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不思議なアパートの住人達 「ミセス・ガートン」

ニューヨークのアパート(マンション)の不思議な住人達の話の続きです。

今回は、長老のミセス・ガートン(仮名)を紹介します。

彼女は、このブルックリンのアパートに引っ越して、すぐに出会った人です。1950年代の映画の登場人物のような話し方、一部の隙もない着こなし。まるで小学校の校長先生のような優しく威厳のある雰囲気に包まれています。

私達夫婦は彼女に自己紹介をしてこれから宜しくお願いしますと、アメリカなのにしっかり頭を垂れて挨拶しました。彼女はそうさせる雰囲気がありました。
そして通常、ニューヨークで名前を聞かれた時、「◯◯◯よ(ファーストネーム)」で名乗るが一般的です。しかし彼女は、「私は、ミセス・ガートンです」と答えました。

「ミセス・ガートン」と自分で敬称をつけて挨拶されたのは初めてでした。大変上品な、古き良きアメリカの女性で、彼女は先生という事もすぐに分かりました。

その瞬間、私たちの間に「教師と生徒」のような関係が結ばれたのです。
それからもミセス・ガートンからの教育は続きました。ありがたいです。

公園にランニングに行こうと、薄手のウインドブレーカーと短パンでエレベーターに乗ったら、彼女がそんな格好でと私の服の薄さを触ってチェックして風邪をひくから辞めなさいと言われました。
しょうがないので、家に戻り長いレギンスに変えて、走りに行きました。でも正解だったのです。外は風が強く寒かったのです。それからも私は、天気に合わない格好をしてしまうので彼女に何度も助けられました。

そのアパートのエレベーターはとても古く、外ドアと内ドアがあり、重い外ドアを開けてエレベーターを出るのです。
ある時、ロビーについて外ドアを開けようとしたら、長老の彼女が重いドアを開けて私が出るの待ってくれていました。これは大変珍しいことです。
丁寧にお礼を伝えると、彼女は「こうやるのは、自分がやって欲しいからやるのよ。」と言うのです。
ここはニューヨーク、レディーファーストの国です。女性と男性の関係の他、年長者、障がい者や怪我のある人、幼い子供、若者というしっかりとした優先順位のマナーがあるのです。ミセス・ガートンは最上位です。

ただし、男性の長老はまた違いますので注意が必要です。彼らもお父さんとして最も尊敬されていますので、ドアを出るのは一番最後、または一番最初に出て、ドアをホールドします。そして女性や子供、自分より若い男性が安全に通れるよう行動をするのです。

何故、その行動をするかは理由があることも考えさせられました。
文化の違いを理解する大きな助けになりました。


そんなふうに、生活の端々で私を導いてくれた
ミセス・ガートンですが、ある日、彼女は、大昔の年季の入った本をたくさん運んでいました。それを皆が交流するランドリールームに置いていました。気に入ったら持って帰ってとメモをつけて!私にも良い本があるからチェックするように教えてくれました。当時の私はニューヨークに移って2〜3年だったので、辞典のように分厚い重厚な本は敷居が高く難しいかと思いましたが、その中に古いアメリカの料理の辞典やレシピ集があったのです。

私は持ち帰り、使いこんでぼろぼろになった本を、
写経のように書き写しました。フィラデルフィアの昔の料理です。
その本を使い、収穫祭の七面鳥料理を作った時は、あまりにも大変で、なんと深夜0時を回ってしまいました。過酷なオーブン料理に手こずり泣きそうになった私を夫が励まし、仕上げることができました。
深夜に食べたご馳走は美味しかったです。
その後、少しだけ料理の腕は上がりました。

人生の大先輩のミセス・ガートン。
順調に歳を重ねることができれば、私もいつか年長者になる時が必ず来る。
その時は、彼女のような素敵な年長者になれるなら、歳を重ねるのも悪くないです。
彼女のようにはなれないかもしれませんが。

今はそんな風に思っています。

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