帰りたかったはずなのに、落し物放送に聞き入った
子供の夏休み初日、私は子供の夏祭りに付き添っていた
学校の校庭に着くと、浴衣を着た娘が、友達を見つけて
「ママあとでねー!!」
と走り去っていった
草が生い茂る小学校の校庭
楕円を描くように、出店のテントやキッチンカーが停まっている
真ん中あたりにはトラックの荷台を開けた、簡易的なステージがある
どうやら抽選会がそこであるらしい
その校庭の端にある石の段差に腰掛け、PTA本部の男性がマイクで落し物の呼び掛けをする声を聞いている
「200円のチケット買って輪投げしかしてない人ー!いませんか?!これ、200円払ってでも輪投げやりたかったってことだよね?!」
「スマホ落とした人いませんかー?!今日の落し物の中で一番高額ですよー!!iPhoneですね。子供か大人か微妙なので、大人の人も確認してくださいねー!!」
そんな声を聞きながら、ぼんやりとスマホを眺めていた
落し物の放送が続く
「どなたか、お店でお金払ったらお釣りが記念硬貨だった人いませんかー?!本当は使いたくなかったのに間違えて使ってしまったらしくてー!500円で記念硬貨持ってる方いませんか?!」
…これだけ人がいれば色んなもの落とすし、色んなことあるんだなぁ
ちなみに、500円の記念硬貨ってどんなのだろう?
次は女性の声に変わった
「お楽しみチケット、使ってないの落とした人いませんかー?!これ買ってすぐ落としたでしょ?!」
また男性の人に変わる
「お財布に記念硬貨ある人いませんかー?!間違えて使っちゃった子泣いてまーす!!2002年のサッカーの記念硬貨みたいでーす!!」
検索をかけてみた
おお、こんなものなんだ
「記念硬貨見つかりましたー!!皆さんご協力ありがとうございましたー!!」
思わず私も周りの人も拍手した
良かった、見つかって良かった
いつの間にか早く帰りたいと思っていたのに、落し物放送に聞き入っていた
ちなみにiPhoneはまだ見つからない
隣に座ってる小学校高学年か中学生くらいの女の子が
「いいなー、欲しー」
と言っている
「iPhone落とした人ほんとにいませんか ー?!今LINEきたよ?!ほら、LINE返さないと!!ほんとにいませんかー?!緑のカバーかかってます!!」
そして、また女性の声に変わる
「皆さーん!!縁日は17時までですよー!!」
「17時からは抽選会ですよー!!景品は欲しいかー!!??」
おー!!っと小学生の声が上がる
「声が小さい!!景品は欲しいかーー!!??」
今度は大きな声で、おーー!!!っと声が上がった
いいな、楽しそうだな
抽選会が始まった
次々と番号が呼ばれる
「69、73、85、103!!!みんな大好きブタメンセットだよー!!」
そういえば、去年はうちの子は当選しなかった
一緒にいたお友達は3,000円分のサーティワンのギフトカード当たってて、嬉しそうにしていたな
今年はうちの子も当たるといいな
たしかうちの子は34番だ
抽選会は続く
「次は大っきいシャボン玉だよー!!65番!!」
「スーパーマリオいきましょう!!びっくらタマゴ2個セット!!」
子供達から「欲しー!」と声が上がった
「68番!!」
駄菓子とおもちゃとのテンションの差がすごいな
気持ちはよくわかる
私も駄菓子よりはおもちゃが欲しい
「34番!!」
ハッとした
子供の番号だった
子供を見ると、走っていた
きっと景品を取りに行くだろうと見ていたら、子供は左に右と走っていったあと、私の所に走ってきた
「番号34番でしょ?!今当たってたよ?!」
子供のカードを確認して言った
全く気づいていなかったらしい
一緒に来てと言ったのでステージ近くに行ったが、既に番号は進んでいて子供が当たった景品は既に別の人の手に渡っていたらしい
景品がなんだったのかはわからないが、せっかく当たったのに貰えないのは残念だなと思った
とはいえ、当の本人はなんとも思ってないようだった
そうしてあっという間に抽選会は終わった
落し物を呼びかけていた男性がまたマイクで呼びかける
「えー、何度も言いますが、スマホ落とした人いませんかー?」
そのとき声が変わった
「え?ホント?じゃあ、開けて見せて?」
どうやら落とし主と思われる人が現れたらしい
「…良かったー!!見つかりましたー!!なんだよもう!もっと早く受け取りに来てよー!!」
思わず2回目の拍手をした
来たときは早く帰りたいなと思って座っていた
でも、気づいたら落し物放送に聞き入って、落し主が見つかったときは思わず拍手をするほどお祭りの雰囲気を楽しんでいた
「ママこれ買ったー!!」
走ってきた子供の腕には、光る腕輪があった
自分も子供の頃に、買ったなぁと懐かしく思って見た
時刻は18時
小学生の抽選会の後にあった、町内会の抽選会も終わったようだ
ゆっくりと立ち上がった
何も買わなくて、ただ座っていただけだけど、なんだか楽しかったなと思いながら子供と手を繋いで歩き出した
