、どうすれば再び安定した生活を築けるのか。
私は特に、人とのつながりを意識することが大切だと感じています。
家族に限らず、頼れる人や何気ない話のできる人が身近にいることは、魔が差しそうになったときの一つのストッパーになることもあります。
高齢者の犯罪は、「処罰」だけでは解決しにくい課題を、私たちに問いかけているのではないでしょうか。
そして、高齢化による課題は、地域社会だけのものではありません。
視点を刑事施設の中に移してみると、そこでもまた、高齢化に伴うさまざまな課題が生じています。
次の記事では『刑務所の高齢化』について考えてみたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
