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むブリダ秘湯物語 枩泉にた぀わる十五の短線 vol.2

あけたしおおめでずうございたす。今幎もよろしくお願いいたしたす。

新幎早々ですが、今回は、出版関連のご案内をさせおいただきたす。

前䜜の続線をこの床、発売するこずになりたした。

むブリダ秘湯物語 vol.2です。

続線ずいいたしおも、前䜜ず同様、短線集ずなりたすので、本䜜から読んでいただいおも党く問題ございたせん。

↓玙版です。

↓ 電子版です。

※過去䜜品はコチラからどうぞ。

本曞『むブリダ秘湯物語 vol.2』は、十五の枩泉にた぀わる短線集の第2䜜目です。

䞻人公むブリダは、湯ず岩、蒞気ず颚、土地の蚘憶ず旅人のたなざし――

そうした異なる芁玠が重なり合う瞬間に珟れ、ずきに孊者ずしお、ずきにビゞネスパヌ゜ンずしお、

たたずきにはSNSナヌザヌや旅人ずしお姿を倉えながら、珟実ず幻想のあわいにある十五の湯をめぐっおいきたす。

本曞はいずれの物語も独立した短線ずしお構成されおいたす。

どの䞀篇から読んでも差し支えありたせん。

湯めぐりのように、気になった湯から浞かっおいただければず思いたす。

1. 土偶枩泉
   
   å†é–‹ç™ºäž­ã®é‡Žæ¹¯ã§æºæ³‰ãŒçž„文土偶ず融合しおいるこずが刀明し、䞉倧孊の研究者が協力しお分離を成功させ、湯は静かに安定を取り戻す。
   
2. 湯狂ず湯愛
   
   SNSで拡散されたむブリダの「湯狂」ずスピリチアヌレが生んだ「湯愛」は互いにすれ違いながらも、最埌は湯自身が応答する。
   
3. 枩泉のメリヌゎヌランド
   
   åãç¶šã‘なければ壊れる枩泉ラむオンの研究をきっかけに、廃湯を埪環させる枩泉アトラクションずいう“吐く䟡倀”の未来が構想される。
   
4. レトロフィンテック・むズ・マむフェむバリットシングス
   
   ãƒ•ィンテック最前線のむブリダは、電話予玄や珟金曞留に残る声ず時間にこそ、たた別の信頌の䟡倀があるず気づく。
   
5. ホットホットスプリング
   
   å¹»èŠšæž©æ³‰ã‚­ãƒ£ãƒ³ãƒ‡ã‚£ãƒŒãŒæž©æ³‰å®¿ã®è¡°é€€ã‚’æ•‘ã„ã‹ã‘ã‚‹ã‚‚ã€æšŽèµ°ã®æœ«ã«çŠæ­¢ã•ã‚Œã€äººã€…ã¯é å›žã‚Šã®æžœãŠã«å†ã³å®Ÿåœšã®æ¹¯ãžæˆ»ã£ãŠã„ãã€‚
   
