【ショートショート】Polaroid#05|戻れない夜
「あぁ!なんで、いるんだよ!」
午後九時、渋谷 クラブ Velours(べルール)──。
修斗はスタッフルームのベンチに座ると頭を抱えた。どこにもぶつけられない感情が湧き、情けなさでいっぱいだった。
「どうして、瀬奈がここにいるんだよ……!」
自分の一番見られたくない姿だった。
暗がりだったとは言え、間近で視線を合わせたら気づかれてしまうかもしれない。
そんな不安に包まれてた。
すると扉が威勢よく開き、『修斗!』と笑顔で駆けこんできたのは、昔からの仲間・里美だった。
「ねぇ、成功した? いつものあ・れ♪ 場違いな女に叱って、甘い言葉で誘惑して、修斗のトリコにするやつ」
里美は餌を待つ子犬のように目を輝かせていた。
毎度のゲーム。
100発100中で女の子たちを沼らせる修斗に、里美は楽しみを見出していた。今ではバーカウンターに集まる娘たちは、ほぼ全員が修斗目当てだ。
しかし、彼はいつもと違い頭をもたげ、目を伏せている。

「えっ? はじめて失敗したとか?」
修斗は黙って立ちがると『悪い』とだけつぶやき、
バーカウンターへと戻っていった。
初めて見るそんな修斗に里美の心は不安が募った──。
※この物語は、本編の第2話「居場所」のワンシーンを新たな一枚とともに切り取ったものです。あの日の想いを、もう一度。
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