途中から、僕も歌っていた
先日の朝、駅までのみちすがら、頭の中に歌が流れ始めました。
聴いたわけではありません。イヤホンからでもなければ、どこかのお店でかかっていたわけでもない。本当に突然です。しかも一回だけではなく、同じところが何度も繰り返されました。
『にじのむこうに』という歌です。
二十年ほど前、『おかあさんといっしょ』というTV番組で流れていました。息子たちと一緒に聴いて、一緒に口ずさんでいた歌です。
その朝は、雨が上がったのかなと思っていました。それでも念のため、大きめの傘を持って家を出ました。ところが、最寄り駅までの道の途中から、また、しとしとと降り始めます。土砂降りではなく、静かに降り続く雨です。
その雨の中を歩きながら、頭の中では、雨が上がっておひさまが出てくる、という歌が流れていました。
現実では、雨がまた降り始めている。歌の中では、もう晴れている。
そのずれが、なんだか不思議で、一人くすっと笑っちゃいました。
けど、なんで今、この歌なのだろう。
理由は、いまも分かりません。天気が似ていたからなのか。何か別の記憶が引っかかったのか。たまたまなのか。
歩きながら、もうひとつ気づいたことがありました。
二十年前、その歌をどこで聴いていたのか。テレビの前だったのか。朝だったのか、夕方だったのか。息子たちがそのとき何歳で、どんな顔をしていたのか。
思い出せないのです。
一緒に聴いていたことは覚えている。
でも、その場面がひとつも出てこない。
残っていたのは、歌のほうだけでした。
そして、しばらく歩いたあとで、まわりに誰もいないのを確かめながら、自分でも口ずさんでいました。
気分が明るくなったから歌ったのか、歌ったから明るくなったのか。その順番は、いまも分かりません。
雨は降ったままです。おひさまが出たわけでも、虹が見えたわけでもない。それでも、頭の中だけで流れていた歌に、自分の声が加わっていました。
この続きと、そこから始めようと思った小さな物語のことは、声のほうに置いておきます。サブスタックのニュースレター登録者のみなさんに、次の道を選んでもらう物語です。ゲームブックの話は、十二分あたりから始まります。
あなたにも、突然、戻ってきた歌はありますか。
いつのものかも、どこで聴いたのかも、はっきりしなくてかまいません。
よかったら、コメントで教えてください。