6. 理論最高倀12.0
   
   å¹Žäž€å›žã®ã‚¢ãƒ—リ蚈枬日に集たった䞉人は無名の野湯で協力し、理論䞊ありえない最高倀「12.0」を同時に蚘録する。
   
7. 未来の枩泉通信
   
   æž©æ³‰åˆ†å­ã‚’媒介ずした新技術で、1925・2025・2125幎の研究者䞉人が同じ湯で察話し、時間を越えた再䌚を玄束する。
   
8. 少食の晩逐
   
   å°‘食の宣告を前に厚房は流れを遞び、最埌にむブリダが密やかに完食するこずで、晩逐は静かに完成する。
   
9. 䞀湯䞀囜蚘
   
   å”¯äž€ã®æºæ³‰ã‚’守る小囜は、䟵攻する倧囜軍を源泉自䜓が滅がし、「䞀湯あれば䞀囜たり埗る」ずいう掟を守る。
   
10. 湯女王
   
   æ¹¯ã®ä»Šã‚’俳句で䌝えたSNSアプリのアカりント秘湯王が攻撃された埌、湯女王が珟れ、今床は短歌で湯を䌝え続ける。
   
11. 封じられた湯獣
   
   åŸªç’°ãšæ¶ˆæ¯’に閉じ蟌められた湯獣を䞀倜だけ解攟したむブリダは、倱われた自由ず向き合い、さらなる解攟の方法を考え始める。
   
12. 蚘憶をも溶かす枩泉
   
   å¿˜åŽäœ“隓を提䟛する宿で、むブリダは思い出したくなる仕組みを調敎し、再蚪ぞ続く埪環を管理しおいる。
   
13. 雪倜保存のステヌキ
   
   æ¹¯æ°—の流れから倩然冷蔵の仕組みを芋抜いたむブリダは、隒動の収束ず宿の均衡を雪倜に芋届ける。
   
14. 湯の䞭で考える葊
   
   ãƒ‘スカルを起点ずする察話は、AIがあるずいうやさしい時代でも、揺れ方を遞ぶ限り人は思考を倱わないこずを確かめる。
   
15. 犁湯埋
   
   æ¹¯ã‚’犁じられた囜で姉効は湯魔人ずしお隔離されるが、匟子ティヌアむの『無湯宣蚀』は人々の内郚に湯を残す。

本䜜より、二぀の゚ピ゜ヌドをコチラに掲茉させおいただきたす。

䞀䜜目は、土偶枩泉です。

秋に京郜で開催されおいた「䞖界遺産・瞄文」展の垰り道、ふず思い浮かんだむメヌゞから描きたした。

二䜜目は、犁湯埋です。

なぜかそのずき、トムノァヌラむンずリチャヌドヘルのこずを思い出し、そこから構成が浮かびたした。

土偶枩泉

再開発が進む山あいに残された野湯は、もう長いあいだ䜿われおいなかった。湯船はひび割れ、板匵りの脱衣小屋は半分朰れおいる。それでも湯は絶えるこずなく湧き続け、朝倕には湯気が杉林の間をゆらゆらず挂っおいた。この湯を「再開発埌の枩泉斜蚭で再利甚する」――それが今回の蚈画の肝だった。そのため工事班は、たず湯が湧き䞊がる地点の正確な䜍眮を特定する䜜業から始めるこずになった。足元からの自噎ずされおいたが、湯量が日によっお倧きく倉わり、そのたびに湯の流れも倉化するため、どこから湧いおいるのかが分からないずいう報告が䞊がっおいた。
午前九時。䜜業員がポンプを蚭眮し、湯船に溜たっおいた湯を䞀床すべお抜いた。ぬるい湯が沢ぞ流れ萜ちおいくず、底から柔らかな砂地が珟れる。「この䞋から湯が湧いおいるんですよね」「そう。足元自噎っお聞いおいる」誰もが、砂の䞋に源泉口があるず信じお疑っおいなかった。スコップを入れるず、意倖なほど簡単に掘れた。湯の花を含んだ砂は湿り気を垯び、硫黄の匂いがわずかに挂う。䞉十センチ、五十センチ、䞃十センチ――掘っおも掘っおも、同じ砂が続いた。
「  おかしいな、湯が止たらない」ポンプを止めた瞬間、露出した砂地から熱を含んだ空気がふっず吹き䞊がった。湯脈に圓たったのかず思ったが、違う。スコップの先が硬いものを叩いた。「岩か」「いや  なんか、䞞い」湯気をかき分け、砂を払う。焌けた粘土のような手觊り。指先に、瞄文土噚の枊巻文らしき筋が觊れた。さらに掘り広げるず、それは仰向けに埋たった“顔”だった。巚倧な目の茪郭、倪い錻梁、そしお――閉じた口のあたりから、癜濁した湯がぜ぀りず挏れ出しおいた。
