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【名盤列伝:47枚目】The Beach Boys『Summer Days (And Summer Nights!!)』全曲紹介 text by Starman

最近、村上春樹のデビュー作「風の歌を聴け」を今更ながら読んだ筆者です。と言うのも、押入れを整理していたらたまたま出てきたと言うのが理由で、恐らく「いつか読もう」と思って「そのまましまい込んで忘れていた」のでしょう。

物語の中で、筆者が特に印象が残ったシーンが主人公が「カリフォルニアガールズの入ったビーチボーイズのLP」を買うところです。そもそも、本作はこの「カリフォルニアガールズ」が随所で登場しており、物語の中で重要なポイントとなっているので、まだ未読の方はぜひ、この曲を聴いた上で読んで頂きたいと感じました。

さて、結局のところ主人公が「何のLPを買ったか」が書かれていなかったのですが、物語の舞台が「1970年の夏」である事から、「Summer Days (And Summer Nights!!)」であると推測されます。その他にも1970年時点で「Best of the Beach Boys Vol. 2」を始めとする幾つかのコンピレーションアルバムが発売されており、その中に「カリフォルニアガールズ」が収録されているのですが、やはりこのような小説では「オリジナルアルバムを購入する方がずっと絵になる」と思いますし、ビーチボーイズ愛に溢れた作者なので、きっと「Summer Days (And Summer Nights!!)」だろうと言う個人的願望を込め、話を進めさせて頂きます。

という事で、「カリフォルニアガールズ」が収録されたビーチボーイズ1965年のアルバム「Summer Days (And Summer Nights!!)」を紹介したいと思いますので宜しくお願いします。

USの擬似ステレオ盤は『デュオフォニック』と記される

タイトルからして、初期の「夏だ!海だ!ビーチ・ボーイズだ!」の流れを踏襲する内容かと思われる方もいるかもしれません。実は本作がリリースされる前のアルバム「The Beach Boys Today!」のレコーディング段階から、ブライアン・ウィルソンはツアーから離脱し、レコーディングに専念しており、各楽曲のクオリティやアレンジがぐっと向上しております。その為、本作は「The Beach Boys Today!」程の湿った暗さは無いまでも、随所にブライアンのアレンジやソングライティングが光り「Pet Sounds」前の作品の中では屈指の名盤だと個人的に考えております。

まず冒頭を飾るのが、A-1「The Girl from New York City」です。ツアーから離脱する事で、ブライアン・ウィルソンの中で、相当な時間的、精神的な余裕が生まれたようで、冒頭を飾るこの曲から、これまでに無いアイディアが盛り込まれています。LAの有名なセッションマンであるスティーヴ・ダグラスが奏でるソウルフルなサックスの音から、それは伝わるでしょう。これまでチャック・ベリー的なエレキギター一辺倒だったバッキングもピアノに変わり、今聴き直してみると「モータウン的」なアレンジだと気付かされます。

続く、A-2「Amusement Parks U.S.A.」では、曲の構成自体は「Surfin' safari」から始まる典型的なサーフミュージックですが、アメリカの遊園地やサーカスをモチーフとしており、サーカスのナレーションや観客の声等がコラージュされており、メリーゴーラウンドに乗って回転しているようなトリップ感があります。そこにサーフミュージックの雰囲気は無く、ブライアン・ウィルソンがこれまでのイメージから脱却し、全く別の音楽を試みている事が分かります。

A-3「Then I Kissed Her」は、フィル・スペクターが書き、クリスタルズが1963年にヒットさせた「Then He Kissed Me」のカバー。日本では、男性が女性目線の曲を歌ったり、又逆のパターンになる事も多々ありますが、英語圏では、「He」→「She」と歌い手によって男女の立場を入れ替えた歌詞に変える傾向があり、そもそもの文化の違いが面白いですが、何よりリードヴォーカルを取る「アル・ジャーディン」のボーカルの魅力が素晴らしい!シンプルなアコギの伴奏と控えめなコーラスは、彼のボーカルを完全に引き立てるアレンジです。彼はメンバーの中でもフォークミュージックの影響が強く、後のアルバム「Party!」ではボブ・ディランの作品をカバーしていますが、そんなアルにしか出せない雰囲気があります。筆者は彼のボーカルが昔から溜まらなく好きなのですが、その理由がこの一曲に詰まっています。

