〈いい感じの男〉になりたい――。自分に向けられたルッキズムについて
いい男になりたいとは思わないけど、いい感じの男にはなりたいな、と思っている。
シャワーを止めると途端に肌寒さを感じる季節になった。濡れた肌から奪われていく体温を恨めしく思いながら、鏡の前で必死にお腹を引っ込めてみる。んー、自分では「まあまあじゃない?」と思うけど、彼女さんからは「ぽよぽよだね〜」と毎日のように腹肉を摘まれている。もう少しいい身体を目指したい。
一層ダイエットに励むことを内心で小さく決意しつつ、SNSで話題になって飛びついたビオレのディープクレイで洗顔を施し、浴室から出て10秒以内に肌ラボの白潤プレミアムを塗りたくる。本当はここにビタミンC誘導体的なものがあるといいのかもしれないけど、スキンケアのことは本当にわからない。いったい何を買えばええんや。商品おおすぎ。高い商品には手を出せないし、本当難しい。
そういえば、化粧品売り場の人たちは、男性化粧品のことを「ダンケ」と略すらしい。まるでドイツ語の挨拶みたいな略称は、男性化粧品が「男性」という但し書きをつけなければならない、レアケースな存在であることを示している。
でも、少しずつレアじゃなくなっていくかもしれないという感覚もあって。たぶん、これからの世代は、男性でも当たり前のように化粧を施す時代になっていくんだろうって思う。だって社会は「男くささ」をことごとく嫌っているから。
極めて良質なフェロモンを発することができる一部トップ層を除けば、「男くささ」を出来うる限り消臭されることがマナーとして求められる社会になりつつある。この傾向にも、いつかどこかで歯止めがかかるんだろうか。少なくない数の男性が男性性を脱ぎ捨て、中性的な存在を目指すベクトルは、いっときのブームであり、いつか振り戻しがやってくるのだろうか。
男性が脱毛をするのが当たり前になり、ゆくゆくは化粧をするのが当たり前になると、その頃には押しも押されもせぬオジサンとなっている僕は、相対的な顔面偏差値が下がることが想定される。んー、つらい。いまからもう少し頑張って貯金をつくっておかねば。
いい男になりたいとは思わない。そういうのは自分には無理だから。ただ、〈いい感じの男〉くらいにはなりたいな、とは思っている。雰囲気イケメンとまでいかないまでも、世間的には平均というか…。偏差値52くらいの、よくもないけど悪くもない、という雰囲気を身に纏いたい。
外見がすべてみたいな極論は言わないけれど、視覚情報がコミニュケーションにおいて極めて大切な役割を果たすことは、対人支援職の肌感覚に照らすまでもなく、明らかであった。
彼女さんと付き合えてよかったな、と思うことは本当にたくさんある。けど、その中でかなり大きな比重を占めるのは、すごく正直なところ「恋愛レースから降りられたこと」であったりもする。いま僕はすごく嫌な言い方をしていますね。自覚はあるんだ…。
もともと人と競うのが苦手だった。劣等感が強く、負けず嫌いだから、誰かに負けるのが本当にしんどくて仕方なかった。だけど努力も苦手だったから、どうしようもなかった。自分で書いてて悲しくなっちゃった。本当にどうしようもない人間だ…笑
ことに恋愛になると事情は込み入ってくる。恋愛能力ってその人を構成するほんの一部であるはずなのに、すごく根の深い問題にされがち/しがちというか。恋愛が下手というだけで、人として失格みたいな烙印を感じちゃったりするじゃない。なんなんだろうね、あれ。別にそんなことはないはずなんだけど、他らなぬ自分が自分自身にそんなことを思っちゃったりもして。
それが呪いだと言うことはわかっている。恋愛も、ルッキズムも、筋トレだって、それは一種の呪いである。そんなのはわかっている。わかっていても、呪いは解けない。ダンスパーティーにおいて、音楽が鳴っているうちは踊り続けれなければ浮いてしまうように。いつかは音楽が鳴り止んでしまうかもしれないことに怯えながら、いまは全力で踊り続けれなければ。
とりあえず、いまは脱毛がしたい、できれば30代のうちに。
こんなとりとめもなく書いた文章でございましたが、今回はマイキーさん主催の『 #エッセイしりとりコンテスト 』という企画でバトンを頂き執筆しました。
バトンをくれたのはサブリナさん。
「都道府県別いい男図鑑をください。」という記事だったので「〈いい感じの男〉になりたい――。」というタイトルで書きました。
こんなんでいいのかしら…。サブリナさんの恋バナ、めっちゃ楽しみです。
この企画は今日でおしまいらしいので、さすがに誰かにバトンはお渡しいたしません。ぐぬぬ、僕もバトン渡してみたかったなー。