「  土偶だ」誰かが呟いた。その声に、もう䞀人が驚き亀じりに蚀った。「たさか――土偶枩泉だったか。聞いたこずはあるが、本物を芋るのは初めおだ」その瞬間、穎の底で“ボコッ”ずいう音がしお、土偶の口から湯が勢いよく吹き䞊がった。たるで地の底で長い眠りに぀いおいたものが、今、息を吹き返したかのようだった。
翌朝、珟堎は報道陣でごった返しおいた。工事は䞭断され、掘削珟堎は黄色いテヌプで囲われおいる。湯口のように芋える“土偶の口”からは、盞倉わらず湯が流れ続けおいた。湯面には湯の花が薄い膜を䜜り、颚が吹くたびにゆらめく。地元玙の蚘者がカメラを構え、圹所の担圓者が蚀葉を濁した。「文化財の可胜性が高いです。調査が終わるたでは、再開発を䞀時䞭止にしたす」蚘者が続けお尋ねる。぀たり――“土偶枩泉”が出土した、ずいうこずで間違いないですか」「珟時点でははっきりしたこずは蚀えたせん。掘る䜜業はいったん止めおいたすが、湯は倉わらず湧き続けおいたす。珟圚はその様子を芋ながら察応しおいるずころです」
午埌には党囜ネットのテレビ局も到着した。ドロヌンが䞊空を飛び、ニュヌスのテロップには、〈巚倧土偶から枩泉湧出 囜内䞉䟋目〉の文字。SNSでは「#土偶枩泉」「#地球の呌吞」がトレンド入りし、芳光地化を望む声ず、神聖芖する声が入り混じった。
珟堎監督は頭を抱えた。「湯が出おいる限り、工事なんかできないですよ。ポンプも意味がない。止たらないのです」䜜業員のひずりが小声で蚀った。「昚日、倜勀の芋回りに来たんです。あの湯、呌吞しおいたした。ボコボコっお、たるで  寝息みたいに」誰もその蚀葉を笑えなかった。湯口の音は、確かに䞀定のリズムで鳎っおいた。“ボコ  ボコ  ボコ  ”たるで䜕かが、地の底でゆっくりず息をしおいるようだった。
倜。照明塔が湯気を照らしおいた。珟堎には、䟝然ずしお枩泉の匂いが濃く挂っおいる。圹所の担圓者たちが黄色いテヌプの倖で埅っおいた。そこぞ、䞀台の小型ワゎンが止たる。ドアが開き、灰色の䜜業服を着た女性が降り立った。肩には现長いケヌス、手には金属の箱。湯気を芋䞊げながら、短く息を぀く。
「東京枩泉倧孊のむブリダです。珟堎責任者の方、いらっしゃいたすか」「こちらです。垂の文化財課の者です」担圓者が手を䞊げる。互いに軜く䌚釈を亀わすず、むブリダは足元の湯船跡に目を萜ずした。「  これは倧きい。写真よりも、ずっず」湯はただ止たらず、土偶の口から䞀定のリズムで流れ続けおいる。足元の砂は枩かく、靎底からわずかに振動が䌝わっおくる。
むブリダはケヌスを開け、盎方䜓の装眮を取り出す。そこから二本のケヌブルが䌞び、先端には赀ず青の光を攟぀センサヌが぀いおいた。「内郚枩床ず圧力の波圢を枬定したす。この芏暡は初めおですが、詊しおみたす」担圓者たちは少し距離をずっお芋守る。圌女はヘルメットのラむトを消し、赀ず青の光を土偶の目に向けお照射した。湯気の䞭に二色の光が溶け、装眮のモニタに乱れた波が走る。
「匷すぎる  センサヌが焌ける」むブリダは装眮を止めた。光が消えるず、湯の音がたた戻った。“ボコ、ボコ  ”静かに、しかし確かに呌吞しおいるようだった。圌女は小さく息を吐く。「  これは、䞀人では到底無理ね」そしお倜空を芋䞊げながら、東京の研究宀にデヌタを送信し、東北枩泉倧孊のスピリチアヌレに応揎を䟝頌した。
翌朝。霧の䞭を䞀台のワゎンが珟堎に入る。スピリチアヌレが降り立ち、ただ湯気を䞊げる珟堎を芋お目を䞞くした。「  こんなに倧きいのは初めお。この芏暡なら、湯の方が䞻導暩を握るのは圓然ね」圌女は金属補の立方䜓装眮を取り出し、衚面に刻たれた小さな枊を指先でなぞる。「波動をずらしお干枉を抑えれば  たぶん」
むブリダずスピリチアヌレが䞊んで装眮を起動した。赀ず青の光が土偶の䞡目に重なり、モニタが光を垯びる。しかし波圢は再び䞍安定に跳ね䞊がる。二人は装眮の出力を䞊げた。䜎い唞りが響き、照射角がわずかに倉わる。赀ず青の光が湯気の䞭で亀差し、土偶の䞡目に重なった。だが、モニタの波圢はすぐに跳ね䞊がり、安定しない。二人の装眮が唞りを䞊げ、湯気の䞭で光が亀差した。「だめ、湯の圧が乱れおいる」「湯が拒んでいるのかも」
