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【自伝38】彼の悪条件

「よくそんな環境でグレなかったね。」

思わずそう言ってしまうほど、
彼の人生も決して平坦ではなかった。
一言で言うと、彼はきょうだい児だった。

「グレる余地なんでないだろ。俺一人ぐらいまともに育たないと、親が壊れるだろ。」

彼は、理想論や根性論を蹴飛ばす、やや達観したような、やや冷めたような感性を持っているが、それでいてユニークな面もある。
私が好きな彼の性格は、これまでの人生で形成されたものに違いなかった。この環境で育った彼を、私は好きになったのだ。
だからこそ、彼の持つ条件を否定なんてしたくはない。したくはないけれど、私の母は何と言うだろうか──。

私の心は恐怖に怯えた。
私は愚かにも、自分のてんかんを棚に上げ、
自分の病気や生い立ちを隠したまま、
彼の家族について悩んだ。

やっと心から好きな人ができたのに、
何故、普通の人じゃないのだろう。
分かってる。
普通の人なんて、どうせ面白くなくて、
魅力もなくて、私と価値観も合わない。
分かってる。
私も人の事を言える立場じゃない。
でも自分の事を打ち明けるのは怖い。

初期の段階で、正直に素直に話してくれた彼は、強く優しい人だと思った。
そう思えば思うほど、苦しくなった。

「自分の問題なら努力して直せるけど、家族の事は俺にも変える事はできない。」

そりゃそうだ。
私の不安は、彼にとっては苦しみでしかないのに、「蓮ノ花が不安なら」という前提で話を聞いてくれる。
普通の人なら怒るかもしれないものを。

私が天涯孤独だったなら、
私の不安を否定せず受け止めてくれる彼を、迷わず選ぶ。
しかし私にはあの母がいる。
あの恐ろしい審判の母が。
母に認められなければ、結婚できない。
交際すら絶対に色々言われる。
言われるであろう台詞が想像できる。

好きなものを好きと、自信を持って宣言できない私にとって、この問題は大きすぎた。

問題があるのは母なのに、
不幸の温床は母なのに、
完全に毒母の洗脳下にあった私は、
彼の家族に問題があると思い込んでいた。

彼も、一人娘だからこんなもんなのか?
と、私の親子関係がおかしいとは気付かなかった。

問題は、形を変えて目の前に現れる。

毒母の影響は、どこまで付きまとうのか。

私の汚染された心が毒に気付くまで続く──












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