「地政学」を知り、世界で今なにが起こっているのか理解できた
地政学。まったく知らなかった。なんとなく、最近、書店に平積みされているよな、的な感じであった。けど、これが興奮するほどおもしろかった。近年の多発する軍事的な衝突の原因というか、理由が解けるようであった。地図好きな人には、ぜひ、おすすめしたい。地政学。
地政学とは、英語で「geopolitics」。ジオ=土地 と ポリティクス=政治 が融合したことばで「地理の政治学」とも呼ばれる。なぜ、地理なのか。地理は不変だからだそう。地形はほとんど変わらない。国の政治や経済、軍事などは、その国の指導者(リーダー)や価値観・信念(イデオロギー)などによって変化する。一方で、日本やイギリスが「島国である」ことや、ロシアとヨーロッパが隣り合っている、ということは、そう簡単には変わらない。こうした地理的条件と各国の行動原理には深い関係性があるという。
地政学では、国家を「ランドパワー」と「シーパワー」に分けて考える。ランドパワーは、ランド=陸地。大陸の内陸部に位置し、他国と陸地で国境線を接する国。ロシア、中国、ドイツ、フランスなど。シーパワーは、シー=海。国境の多くを海に接する国。日本、アメリカ、イギリスなどが代表国である。ランドパワーの国は、交易や移動を陸上交通に頼るがゆえに、より豊かな土地や海洋を求めて勢力権の拡大を狙う傾向があると。ロシアが不凍港を求めて南下政策をとったきたのが好例。シーパワーの国は、交易や軍事面で有利なことから、ランドパワーの国が挑戦しようとするため、2つのパワーは対立する傾向にあるそうだ。事実、歴史を振り返るとランドパワー国の覇権がつづいた後は、15世紀中に大航海時代を背景に、シーパワー国であるイギリスが世界の中心となった。歴史的には、ランド側とシー側が交互に覇権を取ってきている。ということは、今世紀はランド側が強くなる番だ。中国はランドパワーの国。歴史は繰り返すのだろうか。

もうひとつ。重要な概念ある。「リムランド」というエリアのこと。リムとは「rim」で「縁(ふち)」の意味。リムランドはランドパワーとシーパワーの緩衝地帯(バッファゾーン)になる。このエリアには温暖な気候ゆえに、産業が発達した都市が集中しており、ランドパワーが進出する傾向があるという。過去には、朝鮮戦争・ベトナム戦争・アフガニスタン戦争などが起こってきた。
加えて、重要な概念2。シーレーン(海の通り道)にある「チョークポイント」と呼ばれる要衝。チョーク(choke)=むせさせる、という意味。ここを押さえれば、国家が「窒息」するため、海をめぐる勢力争いで優位に立つことができるという。地球上では世界各地に10カ所ほどチョークポイントがあり、今話題の「ホルムズ海峡」がそれにあたる。ほかには、パナマ運河・マラッカ海峡・スエズ運河が有名だ。
アメリカと中国の対立については、シーパワーとランドパワーの衝突とみることができるという。中国は人口14億人と世界第2位。GDPは世界2位になっている。その中国は一帯一路構想という内陸の「シルクロード」を整備しようという一方、積極的に海洋進出を図っている。具体的には「第一列島線」と「第二列島線」「第三列島線」という3つのラインを設定し、その内側の海を勢力下に置こうとしている。これは、まったく知らなかった。この第一線上に「台湾有事」があるのだそう。中国側から太平洋を見れば、北側に日本列島があり、南側にフィリピン列島がある。その中央に沖縄が位置している。この南西諸島から台湾につながる島々が、中国の海洋進出に対して「ふた」の役割になっているという。この沖縄に米軍基地があるのは、そういった地政学的な意味が込められているそうだ。
われわれ北海道民に関心の高い北方領土は、どうなのか。返還されない理由も地政学的に説明ができるという。北方四島の先に位置するウルップ島付近はロシア軍の軍艦や潜水艦が、オホーツク海から太平洋へ出るためのチョークポイントになっている。この海域は冬季でも凍結することがないので押さえておく必要があるからだそうだ。また、4島が日本に戻れば、日米地位協定によりアメリカ軍の基地が建設される可能性がある、とも。なるほどだ。
トルコという国も、地政学的に特異性を持つ。EUと中東のあいだにあり、黒海・エーゲ海を経てロシアと接する。そのため「社会主義の防波堤」の場所として、トルコは全方位のバランス外交が求められるのだとする。
なんか、この『地図でスッと頭に入る地政学』(昭文社)を読めば(地図を見れば)、トランプ政権がなぜグリーンランドを買いたいとか、パナマ運河をオレにやらせろとか、イランを攻撃する理由がよーくわかった。
わたしを始めとする、平和な時代に島国ニッポンで生きる平和ボケした日本人こそ、この地政学を知らなければならない。ガソリンや天然ガスといったエネルギーの獲得競争。食料や水といった生きるために必須な物質の獲得競争。人類の歴史は、まさに「覇権争いの歴史」だという。そうだよなと。第2次世界大戦から、80年。歴史は60年から80年周期で繰り返す説もある。平和は守りたいものの、現実の脅威はすぐそこに迫っているのかもしれない。