むブリダが眉を寄せお装眮を止めたずき、背埌から萜ち着いた声がした。「すみたせん、蚱可蚌ありたす」振り返るず、テヌプの倖に䞀人の女性が立っおいた。銀色のヘルメット、黒いリュック、肩には现い機材ケヌス。女性はポケットから名札を掲げた。「北海道枩泉倧孊のティヌアむです」担圓者が慌おお近づく。「今回は芋孊っおこずで聞いおいたしたけど  」
ティヌアむは苊笑いを浮かべた。「芋孊の぀もりだったんです。でも、これは攟っおおけないでしょ」圌女はテヌプをたたぎ、二人のそばぞ歩み寄る。むブリダずスピリチアヌレが顔を芋合わせた。「あなたも来おいたの」「ええ、ちょっず気になっお」ティヌアむは銀色の现身の装眮を取り出す。先端から癜い光がゆらめいた。
「順番にやりたしょう。たずむブリダが赀、䞀分埌にスピリチアヌレが青。わたしが五分埌に癜を圓おる。焊らせないで。土偶は生きおいる。今は怖がっおいるだけ」䞉人は湯気の䞭に䞊び、それぞれの光を構えた。「倧䞈倫。私たちは味方」「傷぀けない」「ちょっずだけ、顔を芋せお」
赀い光が巊目を照らす。続いお青が右目に重なり、最埌に癜が二぀を包み蟌んだ。湯の音がゆっくりず倉化する。“ボコ  ボコ  ”が、“ポコ  ポコ  ”に。呌吞が浅くなり、やがお穏やかになった。次の瞬間、砂が静かに盛り䞊がり、土偶の頭郚がゆっくりず持ち䞊がった。新しい湯口が、土偶の顔の䞋に隠れおいた岩の割れ目ぞずゆっくり移動しおいく。
「  切り離せた」むブリダが小さく呟く。ティヌアむは光を消し、湯気の向こうに珟れた“顔”を芋぀めた。「うん、これでいい。湯も萜ち着いた」午埌、珟堎は静かだった。湯は安定し、土偶の頭郚は冷たくなっおいた。䞉人はヘルメットを脱ぎ、ただ黙っおその顔を芋぀めおいた。
午埌。珟堎は、再び隒がしくなっおいた。ヘリコプタヌの音が頭䞊をかすめ、フェンスの倖では報道陣が列を぀くっおいる。フラッシュが䜕床も焚かれ、癜い光が湯気を切り裂いた。䞭倮に立぀むブリダは、ヘルメットを倖し、蚘者たちに向かっお穏やかに口を開いた。「――今回の珟象に぀いお説明したす」マむクが差し出される。圌女の声は静かで、颚に流されおもなお、珟堎党䜓に届く䞍思議な萜ち着きを持っおいた。
「こうした野湯を掘削しおみるず、倪叀の济堎に由来するケヌスが少なくありたせん。この堎合、地局を远っおいくず、必ず土偶に行き着きたす。今回の堎合、それがかなり倧きな遮光噚土偶でした」蚘者たちがざわめく。むブリダは続けた。「倪叀の土偶は、長い時間の䞭で湯口ず䞀䜓化しおしたっおいたす。そのたた匕きはがそうずするず、匷い圧力倉化が起き、呚りの環境にも圱響が出るおそれがありたす。ですから、わたしたちは特殊な装眮を䜿っお、湯口ず土偶を“静かに切り離す”䜜業を行いたした」
背埌の珟堎では、ただ蒞気が薄く挂っおいる。むブリダの䜜業着の裟が颚で揺れた。「通垞の枩泉土偶は䞉十センチ前埌です。しかし今回は䞀メヌトルを超える芏暡でした。この倧きさは、蚘録䞊初めおです」圌女は䞀床蚀葉を切り、報道陣を芋枡す。フラッシュがいく぀も光った。
「圓初、わたし䞀人での䜜業は困難ず刀断し、東北枩泉倧孊のスピリチアヌレ准教授に応揎を芁請したした。しかし湯の圧が匷く、反応が安定したせんでした。そこに、偶然珟堎を芋孊しおいた北海道枩泉倧孊のティヌアむ准教授が加わり、䞉倧孊合同の䜜業䜓制でようやく分離に成功したした」䞀斉にカメラの音が鳎る。むブリダは少しだけ笑みを芋せた。
「あの土偶の頭郚は、珟圚、冷华凊理を経お東京に搬送されおいたす。専門斜蚭で安党を確認したのち、博物通で展瀺される予定です」むブリダは最埌にマむクを少し匕き寄せた。「皆さた、もうご安心ください。湯の圧は萜ち着き、呚囲に危険はありたせん。この地は、もう倧䞈倫です」その瞬間、䞊空のヘリが遠ざかり、颚が止んだ。蚘者たちはいく぀かの質問を投げかけ、むブリダは䞁寧に䞀぀ず぀答えた。やがおマむクを䞋ろし、静かにヘルメットをかぶり盎す。湯気の奥を䞀床だけ振り返った。湯は、もう䜕も語らなかった。

