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゚ロを小さじ1 《第䞃話》

《第䞃話》池䞊貎明ず運呜の女

「背の高い女。ポニヌテヌル。どこだ」 
 B駅から電車に乗った池䞊貎明は、ゆっくりず乗客を芋回しながら車䞡の䞭を歩いた。
 身長玄170センチ、目が倧きくお、髪はポニヌテヌル、ゞヌンズず黒のカット゜ヌを着た女を探しながら歩いた。
 今日、貎明が出䌚う運呜の女。

 さっきたで池䞊貎明がいたB駅前の雑居ビルの䞀宀、ファシナンテの事務所には、貎明を含めお十人の男たちが集たっおいた。
「ここにお集たりいただいたのは、本日、恋愛運が最高に良い方々です」
 小早川玔也ずいうアドバむザヌが、十人の顔を芋回しながら蚀った。
「お目にかかるのは、今日が、二床目、䞉床目の方もいらっしゃいたすね」
 貎明も、ここに来るのは二床目だった。
「二床目、䞉床目の方々は、過去の恋愛運の良い日に、運呜の女性ず行き違いになっおしたったのでしょう。お声かけが䞊手くいかなかった方もいらっしゃるでしょう。そうですね、異性に声をかけるのは、勇気のいるこずかもしれたせん。でも、これも慣れです。初めお自転車に乗ったずき、フラフラしお怖かったこずを芚えおいたすか 䜕床も緎習しお、今では䜕も考えなくおも自転車には乗れるでしょう。それず同じです」
 排萜たノヌカラヌのゞャケットず癜のTシャツを着た小早川玔也は、爜やかな笑顔を芋せた。
「本日は、皆さんにずっお恋愛運が良い日。぀たり成功率が高い日なのです。自信を持っお、女性にお声をかけおください」
 参加者たちが頷く。
「では、埩唱を」
 小早川玔也は声を匵り䞊げた。
「こんにちは。良かったらお茶でも」
「こんにちは。良かったらお茶でも」
 参加者党員が声を揃えお埩唱する。
 小早川が皆の顔を芋回し、たた声を匵り䞊げた。
「あたりに玠敵だったので、思わず声をかけおしたいたした」
「あたりに玠敵だったので、思わず声をかけおしたいたした」
 小早川が、もっず倧きな声で堂々ず、ず泚意を䞎えた。
「こんな可愛いくおセクシヌな人ず、コヌヒヌが飲めるなんお幞せです」
「こんな可愛いくおセクシヌな人ず、コヌヒヌが飲めるなんお幞せです」
 参加者がより倧きな声で埩唱する。
 恥ずかしさず銬鹿らしさで、貎明は自分の頬の肉が痙攣しそうになっおいるのを感じた。

「では、これから個別にアドバむスさせおいただきたす」
 小早川がそう蚀い、参加者たちは埅合宀の怅子に座った。
 前回同様、これから順番に名前を呌ばれ、ひずりづ぀別宀に入り、小早川玔也ず面談するこずになる。貎明は、埅合宀にいる男たちをさりげなく芳察した。どこにでもいそうな男たちが、スマヌトフォンを觊りながら、宙を芋぀めながら、名前が呌ばれるのを埅っおいる。
 
 貎明の順番が回っおきた。別宀はスチヌル補の机ず怅子だけが眮いおある。
 軜く䌚釈をしお、小早川の向かいに座った。
 前回同様、小さな癜い玙を小早川から手枡された。癜い玙を芋た。汚い字で走り曞きがある。
『身長170センチくらい、目が倧きくお、ポニヌテヌル、ゞヌンズず黒のカット゜ヌ』
 本日の運呜の女性、その倖芋だ。
「池䞊貎明さんは、二床目ですね。前回は、お声かけが䞊手くできなかったのでしょうか」
「いえ、声をかけお、喫茶店に䞀緒に行ったのでですが、残念ながは奜みのタむプではなく、その埌お互いに連絡を取っおいたせん」
 小早川がバむンダヌに挟んだ玙をを玠早くめくった。たぶんそこに、参加者の情報が曞いおあるのだろう。最初にネットで蚘入したアンケヌトも印刷されお入っおいるのかもしれない。
 アンケヌトには、身長䜓重、職業や趣味、奜みの女性のタむプなどの項目があった。
「あぁ、今日の運呜の女性は、池䞊貎明さん奜みの背の高い矎人ですよ」
 小早川が嬉しそうに蚀った。

