既存金融はブロックチェーンをどこに使い始めている?「決済・預金・証券・中央銀行マネー」で見る4つの接点
ブロックチェーンというと、
₿ Bitcoin
Ξ Ethereum
🪙 暗号資産
を思い浮かべる人が多いと思います。
でも最近、少し違った動きが目立っています。
銀行、証券会社、資産運用会社、中央銀行など、
これまでの金融を支えてきた側が、
「ブロックチェーンやDLTをどう使うか」
を本格的に考え始めています。
ここで大切なのは、
「暗号資産が銀行を置き換える」
という単純な話ではないことです。
むしろ今起きているのは、
既存金融
+
ブロックチェーン
という動き。
では、金融のどこにブロックチェーンが入り始めているのでしょうか。
今回は、
💵 決済
🏦 預金
📄 証券
🏛️ 中央銀行マネー
の4つに分けて整理してみます。
💵 ① 決済|「お金を送る」の裏側を変える
まず分かりやすいのが決済です。
今でも私たちは、
銀行振込
クレジットカード
海外送金
を普通に使っています。
表面だけを見ると、それほど不便には感じないかもしれません。
でも金融機関の裏側では、
送金情報の確認
銀行同士の照合
残高の確認
資金決済
時差への対応
など、いくつもの処理が動いています。
特に国境を越える送金では、複数の金融機関が関わるため、時間やコストが増えやすくなります。
そこで注目されているのが、
「情報」と「お金の移動」を、同じ仕組みの中で処理できないか
という考え方です。
BISのProject Agoráでは、中央銀行と民間金融機関が参加し、
トークン化された銀行預金
+
トークン化された中央銀行準備預金
を組み合わせた国際決済の実験が進んでいます。
2026年5月には、複数通貨をまたぐ取引を一体的に決済するプロトタイプが公開されました。
さらに7月には、28の金融機関・中央銀行が参加して、実際の価値を伴う取引テストまで実施されています。
つまり、
「将来こうなるかもしれない」
という構想だけではなく、
実際のお金を使って仕組みを検証する段階まで進んでいる
ということです。
つまり、
ブロックチェーン=新しい通貨
だけではなく、
ブロックチェーン=既存のお金を動かす新しいレール
という使われ方が見え始めています。
🏦 ② 預金|銀行預金そのものを「プログラムで動かす」
次が銀行預金です。
ここはステーブルコインと混同しやすいところです。
銀行のトークン化預金は、
新しい暗号資産を発行する
というより、
銀行に預けているお金を、プログラム可能な仕組みの上で扱いやすくする
という考え方です。
代表的な例がJ.P. Morganです。
同社はBlockchain Deposit Accountsを展開し、2026年には日本円を含む複数通貨へ対応を拡大しました。
24時間の決済、オンチェーンでの為替取引、企業内の資金管理などへの利用が始まっています。
さらにJ.P. Morganは、米ドル預金をブロックチェーン上で扱うdeposit token、
JPM Coin(JPMD)
も提供しています。
JPM Coinは暗号資産やステーブルコインではなく、
J.P. Morganの銀行預金をデジタルに表したもの
です。
EthereumのL2であるBase上で、機関投資家向けの決済や資金移動などに利用できます。
ここで面白いのは、
「銀行のお金」と「ブロックチェーン」が対立していない
ことです。
むしろ、
🏦 銀行預金
↓
🔗 ブロックチェーン上で扱える形にする
↓
⚙️ 24時間動かす
↓
🤖 条件に応じて自動処理する
という方向です。
BISも、ステーブルコインと比較したうえで、中央銀行マネーを基盤とするトークン化預金には、
既存の金融システムとのつながりを保ちやすい
という利点があると指摘しています。
📄 ③ 証券|「資産」と「お金」を同じ場所で動かす
3つ目は、
株式
債券
投資信託
担保
などの金融資産です。
これらをデジタルなトークンとして扱う動きも進んでいます。
ここでのポイントは、
「紙をデジタル化する」
だけではありません。
たとえば国債を売買するとします。
従来は、
📄 国債の受け渡し
と
💵 お金の決済
が別々の仕組みで動くことがあります。
そこで、
「お金が届いたら資産を渡す」
「資産が渡るなら同時にお金も動かす」
という条件をプログラムで組み込めれば、
片方だけが動いてしまうリスクを減らせます。
これが、
Delivery versus Payment(DvP)
という考え方です。
トークン化された資産とお金をプログラム可能な基盤で扱うことで、
・照合作業を減らす
・決済期間を短くする
・事前に用意しておく資金を減らす
といった可能性があります。
J.P. Morganでも、トークン化された担保の移転やオンチェーン決済は、すでに実際のサービスとして使われています。
ここまで来ると、
ブロックチェーンは
「暗号資産を記録する台帳」
というより、
金融商品の取引そのものを動かすインフラ
として見た方が分かりやすくなります。
🏛️ ④ 中央銀行マネー|最後の「決済」をどうする?