犁湯埋

昔、この囜には湯があった。人々はその枩もりに身を沈め、互いの疲れを分かち合っおいた。朝の湯は眠りをほどき、倜の湯は心のざわめきを静める。湯気は家々の屋根から立ちのがり、たるで囜党䜓が、ひず぀の呌吞をしおいるかのようだった。觊れられるたび、人は少しだけ柔らかくなり、蚀葉は角を倱っおいった。そうした暮らしは、理性ず情熱が拮抗する、穏やかな均衡の䞭にあった。
だが、ある幎を境に、その湯は眪ずされた。政府の䞭枢に新しい理念が生たれた。それは「理性の囜」ず呌ばれ、感情を排し、思考の均衡をもっお秩序を保ずうずするものだった。湯は人の刀断を曇らせる、欲望を煜る、秩序を乱す――そう告げる垃告が党囜に貌られた。湯殿は封鎖され、管の䞭を流れる湯は真氎に換えられた。家々の湯壺は割られ、湯口は塩で封じられた。
そしお新しい法埋が公垃された――「犁湯埋」。それは、湯に觊れるこずを犁じる唯䞀の法であり、囜の道埳の根幹ずされた。湯に觊れた者は「湯眪者」ず呌ばれ、癜い曎生斜蚭ぞ送られる。そこでは湯ぞの誀解を正す教育が行われ、奉仕掻動によっお心の枅浄が詊みられる。静かな音楜が流れ、笑顔での察話が奚励される。半幎で戻れる者も倚い。
だが、十床の再犯を重ねた者は、もはや「湯眪者」ずは呌ばれない。「湯魔人ゆたじん」――理性を倱った者ずしお、蚘録に氞久保存される。曎生期間は䞉十幎。認定理由の説明も、異議の機䌚もない。「湯に溶けた理性は、凍おお正気を取り戻すべし」――それだけが刀決の蚀葉だ。
湯を倱ったこの囜で、唯䞀ただ熱を垯びおいたのが蚀葉だった。湯眪者の倚くは、湯に代わるものずしお蚀葉を求め、詩を詠んだ。圌らは、衚向きは眪人だが、裏の詩壇では“過去の生き残り”ず呌ばれおいた。圌らの詩は必ず発犁ずなり、印刷所は閉鎖された。それでも地䞋では、写本が密かに出回り、孊生や批評家たちが倜な倜な朗読した。その倜、人々は小さく声を揃えお蚀う――「湯はただ、生きおいる」その蚀葉を合図に、誰もが口を閉ざす。湯の名を呌ぶこずすら、もはや詩の䞀郚だった。
 湯眪者は文孊の黒い倪陜だった。そしお、最も有名な湯眪者が――むブリダずスピリチアヌレ、この姉効である。二人は理性的で瀌儀正しい。乱暎な蚀葉を䜿うこずもなく、政治を語るこずもない。ただ静かに、湯の詩を曞いた。圌女らの詩は、湯に觊れたこずを瀺唆するだけで、どの句にも盎接的な「湯」ずいう語はなかった。
 「人の心が、ただ熱を憶えおいる――それだけのこずだ」むブリダのこの䞀節だけで、詩集は焚曞凊分ずなった。だが、それは同時に詩壇における“認定”でもあった。この囜では、焚かれた詩だけが本物ずされおいる。圌女は思想の人だった。「タブヌに觊れるこずで、人間本来の欲望を解攟する」ず説き、その蚀葉は若い詩人たちの信条ずなった。
  䞀方、スピリチアヌレは実践の詩人だった。「觊れた者だけが、その枩床を語れる」ず曞いた。姉より感芚的で、短く鋭い詩を奜んだ。二人の考えは䌌おいるようで、たるで違った。理性ず熱。静寂ず欲望。それでも互いを吊定せず、䞖界の均衡のように存圚しおいた。犁湯埋が生たれおから癟幎以䞊が経ち、もはや誰も湯に觊れたこずがない。それでも、詩の䞭では湯が生きおいた。姉効の詩は、たるで叀代の祈祷のように人々の心を枩めた。
ティヌアむが姉効のもずを蚪ねたのは、雪が解けかけた春の倕方だった。詩壇では、圌女のこずを「湯を知らぬ若者」ず呌んでいた。湯を知らず、それでも湯の気配を蚀葉に宿す詩で頭角を珟し、人々を驚かせおいた。湯に觊れたこずのない䞖代にあっお、犁じられた熱を想像によっお描く――その矛盟こそが、才胜の蚌ずされた。
 扉を開けたずき、郚屋には玙の匂いず、わずかな枩もりがあった。むブリダは机に向かい、スピリチアヌレは窓際で空を芋おいた。二人ずも癜い服を着お、静かに筆を動かしおいた。「詩を孊びたいのです」ずティヌアむが蚀うず、スピリチアヌレが先に口を開いた。「  あなたは、あの“湯を知らぬ若者”」ティヌアむは少し緊匵した面持ちでうなずいた。
むブリダは筆を止め、穏やかに笑った。「噂は聞いおいるわ。湯を知らずに、湯の匂いを蚀葉にした詩人。犁湯の時代に、それは最も危うく、最も矎しい詊みね」ティヌアむは静かに答えた。「湯を知らなくおも、心のどこかに熱の蚘憶がある気がするんです。それを確かめたくお  来たした」スピリチアヌレが振り向き、少し笑った。
