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底を脱した日の日記。


何をやってもたのしくないし、そもそも何もやりたくなくないし、かといって目の前には育児やお仕事やそのほかいろいろがあって動かないわけにはいかず、夫に助けてもらいながらかろうじて耐えた一月後半。冬が好きだから冬を嫌いになりたくない。なのに冬の寒さのせいにしてしまいたかった。

夫が子を連れて買い物に出かけた。頼んでいた食材の調達のほか、「夜に食べようと思って」とパックに入ったイカ焼きも買ってきたのだが、内容量150グラムで1550円という強気価格で、うぇ!?と声が出た。夫は初詣や祭りや催事などでイカ焼きが売られていると、においに吸い寄せられてまんまと買ってくる。わたしならこんな高いの買わないね、それなら自分でイカ買って焼くわと瞬時に思ったが、たのしみにしているのであろう夫の気持ちを台無しにしたくもなく、言わないという選択を取る。

子どもと昼寝したり、テレビを見たり、おやつを食べたりと家の中で3人で何も生み出さない時間を過ごしていたら、もう夕方。小腹が空いてキッチンに行くと、イカ焼きがある。おそらく100円相当だなあと見積もりながら、一切れつまんで口に入れた。すると、びっくりするほどぷりぷりで、塩加減も絶妙でおいしすぎるので、飲み込みながら次の一切れをまたつまんでいた。これが150グラム1550円のイカ焼き。舐めてましたなあ。頭がぱーっと晴れるようなおいしさだった。ああ調子は戻ってきていると確信した。底はもう脱している。

30代になると生きやすくなるよ!みたいな話に期待して生きてきたけれど、わたしには到底当てはまらない。むしろ30代になり、親になり、どんどん気にしいに拍車がかかってきている。ただ、転がり落ちたときに、「そのうち戻る。あのときも戻ったから」と振り返れる「あのとき」がいくつかあることは、まあ悪くはないという気もする。

夕飯の時間になり、煮物とサラダとイカ焼きを食卓に並べる。イカはトースターで焼くとより一層おいしく、「このイカ焼き、本当においしいねぇ」と夫に言うと、「だって味見したもん!他にもサバとかいろいろあって、でも食べたらこれが一番〇〇さん(わたし)が好きそうだったから、これにした!」と、思いがけないハートフルな展開で言葉を失った。ぐっときた。わたしなら絶対買わなーい、またどうせにおいに惑わされて買ってきたんでしょう、なんて思って本当にごめんね、と心の中で平謝り。うれしい。やっぱりもう、底は脱している。テレビを見ているといろいろひらめいて、文章を書いた。書いているとさらに力が湧いてきた。

じたばたした一月が終わる。またひとつ、いつか「あのときも戻ったから大丈夫」と思い返す「あのとき」が増えた、ただそれだけのことのように思う。

おわり

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