おにぎり
小さな手で握ってくれたおにぎり。
小学生のひとり娘が握ってくれた、ちょっと歪なおにぎり。
「誕生日プレゼント、パパ何がほしい?」
娘の理央が唐突に聞いていた。
そう言えば、来週、自分の誕生日だった。
四十を超えた自分には、誕生日はあまり嬉しいものではない。年をとっていくと、皆そう思うのかもしれない。
「ん〜、別にほしいものはないよ。」
何気なく答える。
「それじゃ、困るの。」
理央が腕を組んで言う。
「ほしいもの、本当にないの?」
「本当にほしいものはないよ。」
「じゃあ、勝手に決めるよ。」
「ありがとう。プレゼントくれるんだ。」
「もう!」
そんな会話が先週あった。
誕生日の今日は、生憎、休日出勤だった。
嫁さんと理央に見送られて出勤。
いつもは、嫁さんが渡してくれる弁当を、理央が渡してくれた。
誕生日だから、二人で見送ってくれたのかな。
昼の休憩時間、弁当袋を開ける。
小さなカードが二枚入っていた。
水色のカードを開くと理央の字。
『パパ、おたんじょうびおめでとう。お仕事がんばって。ママとおべんとう作りました。食べてね。』
青のカードを開くと嫁さんの字。
『お誕生日おめでとう。体に気をつけて、いつまでも元気でいてね。おにぎりは、理央が初めて一人で作ったの。味わって食べてね。』
弁当箱を開ける。
色とりどりのおかずにちょっと歪なおにぎり。
目の奥が熱くなる。
ちょっと歪なおにぎりが、もっと歪に見える。
あれ、老眼になったのか。
いや、涙脆くなったのか。
#シロクマ文芸部
#お題で書きはじめるnote企画
#小さな手
※シロクマ文芸部様の企画に参加させていただきました。