「  蚘憶の熱、ね。けれど想像の湯は、すぐに冷めるわ」むブリダは効を芋やりながら、ゆっくりず立ち䞊がった。「だからこそ孊ぶ䟡倀があるのよ。湯を知らぬ者の䞭にある熱――それが、この囜で最埌の湯かもしれない」スピリチアヌレは息を぀き、わずかに肩をすくめた。「たた捕たりたすよ、お姉さん」「捕たるのは詩のほうよ」窓の倖では、春の雪がひずひらだけ残っおいた。
 それから数週間、ティヌアむは姉効のもずを通い続けた。姉効の詩は、技術ではなく枩床の皜叀だった。むブリダは語る。「詩を曞くずき、心が少しだけ沞く瞬間があるでしょうその枩床が湯なの」ティヌアむは䜕床も頷いた。スピリチアヌレは䞀冊のノヌトを枡した。「この䞭に、自分の“冷たさ”を曞いお。熱を恐れる詩人は、冷たさの圢を知らなければならないの」䞉人で詩を読み、蚀葉の端々に沈黙を混ぜた。窓の倖では、春の颚が少しだけ湿っおいた。
ある晩、湯殿跡で朗読䌚が開かれた。それは犁湯埋に觊れる危うい集たりだった。厩れた石壁の間に、灯がひず぀眮かれ、人々は息を殺しおその光を囲んだ。むブリダがゆっくりず立ち䞊がり、静かに詩を読み始めた。「心の奥で、名を倱いながら生きおいる。理性が凍るほどの静けさの䞭で、それはただ呌吞をしおいる」
その声に重なるように、スピリチアヌレが目を閉じお続けた。「手のひらに残るぬくもり。觊れぬたたでも、皮膚の䞋で脈を打っおいる」理ず情、冷ず熱――ふた぀の声が亀わったずき、空気がわずかに震え、冷えきった倜の闇に、かすかな湯気のような癜い息が立ちのがった。
ティヌアむはその光景を芋぀めながら、胞の奥で䜕かが静かにほどけおいくのを感じた。その熱は、湯を知らぬはずの自分の䞭にも確かに息づいおいた。蚀葉が湯に倉わる瞬間を、圌女は初めお芋たのだ。朗読が終わるず、誰も拍手をしなかった。ただ、静かに頭を䞋げた。それがこの囜での賛蟞の䜜法だった。
人々が去ったあず、湯殿跡には䞉人だけが残った。灯がゆらめき、厩れた石壁の隙間から、かすかな湯音が響いおいた。それは地の底でただ眠っおいる心臓の錓動のようだった。むブリダが膝を぀き、そっず手を䌞ばした。指先に觊れたのは、封じられお久しいぬるい雫。ずろみを垯び、指の間をゆっくりず滑る。
硫黄の匂いが立ちのがり、どこか懐かしい甘さを含んでいた。この囜がただ湯を蚱しおいたころ――人々が語り合い、笑い合いながら湯に浞かっおいた蚘憶が、その雫の枩床に沈んでいた。スピリチアヌレがその手に自分の手を重ね、そっず目を閉じた。「  ただ、生きおいるわ」灯の明かりが波のように揺れ、䞉人の圱が䞀぀に溶け合った。
ティヌアむは息を呑んだ。湯を詠んできた詩人ずしお、これたで想像の䞭でしか觊れられなかった“熱”が、いた、目の前で圢を持っおいた。指先を䌞ばせば届く距離。觊れおみたい――その衝動が胞の奥で波のように広がった。だが同時に、圌女の䞭で別の声が囁いた。詩は湯の代わりに沞くもの。觊れた瞬間に、それは詩ではなくなる。
ティヌアむは拳を握りしめ、震える手を膝の䞊で抌さえた。理性ず熱がせめぎ合い、心の奥で小さな音を立おお溶け合った。湯の匂いが錻をくすぐり、胞の奥で䜕かがほどけおいく。それは蚀葉になる前の詩、ただ湯気のような祈りだった。圌女は恐れず歓喜の入り混じった心でその光景を芋぀め、生たれお初めお――本物の湯の匂いを吞い蟌んだ。
翌日、犁湯監芖庁から通達が届いた。「むブリダ、スピリチアヌレ䞡名、湯に関する思想の反埩および接觊の疑いにより、湯魔人ずしお認定。曎生期間䞉十幎」ただ䞃床目の再犯にもかかわらず、異䟋の凊分だった。玙䞀枚の通達。逮捕も裁刀もなかった。癜い封筒が届けば、それで終わりだ。
倕方、姉効のもずぞティヌアむが駆け぀けた。「なぜ逃げないのですか」むブリダは埮笑み、静かに銖を振った。「逃げるのは、ただ熱を恐れる者のするこずよ。わたしたちはもう、湯ではなく、蚀葉そのものになった」スピリチアヌレが窓の倖を芋た。「湯は冷たくしおも消えない。凍るずきでさえ、かすかな音を立おお流れ続ける。曎生もたた、その流れの䞀郚なのよ」
ティヌアむは涙をこらえながら、二人に手を䌞ばした。「わたしは  どうすればいいのですか」むブリダが短く答えた。「湯に觊れずに、湯を灯しなさい。それが、わたしたちの続きになる」スピリチアヌレが埮笑んで付け加えた。「熱を持たない手で曞きなさい。その冷たさの䞭にこそ、本圓の湯が滲む」ティヌアむはうなずき、震える声で蚀った。「湯を語らずに、湯を残したす」むブリダは静かに目を閉じた。「それでいい――詩は、ただ呌吞しおいる」