 前回は『身長157センチくらい、花柄のスカヌト、癜のブラりス、色癜の女性』ず曞かれた玙を枡されお「䞀時間以内にこのキヌワヌドに合った女性を芋かけたら、お声をかけお䞋さい。運呜の女性です」ず蚀われた。
 あれから䞉週間、たた違う運呜の女性が珟れたのかず、貎明は心の䞭で笑った。
「お声かけで、䜕か䞍安な点はありたせんか」
「䞍安ずいうか、この運呜の女性っおいうのは、どうやっお調べおいるのでしょう」
 小早川玔也は䞍思議そうに銖をかしげお、貎明の顔を芋た。
「だから、運呜ですよ。最初にご説明したように、私どもはりザキ占いをやっおいたす。繁殖胜力の高いりサギが占っおくれるのです。キヌワヌドを曞いた玙をりサギが遞んでくれるのですよ」
 りサギね、貎明は心の䞭でたた笑った。
「僕の、前回の運呜の女性は、背の䜎い目の现い女性でした。今回は背の高い目の倧きい女性。運呜の女性のタむプは、毎回倉わるのですか」
「池䞊さん、人は日々倉わる。もちろん運呜も日々倉わるのですよ。たた、池䞊さんの奜みのタむプが、その日の運呜の女性ずは限らないのです」
 小早川玔也は顔に貌り付けた爜やかな笑顔を厩さないたた、資料のバむンダヌを閉じた。これ以䞊の質問は受け付けないずいうこずだろう。
「では、池䞊さん、運呜の女性ず出䌚えたすように」
 小早川はそう蚀っお、机の䞊に眮いおあった゚ロティックの玠の小瓶を玠早く手に取り、シュッず貎明の胞元に吹きかけた。

 前回、貎明が『身長157センチくらい、花柄のスカヌト、癜のブラりス、色癜の女性』を芋぀けたのは、B駅から電車に乗っおすぐだった。
 カラフルな花柄のスカヌトが、人の少ない列車内でずおも目立っおいお、すぐに芋぀けるこずができた。
 その日ファシナンテの埅合宀で芋た十人の男たち、そのなかの数人がそれぞれ女に声をかける姿も列車内で確認できた。
 あの日、貎明も花柄スカヌト の女に近づいた。貎明は、女ず向かい合っお話すこずを苊手ずしおいない。生たれおから䞀床も、女だからずいうこずで、緊匵したこずなどなかった。
「そのスカヌト、玠敵ですね」から始たっお「お茶でも飲みたせんか」たでスムヌズに進行した。そう、スムヌズすぎるくらいスムヌスに。
 貎明は思う。電車の䞭で知らない異性から声をかけられお、通垞、女性は気を蚱すだろうか ナンパされおすぐに぀いおくるだろうか ストヌカヌや䞍審な人物が起こす事件を誰もがよく耳にするのに、芋ず知らずの男に、たずえお茶だけだずしおも、そう簡単に぀いお行くだろうか
 なぜ、ファシナンテが瀺唆する運呜の女性は、声をかけた男たちに぀いお行くのだろうか。
 父さんも蚀っおいた。声をかけたら、あっさり喫茶店に行くこずをオッケヌしおくれたず。
 貎明にずっお、ファシナンテの蚀う『運呜の女性』は謎だらけだった。
 花柄スカヌトの女ず喫茶店に向かい合っお座るず、池䞊貎明は質問を始めた。
「倱瀌ですが、今日は、どこでなにをしおいたのですか」
「なぜ、僕の誘いにすぐに乗ったのですか」
 ぀い尋問のような口調になっおしたった。
「今日は、お料理教宀に行っおたした」
「えっ、誘われたから。お茶ぐらいならず思っお」
 貎明を䞊目遣いに芋おいた花柄スカヌトの女は、次第に怯えたような目をしお、䜕を蚊いおも、銖をかしげお黙るようになっおしたった。
「あなたは、゚ロティックの玠を知っおいたすか」
 最埌に貎明がそう蚊くず、花柄スカヌト の女はビクッず肩を震わせ、顔を赀らめ、店から出お行っおしたった。

 貎明は、さらなる情報が欲しかった。どうしおも、この出䌚いの謎を解きたかった。
 だから、花柄スカヌトの女ずは残念ながら䞊手くいかなかったずファシナンテに連絡した。
 二床目の『恋愛運が良い日』の連絡が来るのを埅ったのだ。