そして最近、特に注目したいのが中央銀行です。
2026年8月、ECBのイザベル・シュナーベル理事は、
「Central banks on-chain」
というタイトルで講演しました。
そこで論じられたのは、
資産や銀行預金だけがトークン化されても、
最後に安全に決済する中央銀行のお金が接続されていなければ、金融システム全体としては不十分ではないか
という問題です。
たとえば、
📄 国債はオンチェーン
🏦 銀行預金もオンチェーン
になったとしても、
💶 最終決済だけ別の仕組み
では、途中でシステムをまたぐ必要があります。
そこで、
🔗 トークン化資産
+
🏦 トークン化預金
+
🏛️ 中央銀行マネー
をどうつなぐかが重要になります。
ECBも、
既存の中央銀行決済システムとDLT基盤を接続する取り組み
を進めています。
これは欧州だけの話でもありません。
日本銀行も、
中央銀行マネーである当座預金を、ブロックチェーンを使ったシステム上の決済に利用する技術実験
を進めています。
国内銀行間決済や証券決済なども、利用例として検討されています。
つまり中央銀行自身も、
「ブロックチェーンを使うか、使わないか」
ではなく、
「どこまで、どのように接続するのか」
を考える段階に入っています。
🔍 4つを並べると、変化が見えやすい
ここまでを整理すると、
💵 決済
→ お金を速く、条件付きで動かす
🏦 預金
→ 銀行のお金をプログラム可能にする
📄 証券
→ 資産と決済を同じ流れで処理する
🏛️ 中央銀行マネー
→ 最後の安全な決済手段を接続する
という構造が見えてきます。
つまり、
「金融が全部ブロックチェーンになる」
という話ではありません。
逆に、
「暗号資産とは別世界だから、銀行には関係ない」
でもありません。
実際には、
既存金融の中で効率化できそうな部分に、ブロックチェーンやDLTが少しずつ入り始めている
と見る方が現状に近いと思います。
🧭 ニュースを見るときの4つの問い
これから、
「銀行がブロックチェーンを採用」
「国債をトークン化」
「中央銀行もオンチェーンへ」
といったニュースを見る機会は増えるかもしれません。
そんなときは、
① 何をデジタル化するのか?
② 誰のお金・資産なのか?
③ どの処理が変わるのか?
④ 実験なのか、実際に使われているのか?
この4つに分けて見ると整理しやすくなります。
「ブロックチェーン採用!」
という見出しだけでは、
実際に何が変わったのかは分かりません。
📌 まとめ
ブロックチェーンのニュースというと、
Bitcoinの価格や、新しい暗号資産の話が目立ちます。
でも、その裏では、
銀行
証券会社
資産運用会社
中央銀行
など、既存金融側の動きも進んでいます。
大きな変化は、
「新しい金融が古い金融を倒す」
形ではなく、
既存金融の中に、新しい技術が少しずつ組み込まれていく
形で起きるのかもしれません。
だから注目したいのは、
「ブロックチェーンが金融を置き換えるか?」
ではなく、
「金融のどこにブロックチェーンが入り始めているか?」
という問いです。
💵 決済
🏦 預金
📄 証券
🏛️ 中央銀行マネー
この4つの接点を見ておくと、
これから増えてくる「金融 × ブロックチェーン」のニュースも、少し落ち着いて読めるようになると思います。
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