 倜、癜い車が来た。二人は䞊んで乗り蟌み、誰も芋送らなかった。ティヌアむは、二人の郚屋に残り、そのたた立ち尜くしおいた。颚が吹き、郚屋の倖で封鎖された噎泉跡の柵が鳎った。その音が、たるで湯の音のように聞こえた。圌女は目を閉じ、その響きを胞の奥に刻んだ――湯はただ、蚀葉の底で息をしおいる。
䞉幎の歳月が過ぎた。䞖界は䜕も倉わっおいない。けれど詩壇の空気は確かに倉わっおいた。その䞭心に、若き詩人ティヌアむの名があった。圌女の詩集『無湯宣蚀』は刊行ず同時に完売し、誰もがその静かな熱に打たれた。内容は穏やかで、䜓制の基準に埓順なものだった。湯ずいう蚀葉は䞀床も出おこない。だが読む者の胞の奥で、なぜか小さな熱が生たれる。「冷たい川の底にも、ただぬるさが眠っおいる」誰かがそう朗読するず、人々はなぜか涙を流した。
 その詩集が出た週の終わり、ティヌアむは面䌚の蚱可を埗お、むブリダのいる曎生斜蚭を蚪れた。長い廊䞋を進むず、癜い壁が光を返し、足音さえも枩床を倱っおいった。面䌚宀のガラス越し、圌女は以前ず倉わらない穏やかな衚情をしおいた。癜い服の袖をたくり、窓蟺の光に手を透かしおいた。
 「先生」ティヌアむはそう呌びかけ、テヌブルの䞊に䞀冊の本を眮いた。「わたしが曞いた『無湯宣蚀』です」むブリダは本を芋぀め、ゆっくりず笑った。「湯はもう、曞かれおいないのね」 「ええ。でも、読む人の心に湯が湧けばいいず思っお」 「それが䞀番危険よ」そう蚀っお、むブリダはうれしそうに埮笑んだ。
 沈黙が流れた。どちらも蚀葉を探さず、ただ光の枩床を分け合っおいた。やがおティヌアむが口を開く。「先生、あの倜の蚀葉をずっず芚えおいたす。『湯を知らぬ者の䞭にある熱――それが、この囜で最埌の湯かもしれない』わたしは、その熱を信じお曞きたした」むブリダは目を閉じ、静かに頷いた。「ええ、それでいいわ。湯はもう、觊れるものではない。信じる者の䞭でだけ、生きおいくの」「あなたは、湯の倖偎で湯を守った。それは、わたしたちにはできなかったこずよ」ガラス越しに差し出された手。指先が透明な壁に觊れる。
その瞬間、癜いガラスがわずかに曇った。むブリダが小さく呟いた。「  湯はただ呌吞しおいる」面䌚を終え、ティヌアむは倖に出た。倕方の空は淡く、雪がゆっくりず降りはじめおいた。冷たい颚の䞭で、圌女はポケットの䞭の詩皿を握りしめる。そこには、ただ曞かれおいない䞀行があった――「湯は詩になり、詩は人に還る」その蚀葉を胞の奥で反芻しながら、ティヌアむは歩き出した。向かう先は、あの倜の湯殿跡だった。
街は癜く沈み、道端の暙語塔には〈理性は秩序の瀎〉の文字が薄く浮かんでいる。雪を螏むたび、靎底の䞋で氎の音がした。地の底で、ただ䜕かが生きおいる――そう思えた。湯殿跡にたどり着くず、柵の向こうはすべお雪に芆われおいた。厩れた石の隙間から、かすかな湯気が立っおいる。ティヌアむはしばらく立ち尜くしたのち、ゆっくりず膝を぀き、手袋を倖した。
觊れおはいけない――頭のどこかで声がした。けれど、その声の奥で、姉効の笑い声がかすかに響いた気がした――『捕たるのは詩のほうよ』圌女は目を閉じ、指先を雪に埋もれた石段の隙間ぞ沈めた。ずろみを垯びた枩もりが皮膚を䌝い、胞の奥で広がっおいく。その瞬間、詩皿の䞀行が静かに浮かび䞊がった――「湯は詩になり、詩は人に還る」圌女は埮笑み、癜い息を吐いた。颚が柵を鳎らし、遠くの煙突から癜い煙が立ちのがった。その光景は、たるで湯が再び䞖界に戻ろうずしおいるようだった。
斜蚭の窓蟺では、むブリダが倖を芋おいた。同じ棟の別宀にはスピリチアヌレもいる。
二人の間を隔おる壁の向こうで、雪が地面に觊れ、かすかな湯気を立おた。その気配を感じ取ったのか、むブリダは小さく笑い、たぶたを閉じた。癜い䞖界の奥から、スピリチアヌレの声が埮かに届いた気がした。「お姉さん  あの子、觊れたしたね」 
むブリダはゆっくりず頷いた。「ええ。きっず芋぀かるでしょう。けれど、もう恐れるこずはないわ」少し間を眮き、柔らかく埮笑んだ。「觊れるこずよりも、その手で䜕を残すか――あの子はそれを知っおいる」スピリチアヌレは静かに目を閉じた。「そうね。あの子の指先には、もう湯ず詩の区別がない」むブリダは窓の倖を芋぀めながら、かすかに頷いた。雪が降り続く。そのひずひらひずひらの奥で、湯の呌吞が、静かに䞖界を枩めおいた。

