大河ドラマの創作性はどこまで許されるのか ~大切なちょうどいい塩梅~
「当時の衣装を着た現代劇」なのか、それとも……
◇3日放送のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』には少し頭を抱えるところがあった。いつでも作り手を応援したい気持ちはあるが、「攻め過ぎ」は視聴者を悩ませ、結果「駄作」と呼ばれかねない。
◇かなり創作性を発揮した展開だった。1番は御屋形様こと武田信玄の最期が餅を詰まらせたという創作。山梨県民の代わりに信玄ファンの私が怒りかねない(笑)。信玄は胃ガンか食道ガンで亡くなった説が有力だ。51歳という年齢を考えれば嚥下機能の低下で餅が詰まるというのも考えにくい。みんな大好き信玄餅のシャレなのか(笑)。
◇お市の方が愛する夫・浅井長政の最期の介錯をしたというラストシーン。宮﨑あおいさんはより美しくなったし、中島歩さんと合わせて演技も申し分なかった。落城する中で切腹する夫には介錯人がおらず、その苦しみから解放させたいという愛情。理屈はわかるが、斬首は余程腕が良くないとできない。千葉道場の千葉さな子ぐらいでないと不可能だと思ってしまう。創作と割り切ればいいのだが、自分も剣道をやっているだけあってリアリティを求めてしまう。
「歴史を弄ばない」条件
◇戦国時代以降はけっこう史料が残っており、多少の振れ幅はありつつ事実に近い描写は可能だ。平安時代が時代背景の2024年の『光る君へ』は、1000年前の話であり、創作性はかなり許されていた。それでも藤原道長や紫式部の日記が現存しているわけで、かなり忠実に史料に基づいて作っていたのではなかろうか。
◇何度も何度も題材に選ばれた三英傑の時代だけに、ありきたりの物語ではなく奇を衒う考えもわからないでもない。しかし、大河ドラマは老若男女観るわけで、史実でないことをやるからには説得力がある展開にしないと苦しい。姉川の戦いはリアリティがあっただけにとても良かったが、3日放送の回はかなり首を傾げざるをえない「冒険」だった。
◇今回は家康最大危機の三方ヶ原の戦いも含まれた。小谷落城と同じ回にてんこ盛りとなったが、創作性で競う『どうする家康』ではかなり深刻な物語展開にしていた。実際、配下の武将を失っており、家康も討たれる可能性があったが、その緊迫感が感じられなかったのは残念だ。
◇浜松城に攻め込まれれば敗死していた可能性もある。逃げ込んだ後で城門を開きっぱなしにして、あえて警戒させて武田軍が追撃を止めたという説もある。どう危機を乗り越えたか。三方ヶ原を描くなら、物語展開の要点を避けると腰砕けになってしまう。
大河ドラマ制作の難しさ
◇私もいつか大河ドラマの物語を書くのが夢の1つだ。だから、「史実」と創作の「丁度いい塩梅」を考えてきた。虚実皮膜という言葉があるとか。創作だとしても、「これもありかも」と歴史家を唸らせるくらい納得できる展開が大事だ。
◇視聴者には目が肥えている人が多い。観てガッカリさせない物語にすることは大変なことだ。作り手の頑張りに敬意を持ちつつ、私も格闘しながら今後も視聴していきたい。
☆写真は昨年訪れた、広島県・宮島の豊国神社「千畳閣」(重要文化財)
