夫が寝込んだ日の日記。
元日の昼下がり頃から、どうにかしてこの正月を引き止められないかと真剣に考えているのだが、1月5日になり、いつも行くスーパーからとうとう正月っぽい賑やかなオードブルが消えたし、テレビ番組も正月感が弱くなってきているし、もうだめかもしれない。AIにも、「お正月という華やかでゆったりした時間を長く楽しみたい気持ちはわかるが、余韻を楽しみつつ少しずつ日常のリズムを取り戻すことが大切」となだめられた。
いや、けれど。例年通り夫婦合わせて25枚以上送ったはずの年賀状。現時点で我が家に届いているのはたった5枚なので、やっぱりまだ正月かもしれないし、はたまたわたしたち夫婦が嫌われているだけかもしれない。予備まで用意しているのに。ズボンがきつい。この秋に買ったばかりの、ぴったりサイズのはずのズボンがきつい。この、お腹に現れた1キロ分のたぷたぷを、正月が確かにそこに存在していた証として慈しむしかないのだろうか。いやそこは早く通常モードに戻りたい。
本当は、こんな呑気に正月正月言っている場合ではない。夫が昨日から体調不良で、発熱と怠さがあるというのだ。夫は今日まで仕事が休みの予定だったので、とにかく部屋にこもってゆっくり寝てと伝えた。この年末年始はわたし側の実家にいた期間が長く、夫は気疲れや油疲れが蓄積していたのかもしれない。また、そんな中でも積極的に子どもを連れて二人で遊びに行くなど大変がんばってくれており、体力を消耗していたのではないか。そうだとすればわたしにも責任がある。あとの休みはどうかゆっくり休むことに専念して欲しいと思ったのだ。
そもそも夫は、日頃は強靭なメンタルであるのに、痛みや体の不調となると人が変わったように弱々しくなる。熱さまシートやポカリスエットなど夫の要望の品々を買いに行き、夫からリクエストのあったメニューを作って夫の寝ている部屋に運ぶなど、わたしはできる限りの看病を行った。
夜になり、「体調どう?よくなってる?」と様子をうかがいに行く。すると、熱さまシートを額に貼った夫が、まだしんどいといった表情をしながらおもむろに起き上がって、「さっきまた36.8℃まで上がってた。いろいろやってくれてありがとう」と言った。
(さっきまた36.8℃まで上がってた)
今のところ2026年最強のパワーワードにわたしはうまく反応できず、そっかそっか、と言って一旦ドアを閉じた。
(さっきまた36.8℃まで上がってた)
頭の中で何度も反芻する。人には人の平熱がある。夫は平熱が低いという話は聞いたことはあったが、もしかすると34℃台なのかもしれないし、わたしが知らないだけで2026年は人類の平熱が34℃くらいに設定されているのかもしれない。今はただ、夫は36.8℃まで熱が上がりしんどいと感じている、という真実のみが横たわっている。
--------ここから翌日--------
いつもより早く起きてきた夫に「熱はどう?仕事できそう?」と確認すると、「怠さはましになった。熱はまだ36.2℃あるけど大丈夫」と真顔で言ってきて、昨夜を上回る衝撃に、やはり何も言えないのであった。
家族みな、健康に過ごせる一年にしたい。ひとまず夫は平熱を、わたしは通常の腹回りを、一刻も早く取り戻さなければならない。
おわり
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