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micosirop
もし誰かに電話をかけたくなったなら
きょうの一曲:矢野顕子 - 電話線
こんばんは。夜11時、FM八丈島。始めていきましょう。
外は相変わらずの強風です。ふと見上げると、電柱から伸びる電線が、縄跳びの縄のように大きく揺れています。
ヒュオー、ヒュオー。風が電線を鳴らす音が、家の中にまで聞こえてくる。
この島では、電気も、インターネットも、そして誰かの声も。すべてあの細い線一本に託されています。
もし今、あの線が切れてしまったら。僕たちは本当の意味で、絶海の孤島に閉じ込められてしまう。
受話器の向こうから聞こえる、「もしもし」という声。それは、海底を這い、鉄塔を渡り、風に吹かれながら、長い長い旅をしてここまで届いたものです。
そう思うと、ノイズ混じりの小さな声が、急に愛おしいものに感じられます。距離という怪物を、あの細い線が必死で繋ぎ止めている。
風の音に耳を澄ませていると、それが誰かのすすり泣きのようにも、あるいは遠い街からの歌声のようにも聞こえてきます。僕たちはみんな、細い線一本で誰かと繋がっている、心細い存在なのかもしれません。
今夜は、そんな距離と声をテーマにした名曲を。矢野顕子、デビュー盤。リトル・フィートの重たいリズムに乗せて、独特のピアノと歌声が、夜の隙間を埋めていきます。
「今はあなたに、話しかけたくないの」その言葉の裏にある、張り裂けそうな想いを感じてください。
さて、そろそろお別れの時間です。 もし誰かに電話をかけたくなったら、迷わずかけた方がいい。 風が止むのを待っていたら、朝になってしまいますから。
それではまた明日、この場所でお会いしましょう。おやすみなさい。
(2022.4.30 OA)
