ミヤマオジサン函館山を行く
家の前の桜が舞い散るゴールデンウイーク後半。

年々桜に対する気持ちが
薄れてきていることを感じる。
確かに美しいし風情もある。
でも初めて桜ヶ丘通に
引越してきた時ほどの感動は...
小さくなっている。
人は繰り返しの刺激に慣れる。
心理学ではこれを刺激馴化というそうだ。
ランニングの記録の向上や
パフォーマンスのアップも
ハードワークに対して慣れていくことで
強くなっていく。
家の前の桜に対して、感動が薄れてきたのは
自然な人としての成熟であり
感受性が乏しくなったというわけではない。
そう信じたい。
函館に引っ越してきて14年。
すてきな良い街なんだけど
最近は改めて良いところだなあと
感動することはほとんどなく
函館を訪れた友人や、
観光客の感動している顔を見て
函館の良さを再確認しているところだ。
それでは、私にわずかに残った感動は
どこにあるのか。
やはり函館山である。
今、函館山には可憐な花が
楚々と山道脇に咲いている。
坐骨神経痛が慎ましく
痛みを主張している今、
私にとって函館山の山道を歩くことは
唯一のトレーニングであり
達成感と心の癒しを感じる時間だ。
街とは反対側の函館山の
裏の磯まで歩いていくので
釣竿も忘れず背負っていくのだが
ことしは桜マスの群れが薄く
今の所まったく釣れていない。
ボウズ(ノーフィッシュのこと)で
傷心の心を癒してくれるのが
函館山を彩る花々である。
行きは真っ暗な山道を
ヘッドランプを頼りに
歩いているので
函館山の花々に挨拶をするのは
帰り道だ。
土、苔、朽木の織り成す
アースカラーコーデーネーションの
中に突如として現われる
ビビッドな色彩に足を止められる。
昔はこんな楚々とした風情に
脚を止めることはなかった。
魚が釣れなかったら
その事に対して腹をたてて
地団駄踏みながら歩いていたので
気づかず踏みつぶしていたかもしれない。
(酷い所業だ)
3月25日。
函館山の一番花は
キクザキイチゲだと聞いていた。
イチリンソウともいうらしい。

1株に1つ花をつけることから
そう呼ばれるそうだ。
イチリンソウ。
なんて優しくも自立心に
あふれた名前なんでしょう。
もうひと花見つけた。

フクジュソウ(福寿草)だ。
金のない学生が住んでいそうな
ぼろアパートみたいな名だが
見栄えは良い。
(花レポ失格だな)
タンポポや菊に似た
背の低い花だがタンポポよりも
渋みのある黄色をしている。
4月12日。
しばらく見ない間に
イチリンソウの自立心の向上は
目覚ましい成長をとげていた。

文字通り一人立ちだ。
息子たちにもこの雄姿をみせてやりたい。
3月には咲いていなかった花も
たくさん咲いていた
エンレイソウ。

ゴージャスなドレス
ゼクシィの表紙を飾っても
恥ずかしくない大振りな緑のドレスの葉に
紫のティアラが可愛い。
(オッサンが言うと気持ち悪い)
ナニワズ(難波津)。

花の名前はまだよく知らないので
帰ってきてからデジタル図鑑で
調べているのだが
ちょっとこの名前はもう少し
何とかならないか。
「いや、かなんわあ。
このかわいらしい花なに?」
「難波津やんか」
という浪速のおばちゃんの声が
聞こえてくる。
私の大好きな花
エゾエンゴサク。

頭を垂れているのがいい。
とにかく何かあれば
まずは頭を垂れれば
何とかなるという
私の人間性が無意識に
この花の姿に共鳴しているのだろうか。
「14ひきのあさごはん」と言う絵本がある。
ネズミの大家族のあさごはんの支度の物語。
その中で次男のにっくんが
木の実を取った帰り道に
花の帽子をかぶる。
エゾエンゴサクを見ると
この絵本を思い出す。
函館山にも小さな野ネズミが
たくさんいるが、ちょうど
エゾエンゴサクの
青紫の帽子が似合いそうだ。
そんなわけないやろと思う事も
函館山に入ればありえそうな気がする
私にとってはそんな
ファンタジーランド。
この花も鮮やかで好きな花だ
ミヤマスミレ(深山菫)。

山深くに咲くスミレだから
ミヤマスミレなのだろうか。
とするとミヤマクワガタのミヤマも
深い山なのだろうか。
それじゃあ、こうやって山に分け入って
花を写真に収める私はミヤマオジサンか。
おもしろい。(おもしろくない)
5月1日。
5月に入り、すっかり朝の夜明けも
早くなり、それに比例して
山に入る時間も早くなる。

今朝は4時前に入山。
桜マスは相変わらず釣れない。
こう何度も何度も登っていると
函館山の常連さんと顔見知りになる。
その常連さんたちにも
「釣れたかい?今日も魚持っていないねえ」
と挨拶がわりに声をかけられる。
その方が
「ちょっと行った所にシラネアオイが
咲いているよ。」
と教えてくれた。

シラネアオイ。
函館山の花の中ではかなりゴージャスな花だ。
ちょっと朝顔にも似てるのかな。
でも、「この花は朝顔です。」
と言っても何の自慢にはならないが、
シラネアオイを知っているのは自慢になる。
鼻の穴を膨らませながら、
次にすれ違う常連さんに会うのを
楽しみに山を下る。
来た。この方もよく会う女性の方だ。
「おはようございます!」と声をかける。
声が上ずっていたのか
「あれっ?もしかして釣れたの?」
と笑顔で足を止めてくださる。
「いっ、いやっ魚は相変わらず・・・
でもちょっと上がった所に
シラネアオイが咲いてましてね。」
「そうよね。昨日登った時も綺麗だったわよ」
「・・・・。」
函館山の常連さんを舐めてはいけない。
月に数度いってるからと
自慢してたら笑われる。
函館山はファンタジーランド。
次はいつ行けるのか。
1日中そのことばかり考えている。