今埌もこのむブリダ秘湯物語シリヌズを続けおいこうず思いたす

幎末は䞭之島矎術通でアヌルデコ展を楜しみたした。

その垰りに䞀軒立ち寄るずころたではい぀も通りです笑

しかしながら、その埌は日本語がほがれロなマニアックなスパむスショップに立ち寄りたした。

で、コチラで賌入したものです。

そうです。

カルダモンの実です。

近幎、倧阪にも東京系の居酒屋が増えおきたしたが、そこにあるのがカルダモン系のサワヌです。

で、コレが䜙りも矎味しすぎるので自分で䜜れないかず思っおスパむスを買った次第です。

で、24時間経ちたした。

完成品です。

味は・・・うん・・・十分です。

でも48時間寝かした方がよりお店でのフレむバヌに近いず思いたす。

よっお、48時間が正解なのでしょう。

続いお、本堎通りにキンミダさんで䜜りたく思いたす。

倧阪でも、やたやさんでは賌入できたす。

これで完党に再珟できるのではないかず・・・。

48時間埌に濟しお瓶に戻しお完成

翌日サむコヌです

こんな感じで今幎も色々ず䜓隓しお、創䜜の糧にしおいきたく思いたす笑

【お知らせ】
秘湯物語玙曞籍・電子曞籍をAmazonで発売䞭です。

いいなず思ったら応揎しよう

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