降られちゃった
雨が窓を叩く夕方、玄関の扉が開いた。
「ただいま……」
振り返った兄は目を丸くした。
「どうしたんだ、そのずぶ濡れは!」
「てへへ、降られちゃった」
妹は力なく笑ったが、その目は笑っておらず、声も微かに震えていた。
「なに! フラれたのか! どこのどいつだ、おまえを振ったのは!」
「違うってば、雨に降られたの」
妹の髪から雫がぽたぽた落ちている。
「傘くらい持って行けよ」
「持ってたわよ。でも柄がフラ……」
「なに! やっぱりフラれたんじゃないか!」
「もう、最後まで聞いてよ。フランス国旗カラーの傘なの。派手すぎて差せなかっただけ」
たしかに、あの傘は目立ちすぎる。
「それで、どこ行ってたんだよ」
「今日はフラ……」
「なに! どこでフラれたんだ!」
「違うってば! フラワーアレンジメントの展示会。そのあとフラ……」
「なに! そのあとフラれたのか!」
「フランス料理の店でランチ。……もう、お兄ちゃんったら人の話をちゃんと聞いてよ!」
妹は頬を膨らませながらも、少し笑っていた。
「わかったわかった。とにかく風邪をひくぞ、早くシャワー浴びてこい」
兄がタオルを差し出しながら言うと、妹は素直にうなずいて浴室へ消えていった。しばらくして、シャワーの音に混じって、小さく「うわーん」という声が聞こえた気がした。
兄は何も聞かなかったふりをして、キッチンでオニオングラタンスープを温め始めた。湯気の向こうに、湯上がりの妹の笑顔が見えるようだった。
(了)
やさしいお兄ちゃんですね。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
甘野充さんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
#アマノ文筆クラブ #降られちゃった
TALESにて、アマノ文筆クラブ作品を連載中。毎週木曜6:30をお楽しみに。
では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。
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