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英国ビスケット図鑑 ~英国のティータイムを彩る定番ビスケット~:「紅茶のお供」の代名詞。

メアリー・ポピンズの物語に何度も登場する「お茶の時間」。

英国において「紅茶のお供」の筆頭はビスケットです。紅茶を淹れたら、ビスケットも1枚。それがもっともシンプルで、誰もが愛する「お茶の時間」です。

どの家庭にも必ずビスケットが常備されているので、急な来客でも「あら、お出しするお菓子がないわ」なんてことにはなりません。

家庭ではなく、オフィスにもビスケットは常備されていることが多いです。

可愛いビスケット缶も世にあふれているので、湿気(しけ)てしまう心配もなし。というより、湿気る前に食べ切るので、その辺は心配の必要がないのです(笑)。

さて英国において「国民食」「国民的菓子」と言っても過言ではないビスケットですが、「ビスケット」と一口に言ってもいろいろ種類があるのです。また「クッキーとはどうちがうの?」と疑問に思われた方もいるやもです。

今回は英国定番のビスケットについてひもときます。


■そもそも「ビスケット」とは?

英国でいう Biscuit(ビスケット) とは、小麦粉やバター、砂糖などを使って焼き上げた、サクッとした食感の焼き菓子のことです。

日本では「クッキー」とまとめて呼ばれることもありますが、英国ではサクッと軽い焼き菓子の多くを「ビスケット」と呼びます。

■ビスケットの歴史

「ビスケット(biscuit)」という言葉は、「二度焼かれたもの」を意味するラテン語 bis coctus に由来するといわれています。古代ローマ時代には、保存性を高めるために二度焼きしたパンのような食品が作られていました。その後、中世ヨーロッパでは水分をしっかり飛ばした硬いビスケットが、船旅や軍隊の携行食として広く利用されます。

やがて17~18世紀になると、砂糖やバターを使った焼き菓子が普及し、現在のビスケットへと少しずつ姿を変えていきました。

英国では18世紀になると紅茶を飲む習慣が広まり、19世紀にはアフタヌーンティーの文化が誕生しました。さらに産業革命によってビスケットの大量生産が可能になり、誰もが手軽に楽しめるようになります。

19世紀後半には、Rich TeaDigestive をはじめ、現在でも親しまれている定番ビスケットが次々に誕生しました。「紅茶のお供にビスケット」が定番となったのは、この時代のことです。紅茶を淹れたらビスケットを添える「Tea & Biscuits」は、家庭でも職場でも親しまれる英国の日常の風景となっていったのです。

■ビスケットとクッキーの違い

「ビスケット」と「クッキー」は、何が違うのでしょうか。実は、この違いは国によって考え方が異なります。

●英国では

英国では、サクサクとした焼き菓子のほとんどを 「Biscuit(ビスケット)」 と呼びます。

日本で「クッキー」と呼ばれるような焼き菓子でも、英国では Chocolate Chip Biscuit と呼ばれることも珍しくありません。

一方、「Cookie(クッキー)」という言葉もありますが、それほど使う機会はありません。アメリカ英語の影響が強く、チョコチップクッキーのように厚みがあり、ややしっとりした焼き菓子を指すことが一般的です。

基本は「クッキー」という言葉は使わないのが英国です。
©メアリー・ポピンズ研究所/Hanako Miyata

つまり、英国では「ビスケット」が基本で、「クッキー」はその一部、というイメージです。

●日本では

日本では1971年に全国ビスケット協会が「ビスケット類の表示に関する公正競争規約」が定めました。この規約によってビスケット類の一種として、「クッキー」には一定の基準が設けられました。

ビスケットの一種としてのクッキーの定義:

  • 「手づくり風」の外観をもつ

  • 糖分と脂肪分の合計が重量比で40%以上

  • 卵・乳製品・ナッツ・乾果・蜂蜜などで特徴づけし、風味よく焼き上げたもの

つまり、「糖分+脂肪分が40%以上」だけではなく、手づくり風の外観や製品の特徴も「クッキー」の条件に含まれています。

この規約は2025年3月にも一部変更されていますが、クッキーの基本的な定義としては、現在もこの考え方が使われています。

そのため、日本では同じ焼き菓子でも、製品の特徴に応じて「ビスケット」と表示されるものと、「クッキー」と表示されるものがあります。

●アメリカでは

アメリカでは「Cookie(クッキー)」は私たち日本人が思い浮かべるクッキー全般を指します。

一方、「Biscuit(ビスケット)」 はまったく別の食べ物で、小麦粉とバターを使って焼き上げた、スコーンに少し似たふんわりとしたパンのようなもの(←まさに「ケンタのビスケット」↓)なのだそうです。朝食や食事に添えられることが多く、グレービーソースをかけて食べることもあります。

初めてケンタに行った時(40年以上前)、「これをビスケットと呼ぶのかっ!?」と思ったのでした。カルチャーショックでした。アメリカを知った気分になりました。

……と書きましたが、私はアメリカに住んでいたわけではないので、実際に食べ比べた経験や、現地感覚があるわけではありません(笑)。

どうかアメリカ在住の皆様、お手柔らかに読んで下さい<(_ _)>💦笑。
同じ「ビスケット」という言葉でも、英国とアメリカではまったく違う食べ物を指すというのは、英語の面白いところですね。

