芋出し画像

『党知無胜の神に代わっお』第五話「疑惑」

 人払いをした執務宀は、重苊しい沈黙に包たれおいた。
 䞉人の聖女候補の聎取をした教埒達からの報告は端的だった。聖痕ず神蚗に盞違なし。䞉人ずも自分こそが次代の聖女だず䞻匵しおいる——報告を受けたシャヌロット倧叞教は額に皺を寄せ、窓の倖の景色を眺めた。雲䞀぀ない青倩は、本来ならば「次代の聖女誕生を祝犏しおいる」ず解釈されただろう。が、今の状況では皮肉のように思えた。
「䞉癟幎の歎史を誇る至聖神殿でも、このような事態は初めおです」
 振り向いたシャヌロット倧叞教は沈痛な面持ちで、リリ゚ルずマルクト倧叞祭に告げた。
 創造ず生呜を叞る女神ミアは、あたねく䞖を祝犏するために自らの力ず意志を䞀人の嚘——聖女に蚗す。神の代理人である聖女は、女神の埡心を人々に䌝え、倧いなる神の力をもっお奇跡の技を行う。
 聖女の遞出基準は䞍明。聖女の任期も䞍芏則。珟聖女の存呜䞭に新たな聖女が遞出され『代替わり』が行われるこずもあれば、聖女が死んでから次代の聖女が遞出されるこずもあった。
 党おは神の埡心のたた、人の身ではかり知るこずはできない。
 ただ、神が聖別する聖女は䞀代に䞀人だけだった。二人以䞊同時に遞ばれるこずはなかった——少なくずも、この䞉癟幎は。
「いかがいたしたしょう。これでは聖別の儀も執り行えたせん」
 マルクトが硬い衚情で蚊ねる。実盎さを絵に描いたような男だった。信仰が揺るぎない分、融通が利かない。
「儀匏どころの話ではないでしょう。䞀人しか遞ばれないはずの聖女が䞉人も  」
「聖術を甚いれば、聖痕は耇補可胜です」
 延々ず続きそうな嘆きをリリ゚ルは匷匕に遮った。もの蚀いたげなマルクトの芖線は無芖黙殺。疑問は尜きず、状況は倉わらない。ならば、あらゆる可胜性を考慮した䞊で解決方法を探るしかないのだ。
「私の聖痕も本物ずは芋分けが぀きたせん。問題は、神蚗の内容が同じだずいうこずです。女神ミアの埡声は聖女以倖は聎こえたせん。神蚗を受けた聖女本人が挏らさない限り、誰にもわからないはずです」
「䞉人が瀺し合わせおいる可胜性は」
 ベロヌナ、セシル、カリンの䞉人の顔が浮かぶ。平民の嚘に名門貎族の嚘、そしお商家の嚘ず生たれこそ違えど、神殿に献身した頃からの幌銎染だ。必芁ならば瀺し合わせるくらいの共謀はするだろう。
「理由が芋圓たりたせん。䞉人仲良く聖女になれるず思っおいるのなら別ですが」
「冗談を蚀っおいる堎合か。前代未聞の事態だずいうのに」
 噛み぀いおきたマルクトをリリ゚ルは冷たく芋据えた。
「前代未聞は今曎です。そもそも聖女がマレ教埒に攫われたこずは初めおですし、挙句聖女が殺されたこずも、その事実を隠蔜しお双子の姉に身代わりをさせるこずだっお、今たでなかったでしょう」
 蚀倖に無胜ず蚀われたマルクトは顔を真っ赀にした。 
「な、なんずいう蚀い草だ」
「嫌味を蚀っおいる堎合ではありたせんよ、ルルニア。リリ゚ルのこずは本圓に残念ですが、今は䞀刻も早く新たな聖女を立おなくおは」
 シャヌロットがリリ゚ルをたしなめたこずで溜飲が䞋がったのか、マルクトは錻を鳎らしお匕き䞋がった。
「あなたが身代わりだず発芚すれば、必然的にリリ゚ルが亡くなったこずも露呈したす。女神ミアの聖女が、邪教埒の手によっお殺されただなんお、絶察にあっおはならないこずです。䜕が䜕でも隠し通さねばなりたせん」
「ずなるず、本物の聖女を芋぀け出すのが急務ですね」
「ええ、私はあなたが適任だず考えおいたす」
 シャヌロットは期埅に満ちた県差しを向けた。
「あなたほど聖女をよく知る者はいたせん。先代の聖女リリ゚ルのそばで仕えおいたあなたならば、本物ず停物のわずかな差異にも気づくかも」
「シャヌロット倧叞教様、この者はただの身代わりで、しかも賀民です。倧圹をお任せになっおは」
 即座に異議を唱えたマルクトを、シャヌロットはたしなめるように蚀い聞かせた。
「無論、神殿の総力をあげお次代の聖女を芋定めねばなりたせん。衚向きにも筆頭に立぀べきは珟聖女である『リリ゚ル』でしょう」
「埮力ながら解決に努めたす」
 リリ゚ルは折り目正しく瀌をした。蚀われなくずも率先しお『聖女探し』をする぀もりだった。奜郜合だ。
「ですが、かなり難しいかず。長幎秘匿ずされおいた『聖女』のこずを詳しく知る者でなければ、今回の件は起こせたせん」
「そこが䞀番の問題点です。聖女リリ゚ルが殺され、次代の聖女が䞉人珟れた。偶然ずは考えられたせん」
 マルクトの認識は甘い。賀民で、ただの身代わりに過ぎない『停者聖女』に頌らざるを埗ないほど、事態はひっ迫しおいるのだ。前代未聞の事態だずいうのに、執務宀にシャヌロット含めお䞉人しかいないこずが䜕よりも事の深刻さを物語っおいる。
「仮にこれら党おがマレ教の仕業だずすれば——」シャヌロットの声が沈む「神殿内、それも䞭枢に近い人間の䞭に邪教埒に䞎した『裏切り者』がいるずいうこずになりたす」
 誰も圌もが疑わしい状況で、裏切り者がこれ以䞊工䜜をしないよう、迅速に動かなければならない。混乱の䞭で本物の聖女が再び殺されるようなこずはあっおはならないのだ。
「『燔祭』を行うのはいかがでしょうか」
 リリ゚ルの提案に、シャヌロットは目をしばたいた。
「燔祭は聖女が聖別されおから行うものですよ」
「ええ、ですから䞉人共聖別したしょう。その䞊で䟛物を甚意させお燔祭を行うのです。本物の聖女の䟛物を焌き尜くした埌には『女神の玅涙石』が出珟するはずです」
 リリ゚ルは自身の右手を握った。黒手袋の䞋には女神の聖痕がある――あの䞉人の聖女候補達ず同じように。
「あいにくリリ゚ルの玅涙石は攫われた際に倱われおしたいたしたが、歎代の聖女の玅涙石ず比范するこずができるはずです」
「なるほど。前䟋のないこずではありたすが  そうも蚀っおられたせんね」
「倧叞教様」
「マルクト倧叞祭、聖別の儀ず燔祭の儀の準備をお願いしたす」
「で、ですが」
「異議があるのなら代案を。ないのなら沈黙なさい」

第六話https://note.com/hiroshi_agata/n/n2c9fcde95868

いいなず思ったら応揎しよう