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キッチン常夜灯|長月天音

私が新卒で入社した会社は、仕事が忙しく帰りが遅かったから、夕飯は同僚と深夜まで開いているファミレスに行くことが多かった。当時は若かったし、お腹も空いているから、深夜にも関わらず重めのメニューをオーダーし、食べた。そして、寮に着いたら倒れ込むように寝る日々。当時は寝るためだけの空間。それが自分の部屋だった。そんな昔のことをこの本を読みながら思い出していた。その時は一生懸命で自分を大切にするという概念がなかった。主人公のみもざも同じ。今の自分なら、「無理しちゃだめだよ」「自分を大切にしなさい」と言ってあげられるのに。

「キッチン常夜灯」は、終電を逃したお客さんから、始発で仕事に向かう人まで、美味しい料理を作って待ってくれている灯台みたいなお店だ。ただ、お腹を満たすだけではなく、その空間は心を癒し、満たしてくれる。シェフが作る美味しい料理は、1日頑張った自分へのご褒美であり、これから1日頑張る人へのエールにもなる。こんなお店があの時あったなら、時々通っていたのかもしれない。今だって、もし近くにあったら行ってみたいなと思う。

闇夜な浮かぶ看板、窓のステンドグラス

ホワイトアスパラのスープ、トリップ(牛の胃の煮込み)、帆立のコキールグラタン、そしてシェフのおにぎりとお味噌汁。美味しそうな料理がたくさん登場する。出会ったことのないその料理に想いを馳せる。今朝は窓を開けたら涼しい秋の風が入ってきた。もうそろそろグラタンもいいな。いつもと違う具材で作ってみようかと考える。

昨晩この本を読み終えて、早速「キッチン常夜灯」シリーズの続編4冊をポチッと購入。これからの秋の夜長に読むにはぴったりだと思う。読書の秋と食欲の秋を満たしてくれそうだ。勝手に秋の課題図書にしようと決めた。

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・「私も一人で過ごす夜の長さをよく知っています。でも必ず朝が来ます。眩しい光を見れば、何となく気持ちも明るくなる。わたしたちは、そのための場所を用意してるだけなんです」
・「年齢を重ねると、大切なものがどんどん増えていって困りますね」としみじみとシェフが言った。「そして、どれも手放すのが惜しくなります」
・「夜中なのに、シェフは美味しい料理を用意して私たちを待ってくれるんです。私たちはみんな自分の世界で戦っていて、疲れ果ててここにたどり着く。空っぽになった体に、新しい力を注ぎこんでくれるのがシェフの料理なんです。そして、周りには自分と同じように頑張っている人がいる。だからここは居心地がいいんです」
・焦ることはない。ひとつひとつ、問題を解決しながら、生きていくしかない。それはつまり前へ進むこと。進み続ける限り、大なり小なり問題はきっと現れる。今回、突然の脱毛が見つかったように。でも、その都度自分を労っていくしかない。この体で、最後まで走り抜けなくてはいけないのだから。


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