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本をつくることで、誰かと「対話」がしたかった

自分で制作した本を読んだ感想をもらって、思わず涙がこぼれたことがある。

自分で本を企画して、つくって、届ける。この一年でその過程をひと通り経験して、気づいたことがあった。もしかしたらわたしは、本づくりを通して、誰かと「対話」をしたかったのかもしれない。


思えば、今までの人生で人と対話をする機会はあまり多くなかったように思う。子どもの頃から、自分の話をするのがとにかく苦手。友だちと上手におしゃべりできないことに劣等感もあった。

そのうち、人と対話することがこわいという気持ちも生まれた。自分の話をして、相手が興味を持ってくれなかったらどうしよう。否定されてしまったらどうしよう。そんなことばかり考えてしまって、たわいもない話をしているほうが楽だった。

でも心のなかは、いつも、少しだけさびしくて。誰かと話しても、どこか表面だけでおわってしまう。心のまんなかにあることは言えないまま。

そんな満たされない気持ちを抱えていたとき、もう少し自分の心を満たす、心が喜ぶことを選んでみたいと思った。


そうして選んだのが、本をつくることだった。単純に楽しそうだし、ゆっくり考えて言葉にできる文章であれば、自分の心のまんなかを誰かに届けれるんじゃないかと思った。

ひとつのことについてじっくり考えたり、手を動かして何かをつくったりするのことは昔から好きだった。自分の理想の本をカタチにできたら、きっとおもしろいだろうと思った。


けれど、本づくりは想像以上に大変だった。

原稿を書いて、推敲して、デザインを考えて、印刷して。楽しいと思うときもあったけれど、うまくいかなくて途方に暮れる日も何度もあった。本が完成する頃には、「こんなに大変なら、ちょっと次の本を出すかどうかは考えてしまうなあ」と思っていた。


そして、文学フリマ東京で完成したフォトエッセイ集『ひかりをたどる北欧旅』を発売。楽しさと慌ただしさで、あっという間に一日が終わった。

その後もオンラインショップで手に取ってくれる人がいたり、本屋さんで取り扱ってもらえるようなったり、嬉しいできごとがつづいた。


何より嬉しかったのは、「本の感想をもらうこと」だった。

「このエピソードが好きでした」
「こんな気持ちになりました」

感想をもらうたびに、胸がいっぱいになる。込み上げてきたものが涙となって出てくることもあった。なんだろう、この気持ちは。うまく言葉にならない。でも、たしかに心のなかが満ちていく感覚がある。


本を通して誰かと「対話」できたような気がした。そして、これが本づくりを通してほんとうにしたいことだったのだと気づいた。

対面で向き合っているわけではないし、本というものを間にはさんでいるから、これは対話とは呼ばないのかもしれない。

それでも、わたしには自分の心と相手の心が向き合っているように感じられて、嬉しかった。そのやり取りは、わたしにとってたしかに「対話」だった。


こんな気持ちになれるなら、また本をつくりたい。

本は一方通行ではないという当たり前のことを、本づくりをしたことで手触りをもって感じられた。

わたしの心のなかにあることを言葉にする。それを受け取ってもらって、言葉が返ってくる。

話す以外でも対話できるんだと気づけたことは、わたしにとって救いになった。本を誰かに読んでもらうまで緊張していた心が、ふう~とゆるんで伸びやかになっていく感じがする。


わたしのなかには、まだ話したいことがある。だれかと分かち合いたい景色がある。だからきっと、また本をつくる。

本を通した対話を、これからも大切に育てていきたいと思う。




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