最新|セレン強化イチゴと血糖:同じ量でも錠剤では届かなかった
ひと粒のイチゴに、必須ミネラルのセレンを通常より多く含ませる。そんな「バイオ強化(生物的栄養強化)」のイチゴを毎日食べた人たちで、空腹時の血糖やインスリンに好ましい変化がみられた、という研究が報告されました。
イタリア・パレルモ大学のグループによるもので、栄養学の専門誌『Nutrients』に2026年6月25日付で公開されています。
興味深いのは、同じ研究の中でふつうのセレン錠剤を飲んだグループも比べられている点です。錠剤でもイチゴでも、補おうとしたセレンの量はほぼ同じ。
それなのに、血液中のセレンが増え、血糖の指標まで動いたのは強化イチゴを食べたグループのほうで、錠剤のグループでははっきりした変化が出なかったと書かれています。
同じ栄養素を、同じくらいの量だけ補ったはずなのに、なぜ結果が分かれたのか。今回は、この食べもので摂る形と錠剤で摂る形の違いに焦点を当てて、報告された内容を見ていきます。
◼️記事の要点
セレンを多く含ませた強化イチゴ(100g/日)を健康な成人が30日間食べたところ、血中セレンが約74%増え、空腹時血糖とインスリンが下がり、インスリン感受性やβ細胞の働きの指標が改善したと報告されています。
同じ研究で、ほぼ同量にあたるセレン錠剤(100µg/日)を飲んだグループでは、血中セレンも代謝の指標も統計的にはっきりした変化がみられず、「摂る形の違い」が結果を分けた可能性が示唆されています。
セレンは必須でありながら摂りすぎにも注意が要る微量元素で、今回は健康な人を短期間みた研究です。糖尿病の治療や予防を示したものではない、という前提で読み進めるとよさそうです。
そもそも、バイオ強化イチゴとは何か
バイオ強化とは、作物そのものに含まれる栄養素を、栽培の段階で高めておく手法を指します。
土壌や水耕の養液に特定のミネラルを加え、植物に吸い上げさせて、収穫物の中の濃度を上げる。サプリメントのように後から足すのではなく、食べものの中身そのものを底上げしておく考え方です。
今回の研究では、この方法でイチゴのセレン濃度を通常より約419%、つまりおよそ5倍にまで高めたと報告されています。
セレンは抗酸化や甲状腺ホルモンの代謝、免疫などに関わる必須の微量元素ですが、食品中の量は育った土壌のセレン量に大きく左右され、地域差が出やすいことが知られています。栽培時に補うことで、その含有量を意図的にコントロールしようという試みです。
研究チームは、健康な成人35名を3つのグループに分けました。ふつうのイチゴを毎日100g食べるグループ、セレンを強化したイチゴを毎日100g食べるグループ、そしてセレンの錠剤を毎日100µg飲むグループです。
誰がどれを摂っているかは本人にも評価者にも分からない二重盲検という方法で、30日間続けられました。
開始時と終了時に採血し、血中のセレン、空腹時の血糖やインスリン、インスリン感受性、β細胞の働き、さらに肝臓の状態を映すASTやGGTといった値が比べられています。

問いを解く鍵になる、「食べる形」と「錠剤の形」
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