映画『黒い家』を観に行った、あの日の奇妙な一日
貴志祐介先生の小説『黒い家』にすっかりドはまりしていた、若かりし日の私。
当時、私の住むまちの映画館では上映されていなかったため、公開初日に隣県の映画館まで足を延ばすことにしました。
今でも忘れられない、まるで夢のなかで起きたような、あの日の不思議な体験をご紹介します。
🧟 異空間のような喫茶店

(AIによる再現)
上映時間よりもかなり早く到着してしまったため、近くの喫茶店で時間を潰すことにしました。
店に入ると、重厚な応接セットが6つ並び、さらに部屋の四隅には日本刀や兜、甲冑、槍といった武具がディスプレイされています。なんだか空気がやけに重い空間です。 入店時は私一人だったため、一番奥の応接セットを独り占めすることにしました。
入口の脇にあるレジでコーヒーを頼み、席で待つこと数分。コーヒーが運ばれてきました。ゆっくり時間を潰しながら飲んだものの、30分が限界。その間にも何人か客が入ってくる気配があり、隣からはタバコの匂いも漂ってきます。
「何も頼まないのは気が引けるな……デザートを追加しよう」とオーダーに立ち上がったのですが、大きな応接セットのせいで店員に声が届きません。そこで、直接厨房まで歩いて行くことにしました。
🧟🧟 ヤバい人たちに囲まれて
厨房へ向かう途中、ふと周りを見渡して驚愕しました。いつの間にか、ほとんどの応接セットが客で埋まっていたのです。
じっくり見る勇気はなかったものの、明らかに堅気の人ではありませんでした。黒いスーツにノーネクタイ、いかつくて雰囲気が尖った人びと。そう、いつの間にか私は、完全に異空間に入り込んでいたのです。
「オーダーお願いします!」と厨房に向かって大きめの声を出すと、奥から店員さんが来てくれました。メニューにあったチョコレートケーキを注文し、そそくさと自分の席に戻ります。
「やっぱり気のせいなんかじゃない、ヤバい人たちだ……。でも、せっかく頼んだんだからケーキは食べよう」
ケーキが来るまでの間、映画の予習と気持ちを落ち着かせるために、『黒い家』の小説を開きました。
🧟🧟🧟 シャクッとした冷凍ケーキ
15分ほど経った頃、ようやくチョコレートケーキが到着しました。
いざ口に運んでみると、シャクッとした明らかな冷凍品の食感。
「そうか! こんな店でケーキを頼む客なんていないんだ。だから冷凍品なんだな!」と妙に納得し、そのケーキも45分ほどかけてゆっくりと味わいました。
周りの話し声は気になりましたが、「知ってはならない会話を聞いてはならない」と、脳内で『黒い家』の実写版の演技を妄想して必死に意識を逸らしたのを覚えています。
🧟🧟🧟🧟 予想外すぎる映画館

上映の30分前になったので、独特の圧迫感から解放されるように店を出ました。外気の冷たさが心地よかったです。
沸き立つ気持ちを抑えながら映画館に行くと、そこは昭和の古い施設でした。しかし、これから観る映画の雰囲気にこれ以上なくマッチしていて、味わい深いなと満足しながらチケットを購入して館内へ。席は「空いた席に座るスタイル」です。
重い扉を開けると、そこは想像の斜め上を行く光景が広がっていました。
👻一番後ろの壁側の席👉️カップルがかなりヤバいイチャつきかたをしている
👻お目当てのど真ん中の中央席👉️ホームレスの人たちが寝っ転がっている
仕方なく、誰からも離れた最前列の席に座りました。
肝心の映画は、小説とは少し解釈が異なる部分もありましたが、大竹しのぶさんの演技が凄まじく、一気に物語の世界へ引き込まれてしまいました。古い映画館の雰囲気と内容が完全にマッチした、まさに奇跡のような空間でした。
🧟🧟🧟🧟🧟 帰り道での遭遇

(AIによる再現)
映画が終わると、夜の21時を過ぎていました。
周辺には街灯もなく、駅へと向かう公園は暗闇に包まれて不気味です。足元が見えないため、「もしウンチを踏んだら嫌だな……」などと考えながら、ひたすら下を向いて歩いていました。
その時、前方から「ポチャッ」と、水に何かが落ちる音が響きました。
ハッと顔を上げると、暗闇のなか、一人で黙々と釣りをしているおじさんの姿が。
ここまでの道で初めて生きた人間に会ったためホッとしたのも束の間、「こんな治安の悪い地域の夜に、一人で釣り……? まさか、闇の組織のメッセンジャー的な人!?」と恐怖心がピークに達し、そこから駅まで全力でダッシュしました。
家に着いたのは23時だったので、家族にはたいそう怒られました。もちろん、その日の出来事は怖すぎて話せませんでしたが……。
あの日の出来事は、今となってはまるで夢のなかで起きたかのような不思議な思い出ですが……。
今振り返ると、一歩間違えれば事件に巻き込まれていてもおかしくなかった自分の「危機感のなさ」に、今さらながら背筋が凍る思いがします。
👻夏にぴったり極上ホラーです✨👇️
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