見出し画像

短文 : 狙撃手

狙撃の技術で彼の右に出るものはいない。彼は寡黙であったから、自身について語ることも、その腕をひけらかすようなこともしない。しかし、どこから噂を聞きつけるのか彼の仕事が途絶えることはなかった。毎日毎日仕事仕事で心が休まる暇がない。来月になったら休暇をとって温泉にでも行こう。個室露天風呂なんていいな。それが気になるあの娘と一緒の旅なら最高だ。でもあの娘は俺の身体の傷(たくさんの銃痕)を見て、きっとおびえてしまうだろう。俺はうつむいて、お互いの住む世界が違うから、しかたがないんだと自分に言い聞かせるようにって、おい。あの娘と一緒にお風呂入ること前提? いやいや、まあね。そりゃ入りたいよ? 入れるものならさ。 銃痕だって大きなほくろだと思えばそう見えないこともないし。修学旅行でみんなで風呂入ったときは苦し紛れに 「北斗七星だ」って言ったらみんな笑ってくれてさ、男って馬鹿だよな。あいつらの馬鹿さは、涙が出るほどうれしかった。


いいなと思ったら応援しよう!

HALWRD よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!