私がロンドンに来た理由
ほんの1ヶ月前まで東京の渋谷の企業で正社員をしていた。
同僚にも上司にも恵まれて、挑戦や悩みなどは少なからずありながらも充実した人生を送っていた。
新卒から入った会社だから他の企業のことは知らないが、このままずっとここで働くのも良いなと思っていた。
でも、自分には大切にしていることがあった。
それは、自分が心から好きなことを思う存分学ぶことだった。
そして、夢と呼ぶには壮大だが、やりたいことがあった。
それは心から尊敬しているある有名なフォトグラファーから写真を学ぶことだった。彼はロンドンに住んでいた。
だから会社を辞めた。
思い返せばいつもそうだった。
言語が好きだった。だから勉強した。
それをどう活かしたいとか、どういうメリットを生み出したいとかはあまり考えず、その楽しさからいつの間にか3ヶ国語をある程度流暢に話せるようになった。
前職ではあまり役に立たなかった。
中国語と英語が話せても活かせる機会は、年に数日くらいだった。
それでも全然よかった。なぜなら知ることが楽しかったからだ。
写真の勉強なんて、言語よりも尚更役に立つことが少ない。
カメラマンになりたくて、勉強を始めたわけではないからだ。
ただその美しさに魅了されてもっと極めたくなった。
尊敬するフォトグラファーと今世で関わってみたかった。
Vogueで活躍するフォトグラファー達からスキルや知識を盗みたかった。
同じ価値観の人たちともっと関わってみたかった。
自分が外国の芸術という世界でどこまで行けるのか知りたかった。
期限を切らずに行けるところまで試してみたかった。
会社を辞めるには充分な理由だった。
賢い選択ではない。
今は無職だ。
会社員時代に稼いだ貯金を崩しながらロンドンで生活している。
週4でインスタントラーメンを食べて生きている。
本当はもっと上手に生きれたと思う。会社の先輩からは不器用だと言われた。
でも1ヶ月ロンドンで生活して、来て本当に良かったと思っている。
知り合い0からのスタートだった。
社交が苦手な私だったが、積極的に自分から知らない人たちと話して自分をPRしてを3週間繰り返した。今日やっとロンドンのテック企業から撮影依頼を受けた。今月は個人の依頼とテスティングの提案も4件来た。
新しい居場所をゆっくり作っているような気持ちだった。
正直、じゃあ半年後にどうなっていたいのかと聞かれると何もわからない。フォトグラファーとしての成功を強く望んでいるわけでもないからだ。
ただ今は毎日得る膨大な知識が嬉しくて、それをすぐにアウトプットできる環境が嬉しくて、それだけだ。
他人にこの選択はあまり勧めない。(相当お金に余裕があるとか、株で大成功しているとかなら別)
貯金は溶けて、人生で一番貧乏な生活をする羽目になるし、孤独は付きものだし、飯はまずいし、頼れる人はいないし、何より安定した人生ではなくなるから。
ただ明日もよくわからないピタパンみたいなパンとケチャップでお昼ご飯を済ませるだろうけど、自分はそれでも心の底から幸せを感じている。
人生で初めて「明日死んでも後悔がない人生を送れているのではないか」と感じている。たぶん。
おしまい
