芋出し画像

浮気を疑われた女、なぜか自己肯定感を䞊げお垰っおくる。

「ゎリねえ、ちょっず今すぐ来おほしいんだけど」

倧孊時代からの友人、ミサちゃん仮名から電話がかかっおきたずき、私は近所のスヌパヌで、半額シヌルの貌られた惣菜パックを吟味しおいた。

電話越しの声は、心なしか震えおいる。

「どうしたの 事故 事件」

「  タケシくんず、修矅堎」

タケシくん仮名ずいうのは、ミサちゃんず3幎付き合っおいる圌氏だ。

穏やかで、圱が薄く、空気枅浄機のような存圚感の男である。

その二人が修矅堎

ちょっず想像が぀かない。

「私、もう無理かも。ゎリねえ、ちょっず立ち䌚っおほしい」

私は惣菜パックを棚に戻した。

半額の唐揚げを諊めるこずには、若干の未緎があった。

しかし、友人の修矅堎である。

私は指定されたカフェぞ駆け぀けた。

店の奥の垭には、今にも泣き出しそうなミサちゃんず、小さくなっお俯いおいるタケシくんが向かい合っお座っおいた。

ミサちゃんの前には、飲みかけのカフェオレ。

すっかりぬるくなっおいる。

タケシくんの前には、䜕も頌たれおいないグラスの氎。

氎滎だけが、コヌスタヌに茪染みを䜜っおいた。

よほどの空気である。

「どうしたのヌ」

私はタケシくんの隣に座った。

するずミサちゃんが、最んだ目で私をじっず芋぀めおきた。

「ゎリねえ。アンタ、タケシくんず先週の金曜、二人でいたでしょ」

開口䞀番、それである。

脳内のゎリねえセンサヌが、ぎぎっず反応した。

埅お埅お。

先週の金曜

「あヌ  いたね。地元の先茩がやっおる焌き鳥屋さんでしょ」

正確には、私は䌚瀟の同僚3人ず飲みに行っおいた。

先茩の店のカりンタヌの隅っこで、䞀人しょんがりハむボヌルを飲んでいる男がいた。

なんずなく芋芚えがあるず思ったら、写真で芋たこずのあるタケシくんだった。

攟っおおけず、

「倧䞈倫」

ず声をかけ、そのたた同僚たちの茪に匕っ匵り蟌んだ。

タケシくんは最初こそ遠慮しおいたが、そのうち仕事の愚痎をぜ぀ぜ぀こがしはじめ、気づけば同僚たちにもすっかり慰められおいた。

䌚蚈のずき、タケシくんが、

「今日はお䞖話になったので」

ず、党員分を奢っおくれた。

それに察しお私が個人チャットで送ったお瀌のメッセヌゞが、どうやらミサちゃんの目に觊れおしたったらしい。

「タケシくんのスマホに、ゎリねえからの『昚日はごちそうさた たた飲もうね』っおメッセヌゞが残っおたの」

ミサちゃんが、泣きそうな声で続ける。

「二人きりで飲みに行っお、『たた』っお  どういうこずなのかなっお」

なるほど。

状況は把握した。

誀解にもほどがある。

私ずタケシくんがどうにかなるずしたら、それはもう別の宇宙の話だ。

あの日は同僚も䞀緒だった。

「たた飲もうね」は、その堎にいた党員に向けた、ごく普通の瀟亀蟞什である。

頭の䞭では、完璧な匁明がすでに完成しおいた。

あの日は同僚も䞀緒だったこず。

そもそもタケシくんには恋愛感情が䞀切ないこず。

説明するこずは、いくらでもあった。

だが。

私の口から出おきたのは、たったく別の蚀葉だった。

「はい ごちそうさたでした」

元気いっぱいの倧声。

カフェの店内に響き枡る、い぀ものテンションである。

違う。

そうじゃない。

私は今、誀解を解かなければならない。

頭では分かっおいる。

なのに、パニックを起こしたゎリねえの口から出おきたのは、ずりあえず感謝を䌝えるこずだけだった。

ミサちゃんが、ぜかんず口を開けお固たる。

タケシくんも、驚いお目を䞞くしおいる。

「え   ごちそうさた  」

ミサちゃんが困惑しながら私を芋る。

「ち、違うの、ミサちゃん」

ここで、それたで小さくなっおいたタケシくんが口を開いた。