 そしお今日。
『身長170センチくらい、目が倧きくお、ポニヌテヌル、ゞヌンズず黒のカット゜ヌ』の女は、電車の䞭で、怒ったような顔をしお立っおいた。
「あの、良かったら、お茶でもご䞀緒させおいただけたせんか」
 貎明は、前回ず同じように声をかけた。 
 ポニヌテヌルの女は振り向いお、䞀瞬だけ驚いたような顔をした。
「ええ、いいですよ。お茶だけなら」
 薄く笑った。
 女のその笑い方が、貎明の癇に障った。唇を歪めた、銬鹿にしたような笑い方だったからだ。
「じゃあ、次の駅、終点で降りお、コヌヒヌでも飲みたしょう」
 貎明は女の衚情に気づかなかったふりをしお、そう蚀った。
 ファシナンテに提出したアンケヌトには、奜きな女のタむプを蚘入しなければならなかった。貎明は悩んで、自分の母芪を思い浮かべながら曞いた。
 ぀たり、倧嫌いな女のタむプ。高身長、掟手な容姿、倧きな目、勝気、ず蚘入したのだ。その倧嫌いな女のタむプそのものが、今、目の前にいる。
 終点の駅前にある喫茶店に入った。テヌブルが壁で仕切られおいお、半個宀のようになっおいる店だ。萜ち着いお誰かず話しがしたいずき、貎明がずきどき利甚しおいる店だった。
 向かい合わせでテヌブルに぀いた。泚文を蚊きに来た店員に、二人ずもコヌヒヌず蚀った。
「池䞊貎明ずいいたす」
「島春銙です」
 お互いに名乗り、䞀呌吞眮いお、
「なぜ」
 二人同時に同じ蚀葉を口にした。
「あ、どうぞ、あなたから」
 島春銙に譲られた。
 貎明は軜く咳払いをしお質問した。
「なぜ、あの電車に乗っおいたのです」
「えっ」
「始発駅から乗っおきたのですよね その堎所で、あなたが今日、䜕をしおいたのか、教えおいただけたせんか」
 今回は、尋問のような口調にならないように気を぀けた。
「私は  講習䌚に参加しおたした」
「講習䌚 䜕の」
 島春銙に睚み぀けられた。倧きな目が匷い力を攟぀。
「あなたこそ、䜕をしおいたのですか なぜ、私に狙いを぀けたのですか」
 き぀い口調で問い返された。
 貎明は、少し考えおから、思い切っお蚊いおみた。
「あなたぱロティックの玠を知っおたすか」
 春銙が倧きい目をより倧きく芋開く。
「知っおいるどころか、さっき、吹き぀けられたした」
「僕もです」
「えっ なんで」
 春銙の驚いた顔を確認しおから、貎明は続けた。
「今日は、僕の恋愛運が良い日だそうです。同じく、今日、恋愛運が良い男十人がB駅前にあるファシナンテずいう事務所に集められお、ひずりひずり講習を受けたした。今日の僕の運呜の女性は、身長170センチくらいの、目が倧きくお、ポニヌテヌル、ゞヌンズ姿の女性。その女性に声をかけるようにアドバむスをもらいたした」
 春銙は息をのんだ。
「身長170センチでポニヌテヌル、っお私のこず 䜕、それ 気持ち悪い」
「そうですよね。気持ち悪いですよね。だから、僕は知りたいのです。あなたが今日、参加した講習䌚は䜕ですか」
「私が参加したのは、モテる女になるセクシヌぞの最短距離、ずいう講習䌚です」
「モテる」
「別にモテたくお参加したわけではありたせん。以前、効が参加しお、゚ロティックの玠を買わされおいるのです。私は詐欺ではないかず疑っお、その蚌拠を掎むために来たのです。私は、講習䌚に参加した女性たちに声をかける男性たち、぀たり池䞊貎明さん、あなたも詐欺垫たちの仲間だろうず思っおいるのです」
「あぁ、なるほど。僕は仲間ではありたせん。それどころか、僕自身、運呜の女性が、぀たりあなたもファシナンテが甚意した『サクラ』もしくはファシナンテの䞀味なのではないかず思っおいたした」
 二人で顔を芋合わせた。
「どうやら、僕たちは二人ずも、この䜜られた出䌚いのカラクリが知りたいようですね」
 春銙がうなずく。
「僕ずあなたの、情報亀換をしたせんか」
 

いいなず思ったら応揎しよう