■英国の代表的なビスケット

さてここから、「英国定番」のビスケットを8種類ご紹介します。

●SHORTBREAD(ショートブレッド)

16世紀頃にスコットランドで生まれた伝統菓子。たっぷりのバターを使い、「サクッ」というより「ほろり」と崩れるような食感が特徴です。

クリスマスやお祝いの日にもよく登場し、今では英国全土で愛されています。


●GINGER NUT(ジンジャーナッツ)

19世紀頃から親しまれている、生姜の風味が効いたビスケットです。カリッとした硬めの食感で、紅茶に少し浸して食べる人も少なくありません。

英国らしいスパイス文化を感じられる一枚です。ちなみに「Nut(ナッツ)」は「ナッツ(木の実)入り」の意味ではありません。「ナッツのように硬く、カリッとした食感だから」の意味で「Nut」のネーミングがつかわれているのです。


●RICH TEA(リッチティー)

19世紀後半に誕生した、英国を代表するティータイム用ビスケット。控えめな甘さなので、紅茶の香りを邪魔せず、毎日食べても飽きません。

「Tea & Biscuits」と聞いて、多くの英国人が思い浮かべる定番のひとつでしょう。


●DIGESTIVE(ダイジェスティブ)

1892年、エディンバラ(スコットランド)でMcVitie's社が考案したビスケット。粗挽き小麦や全粒粉を使った香ばしい風味が特徴です。

「Digestive(消化を助ける)」という名前ですが、現在では薬効を意味するものではなく、伝統的な商品名として親しまれています。

チョコレートをコーティングしたタイプも人気があります。


●CUSTARD CREAM(カスタードクリーム)

Tescoのサイトのキャプチャ画像。
出典:https://www.tesco.com/shop/en-GB/products/254921258

甘いカスタード風味のクリームを2枚のビスケットで挟んだ、英国らしいサンドビスケット。

表面の花模様も特徴。優しい味が、子どもから大人まで幅広く愛されています。


●BOURBON(バーボン)

1910年頃、ロンドンのPeek Freans社が生み出したとされるチョコレートクリームサンド。名前は「バーボン」ですが、お酒は使われていません。

濃厚なココア風味で、紅茶だけでなくコーヒーにもよく合います。


●JAMMIE DODGER(ジャミー・ドジャー)

1960年代、Burton's Biscuit Companyは開発した人気ビスケット。中央の窓からジャムが見える可愛らしいデザインが特徴です。

子どもの頃のおやつとして思い出に残っている英国人も多く、「懐かしい味」の代表格ともいえる存在です。


●HOBNOB(ホブノブ)

Tescoサイトのキャプチャ画像。
出典:https://www.tesco.com/shop/en-GB/products/312831392

1985年にMcVitie'sが発売した人気商品。オーツ麦をたっぷり使ったザクザク食感で、食べ応えがあります。

チョコレートをコーティングしたタイプは英国でも特に人気が高く、「一枚だけ」のつもりが、つい何枚も食べてしまうビスケットとして知られています。

■「メアリー・ポピンズ」に登場するビスケット

甘党のメアリー・ポピンズ、きっとビスケットも大好きだったはずです。時代を考えると、「ジャミー・ドジャーズ」「ホブノブ」は食べていません。しかし他の種類のビスケットは、「カーペットのバッグ」に必ずや忍ばせていたはずですね。

このバッグの中にきっと2~3種類は入っているはず。
出典:岩波少年文庫

「風にのってきたメアリー・ポピンズ」には「ショートブレッド」が登場します。ジェーンとマイケルがシティにいるお父さんを訪ねるエピソードが描かれた「7. 鳥のおばさん」の章です。

バンクス家のパパが、出勤前に「今日は子どもたちを金融街のオフィスに呼ぼう」と提案します。パパはバンクス家のママに「君も賛成なら、子供たちと一緒に、ショートブレッドでお茶をしたい」というのですから、子どもたちは大喜び!

林容吉・訳(岩波少年文庫)では、ショートブレッドではなく「バタクッキー」という訳になっています。1958年の日本語版出版当時は、その方が分かりやすかったのでしょう。

実際のお茶のシーンはでてこないのが少し残念ですが、子どもたちを金融街まで引率するのはもちろんメアリー・ポピンズ。彼女もきっと「今日のお茶はショートブレッド、まあ、よろしいのでは?」と思ったはずです。

■おわりに

ちょっと疲れたとき、一息つきたいとき、少しだけ甘いものが食べたいとき、ビスケットを1枚つまんでください。まるで魔法のように元気になります。

英国人は真夏でも「温かい紅茶とビスケット」が定番です。でもビスケットはアイスティーにもとてもよく合います。

できたら紅茶には砂糖を入れず、キンキンに冷えた濃い目のアイス・ブラックティー(ストレートティー)かアイス・ミルクティーと一緒に食べてください。甘味が引き立ち、リフレッシュするはずです。

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