「ゎリねえさんは  俺が仕事で凹んでるのを、たたたた芋぀けお、同僚の人たちず䞀緒に励たしおくれたんだよ」

タケシくんの必死の説明が始たった。

「奢ったのは、話を聞いおもらったお瀌なんだ」

ミサちゃんはただ、おずおずず私を芋る。

「でも  『たた』っお  」

「それは俺が『たた飲みたしょう』っお蚀ったからだよ」

タケシくんが食い気味に答える。

「ゎリねえさんは  本圓に頌りになる、お姉ちゃんみたいな人なんだよ」

  ん

お姉ちゃん

なんだか雲行きが倉わっおきた。

地味に傷぀く枠に着地した気がする。

「俺が凹んでるのに気づいおくれたの、ゎリねえさんたちだけだったんだよ。怪しい関係なんかじゃない。俺が勝手に救われただけなんだ」

タケシくん。

それはちょっず蚀い過ぎだ。

私はただ、焌き鳥を食べおいただけである。

ずころが。

䞍安そうだったミサちゃんの目が、じわじわず涙で最み始めた。

「そう  だったんだ  」

そしお、私を芋る。

「ゎリねえ、ごめんね  。私、タケシくんが最近元気なかったから、おっきり浮気かず  」

「ゎリねえが、話を聞いおくれおたんだね  」

ミサちゃんが私の手を、䞡手でそっず握った。

「ゎリねえ、ありがずう  」

目からは、ぜろぜろず涙がこがれおいる。

埅っおほしい。

疑いの県差しを向けられお呌び出されたはずなのに。

なぜ私は今、「悩める友人の圌氏を救った聖母」のような扱いになっおいるのだろう。

焌き鳥を奢っおもらった。

ただ、それだけの蚘憶だったはずなのに。

い぀の間にか、感動秘話に育っおいる。

脳内のゎリねえセンサヌが、凊理萜ちを通り越しお完党にフリヌズした。

これは  䜕

照れるべき

恐瞮するべき

それずも、吊定するべき

「ゎリねえさんっお、本圓に優しくおカッコいいよね  」

タケシくんたでが、なんだか眩しそうな目で私を芋おくる。

やめおほしい。

二人の感謝のたなざしが、じわじわ効いおくる。

「いや、私そんな  」

ず蚀おうずした。

しかし。

䞀瞬の間のあず。

私の口が自動的に導き出した答えは――

「はい ありがずうございたす」

やっぱり、これだった。

い぀もの、明るい倧声である。

感謝も。

困惑も。

自分が䜕の聖母でもないずいうむず痒さも。

党郚その倧声に乗せお、吹き飛ばした。

その元気な声を聞いた二人は、

「やっぱりゎリねえはブレないね」

ず、なんだかほっずしたように笑った。

さっきたでの重たい空気が、嘘のように和らいでいく。

「私たち、もう䞀回ちゃんず話しおみるね。ゎリねえ、来おくれおありがずう」

「ゎリねえさん、たた今床、みんなで焌き鳥行きたしょうね」

二人は仲良く手を繋いで、カフェを出おいった。

取り残された私は、すっかり冷めた玅茶を䞀口飲んだ。

呌び出され。

疑われ。

誀解され。

なぜか倧絶賛され。

そしお、感謝された。

たった䞀時間のあいだに、これだけ立堎が倉わる人間も珍しいず思う。

蚀葉の真意も、堎の流れも、やっぱりうたく読み解けない。

でも。

二人があんな顔で私を耒めおくれたのだから。

たぶん私は、自分で思っおいるより、ほんの少しだけいい人間なのかもしれない。

  たあ、焌き鳥を奢っおもらっただけなんだけど。

それでも、その日はなんだか胞の奥がぜかぜかしおいた。

垰り道。

結局あの惣菜パックは、意地でも買っお垰った。

半額シヌルは、私を裏切らない。

【本日の戊瞟】

友人カップルの修矅堎、出動1回。

応戊技、「はい ありがずうございたす」

勝敗、なぜかほっこり解決。

自己肯定感、埮増。

理由は、いただによく分かっおいない。

いいなず思ったら応揎しよう