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EP.05「妻も剣士も、私」 

## 妻も剣士も、私——「どこにいても半分」だった、わたしの話 家にいるのに、頭の中は別のこと。目の前の人の話を、生返事で聞き逃してしまう。 そんな経験、あなたにもありませんか。

今回の「ミクの未完了日記」は、家庭と趣味のあいだで、いつも自分を「区切って」しまう女性の話です。

--- ## どっちにいても、半分 主人公のミクは、小学校の教員で、剣道を続けている既婚女性。ある朝、夫のリョウが話しかけてくれているのに、頭の中は今日の稽古のことでいっぱいで、生返事で聞き逃してしまう。

そして道場に行くと、今度は家のことが頭をよぎる。 家にいても心は道場、道場にいても心は家。どっちにいても、なんだか半分。「妻か、剣士か」と、いつのまにか自分を二つに区切っていた——そんな小さな疲れの話です。


--- ##なぜ「どっちか」になってしまうのか 心理学に、認知の歪みという考え方があります。そのひとつが「二分法的思考」、いわゆる白黒思考です。

「妻として完璧か、剣士として本気か、どっちか」——そう考えると、グレーの、ひと続きの自分が見えなくなる。 脳の話でいうと、何かをやりながら別のことを考える「切り替え」には、けっこうなコストがかかるそうです。

区切って行ったり来たりするほど、消耗する。ミクの素振りが、振りかぶって・止めて・下ろして、とぶつ切りになっていたのは、たぶん、その心の区切りが身体に出ていたのかなと思う。

--- ## 区切るな、下から #### ちいさな気づき 道場で、師のシンがふと一言だけ置いていきます。
「区切るな。……下から」。 剣道では、振りかぶって1、振り下ろして2、ではない。構えから打つまでを、ひと息で運ぶ。しかも上半身だけでなく、下半身という土台から。そう意識したら、ミクの素振りが、すっと一本通りました。 そのとき気づくのです。

「私、どこにいても自分を半分に区切ってた。だから、両方ちゃんと味わえなかったんだ」と。

####  家に帰ったミクは、夫に小さく言ってみます。

「今度の稽古、見にこない?」。 大きな決断じゃない。ただ、これまで「妻の時間」「剣道の時間」と区切ってきた線を、ちょっとだけ相手に開いてみる。それだけ。

#### ちいさな、ゆるみ 味噌汁の湯気が、いつもよりあたたかく感じた。区切らなくて、いいんだ。妻も剣士も、ぜんぶ私。

問題が消えたわけじゃありません。明日もまた、心は往復するでしょう。
それでも、いる場所にちゃんといられる瞬間は、ある。足元では、秋田犬のコハクが、しっぽをふわりと振っていました。

--- あなたは今、自分を何と何に、区切っていますか。 どちらか、ではなく、ぜんぶひと続きの自分。たまには、そう思ってみてもいいのかもしれません。 今回のエピソード、Instagramで公開中です。よかったら、ミクの一日をのぞきにきてください。

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