さて、前作から3カ月という殺人的なスケジュールで本作は制作されおり、幾らツアーから身を引いたとは言え、過酷である事は間違いありません。A-4「Salt Lake City」はこれまでのような斬新なアイディアは感じず、穴埋めをするように軽く作られた印象です。当時ビーチ・ボーイズ人気が高かったユタ州ソルトレイク市への宣伝として作られたものだそうで、ブライアンにとって決してそこまで意欲的な仕事では無かったと推測されます。

A-5「Girl Don't Tell Me」は、ビートルズの「Ticket To Ride」を聴いたブライアンが影響されて作った作品、と多くの書籍で紹介されている曲です。ビートルズ人気に対抗しようと孤軍奮闘していたブライアン・ウィルソンと、その遥か上にいたビートルズ。この曲を聴けば「一人で何とかするしか無かった」ブライアンの悲哀を感じます。ギターリフやドラムのフィルイン等にビートルズ的な要素を感じますが、アルバムの中では「埋もれてしまう曲」となってしまうのは残念な限りです。

A-6「Help me,Rhonda」前作に収録されていた曲をシングル用に再録音したもので、ここでもアル・ジャーディンがリードボーカルを務めます。印象的なギターリフとサビの掛け合いのコーラスは、ビーチボーイズの真骨頂と言えるものです。

ここからがB面ですが、冒頭で紹介したB-1「California Girls」。ライブの始まりを予見させる期待感が高まるイントロから、電子オルガンによる軽やかなサウンドが続きます。サビの重厚なコーラスワークや、マイク・ラヴによる「アメリカ各地の女性を賛美する歌詞」は、ビーチ・ボーイズの一つの頂点と言えるものです。このアルバムのA

面が、朝、太陽が昇りお昼に差し掛かるような明るさだとすれば、B面は、そこから徐々に日が暮れてゆくような印象を受けます。

B-2「Let Him Run Wild」B-3「You're So Good to Me」の包み込まれるような美しいコーラスとヴィブラフォンやサックスが加わった哀愁漂うアレンジは、後の「Pet Sounds」に通じるものでしょう。

B-4「Summer Means New Love」では遂に、ブライアン以外のメンバーが参加しなくなってしまいます。本作を「バンドとしての作品」として捉えると疑問は残りますが、多くのセッションマンに支えられ、「夏の夕暮れ」」を表現したようなメロディは純粋に美しいです。

そして、彼らの作品の中で無視されがちなB-5「I'm Bugged at My Ol' Man」はブライアン・ウィルソン流の「ピアノブルース」と呼べるもので、ブライアンによるピアノのみで録音されております。このような軽く作ったシンプルな作品にこそ、彼らの魅力が詰まっており、それは後の「Party!」にも繋がっていくと筆者は考えております。若干コミックソング的な位置づけですが、シンプルながらも、しっかりビートを刻むブライアンのピアノプレイは「こんな曲をもっと聴きたかった!」と感じるもので、ブライアンからブラックミュージックの影響を感じる数少ない曲です。

ラストを飾る「And Your Dream Comes True」は、正に夏の夜に星空を見上げているような美しいアカペラ曲です。ビーチ・ボーイズのコーラスグループとしての底力を感じます。

アルバムを通して聴くと、27分という短い時間の中で、12曲の様々な種類の作品が収録されており、あっという間に聴き終えてしまいます。彼らの作品の中でも特に聴きやすく、「ぜひビーチボーイズの入門に」オススメしたい一枚です。この機会にぜひ!

最後までありがとうございました。

編集部ライター『Starman A』(P)2026

編集長『MASH』が経営するギター専門店『Jerry's Guitar』公式サイトはコチラ

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