結婚は、一度きりの約束ではない|夫婦で方角を確かめるということ|船頭の道しるべ#8
はじめに|夫婦なのに、気持ちが合わない
「結婚したのだから、同じ方向を向いていなければならない」
「夫婦なのだから、分かり合えて当然」
そんなふうに考えてしまうことがあります。
けれど実際には、
仕事で疲れている日もある。
一人になりたい日もある。
価値観や考え方、習慣の違いから、喧嘩になる日もある。
つまり、
同じ舟に乗ったからといって、いつも同じ景色を見ているわけではありません。
今回の「舟の語り#8」では、結婚を「同じ舟に乗ること」として描きました。
では、違う二人が同じ舟で進み続けるには、何が必要なのでしょうか。
1|結婚すると「自由がなくなる」は、半分正しい
一人なら、
自分のペースで動ける。
自分で決められる。
疲れたら、自分の都合で止まれる。
けれど結婚すれば、相手の予定や気持ち、生活も舟の中に入ってきます。
だから確かに、自分一人だけで決められることは減ります。
けれど、減るものばかりではありません。
一人では抱えきれない日を支えてもらえる。
迷ったときに相談できる。
嬉しい景色を共有できる。
結婚とは、「自由を失うこと」というより、
自分一人だけで決める人生から、二人で決めることもある人生へ変わっていくこと
なのかもしれません。
「自由か結婚か」ではなく、
何を一人で持ち、何を二人で持つのか。
そこを考えることが大切なのだと思います。
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2|同じ舟だからこそ、相手の揺れが伝わる
物語でも出てきた表現ですが、
夫婦になると、相手の状態が自分にも影響します。
たとえば、
妻や夫が仕事で落ち込んでいる。
子育てで余裕を失っている。
家計への不安を抱えている。
すると、自分まで落ち着かなくなることがあります。
逆も同じです。
自分が疲れていたり、余裕をなくしていたりすれば、その揺れは相手にも伝わります。
夫婦になると、
「自分の問題」
「相手の問題」
と、きれいに切り分けられない場面が増えていきます。
ただし、
相手の感情まで全部背負う必要はありません。
なぜなら、
同じ舟に乗っていることと、同じ人間になることは違うからです。
相手の揺れを感じることと、
相手の気持ちをすべて引き受けることは同じではありません。
支え合うことは大切ですが、
自分まで沈んでしまえば、舟そのものが進めなくなってしまいます。
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3|夫婦は、いつも同じ気持ちでいる必要はない
結婚すると、
「好きでい続けなければ」
「仲良くしなければ」
「分かり合わなければ」
と考えてしまうことがあります。
でも、感情は変わります。
楽しい日もある。
腹が立つ日もある。
相手を思いやれない日もある。
それは、ある意味では自然なことです。
大切なのは、
同じ気持ちでいることではなく、違っていることを知った上でどうするか。
「舟の語り#8」で、男はこんなことを言いました。
「好きっていう気持ちは、ずっと同じ強さじゃないですよね。」
これは、自分自身にも思い当たることがあります。
妻を大切に思う気持ちは今もあります。
けれど、その気持ちの強さまで毎日同じだったわけではありません。
「大好きだな」と思う日もあれば、
仕事や家事で余裕がなく、相手のことまで考えられない日もありました。
感情には波があります。
だからこそ、
夫婦とは「同じ感情を持つ二人」ではなく、
違う感情を持ちながら、一緒に進む二人
なのかもしれません。
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4|すれ違ったときは、櫂を強く漕ぐより止めてみる
夫婦ですれ違うと、
「分かってほしい」
「自分の方が正しい」
という気持ちが強くなることがあります。
お互いが強く櫂を漕ぎ始める。
すると、物語のように、
舟は前へ進まず、同じ場所をぐるぐる回ってしまいます。
そんなとき必要なのは、
さらに強く漕ぐことではなく、
一度、櫂を止めること。
たとえば、
「最近どう?」
「今、一番しんどいことは何?」
「これからどうしたい?」
「自分にしてほしいことってある?」
そんな問いをきっかけに、
相手が今どんな状態なのかを知ってみる。
全部聞く必要はありません。
一つだけでも十分です。
そして、ときには少しだけ大きな問いもしてみる。
「今、どこへ向かっている?」
答えを合わせるためではありません。
お互いが今、どちらを向いているのかを知るためです。
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5|夫婦の方角は、日常の中にある
夫婦の「方角」と聞くと、
家を買う。
転職する。
老後について考える。
旅行へ行く。
夢を叶える。
そんな大きな話を想像するかもしれません。
でも、実際の夫婦生活はもっと日常的です。
たとえば、
今週は少し休もう。
子どもとの時間を増やそう。
家事の負担を見直そう。
二人で食事する時間を作ろう。
これも立派な「方角」です。
夫婦の航路は、大きな人生設計だけで作られているわけではありません。
今日や今週の小さな選択も、二人の航路の一部です。
方角は、遠い未来だけにあるものではありません。
今日をどう過ごすか。
それもまた、二人で進む方向を決めています。
そして、結婚の約束は、必ずしも言葉にすることだけではありません。
朝の挨拶。
疲れているときの「大丈夫?」
喧嘩したあとに、もう一度話すこと。
一緒に食卓を囲むこと。
そうした小さな行動も、
「今日もこの舟に乗っている」
という意思表示なのかもしれません。
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6|今日の道しるべ
今日、夫婦で一つだけ聞いてみる。
難しい質問でなくても大丈夫です。
「最近どう?」
「最近、何か疲れてる?」
「次の休み、何したい?」
「今ちょっと変えたいことある?」
それくらいでも十分です。
そして、少し余裕があるときには、
「これから、どこへ行きたい?」
と聞いてみてもいいかもしれません。
大切なのは、答えを出すことではありません。
相手が今、どちらを向いているのかを知ること。
そして、自分がどちらを向いているのかも伝えること。
それだけでも、二人の舟の状態は少し見えやすくなります。
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まとめ
結婚とは、ずっと同じ方向を見ることではない。
同じ舟に乗っていても、
違う景色を見ることがある。
違うことを考えることもある。
それでも、
ときどき櫂を止める。
「今、どこへ向かっている?」
そう確かめて、
また二人で漕ぎ始める。
結婚とは、
一度交わした約束を守り続けることというより、
日々の中で何度も、
「一緒に進もう」と選び直していくことなのかもしれません。
そして、
方角を確かめた結果、同じ意見にならなくてもいい。
「自分はこう思っている」
「相手はこう思っている」
違っていることが分かるだけでも、
それは二人で進むための一つの道しるべになります。
同じ舟に乗るということは、
同じ人間になることではありません。
違う二人のまま、
ときどき立ち止まり、
それでもまた一緒に漕ぎ始める。
そんな日々の積み重ねが、
結婚生活なのかもしれません。
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この話のもとになった物語はこちら。
「同じ舟で進むという約束|結婚について|舟の語り#8」
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