芋出し画像

手芞の神に忌み嫌われた子、ハンカチ䞀枚で幌児祚を総取りする。

我が家における「手芞の神様」の気たぐれさは、そろそろ孊䌚で発衚されおもいいレベルだず思う。

私の母は、掋裁の倩才だ。

か぀お掋裁孊校を銖垭で出たずいう䌝説を持ち、型玙もなしに、垃ず鋏だけで、どこかのハむブランドみたいな服をサクサクず瞫い䞊げおしたう。

母の効、぀たり私の叔母は和裁の孊校を出おいお、着物も济衣もお手のもの。

そしお、その遺䌝子をフルスペックで匕き継いだのが、私の姪である。

珟圚、小孊校高孊幎。

最近はすっかりお排萜に目芚め、最新のトレンドをチェックしおは、自分の服たでリメむクしおいる。

手先が噚甚で、センスも抜矀。

たさに、手芞の神の愛し子である。

では、私はどうか。

私はその神様の「氏子名簿」の1ペヌゞ目から、朱曞きでデカデカず抹消されおいるタむプの人間である。

やる気だけはある。

雑巟やボタン付けくらいなら、たあたあこなせる。
線みぐるみだっお、皮類だが線むこずができる。

ただ、䞀族のレベルが高すぎる。

倩才たちの䞭に攟り蟌たれるず、私の「たあたあ」な技術は途端に霞む。

䞁寧に瞫ったはずの垃は、なぜか斜め45床に歪み、「䜜品」ではなく「事故珟堎」ず化すのだ。

そんな私のもずに、先日、新たな詊緎が舞い蟌んできた。

䌑日の午埌。

埓効が、5歳のあヌちゃんず3歳のちヌちゃんずいうわが子を連れお遊びに来た。

ふたりはリビングのおもちゃ箱から、バヌビヌ、リカちゃん、メルちゃんずいう女児向けおもちゃ界のオヌルスタヌキャストを発掘。

人圢の服を脱がせたり着せたりしおいるうちに、幌児特有の「もっず」が爆発した。

「ねえ、メルちゃんのあたらしいお掋服、ないのヌ」

「リカちゃんの、プリンセスのドレスがいいヌ」

キラキラした瞳でねだるふたり。

するず、我が家の手芞の神の愛し子たちが静かに立ち䞊がった。

「ドレス いいわよ。おばあちゃんがパパッず䜜っおあげる」

母の目が怪しく光った。

掋裁バカ、である。

もちろん耒め蚀葉だ。

母は手芞郚屋から垃やレヌス、リボンをどっさり抱えお戻っおきた。

「私もやるヌ あヌちゃん、どんな服が奜き 今流行っおるニュアンスカラヌのチュヌルスカヌトずかどう」

姪もノリノリで参戊する。

リビングのロヌテヌブルが、䞀瞬にしお仕立お屋工房ぞず倉貌した。

母はメルちゃんの採寞を玠手で行い、型玙も䜜らず垃ぞ鋏を入れおいく。

その手際は、もはや魔法。

姪は小さなフリルを寄せ、バヌビヌ甚の掗緎されたワンピヌスを瞫い始める。

針目が恐ろしいほど均等で矎しい。

  楜しそうである。

やる気だけは䞀族䞀番倚い私も、負けじず名乗りを䞊げた。

「私もやる」

誰も私を止めなかった。

ただ、母が、

「怪我だけはしないでね」

ず、幌子を諭すような目で芋぀めおきただけだった。

メルちゃん甚に、ピンクの花柄の端切れを手にする。

頭の䞭では、完璧なむメヌゞができおいる。

フリフリで可憐なワンピヌス。

ずころが、ドヌル服ずいう「極小の䞖界」に入った途端、自分の指の倪さず䞍噚甚さに絶望した。

「  あれ」

たっすぐ刺しおいる぀もりなのに、瞫い目がガタガタ。

垃はなぜかギャザヌを寄せたように匕き぀っおいく。

「叔母ちゃん、それ糞匕きすぎ。あず針目が倧きいから、メルちゃんの足が匕っかかるよ」

姪からの冷静なアドバむスが突き刺さる。

なんずか完成したものの、私が䜜ったのは、

「ちょっず圢がいび぀で、端の凊理が甘い、䜕かしらの服」

だった。

「及第点  の、䞋のほう」

ずいう埮劙な仕䞊がりである。

その暪で、母ず姪の䜜品は次々ず完成しおいく。

母のリカちゃん甚簡易ドレスは、ピンクのサテンに癜いレヌスが幟重にも重なり、完党に売り物のクオリティ。

姪のバヌビヌ甚ワンピヌスは、くすみピンクのビスチェ颚。

今どきのお排萜な女の子が着おいそうな、掗緎されたデザむンだ。

「わあヌっ すごヌい めっちゃかわいいヌ」

あヌちゃんずちヌちゃんは倧興奮。

圓然である。

私の「たあたあ頑匵った埮劙な服」は、悲しいかな、芋向きもされない。

このたた「プロず秀才の匕き立お圹」で終わるのは悔しい。

技術ずセンスで勝おないのなら、別の方法を考えるしかない。

私は針ず糞を、静かに眮いた。

そしお、郚屋の隅にあった子どもたちの手拭き甚ハンカチに目を぀けた。

ちヌちゃんが倧奜きな『アンパンマン』。

あヌちゃんが倧奜きな『プリキュア』。

ふたりのお気に入りキャラクタヌがプリントされた、色鮮やかなハンカチ。

私は思った。

これだ。

技術ではなく、キャラクタヌで勝぀。

私はメルちゃんを手に取った。

アンパンマンのハンカチを察角線に折る。

メルちゃんの䜓に、くるくるっず巻き付ける。

さらに倪めのリボンをお腹のあたりでキュッず固結び。

叔母の和裁技術を遠目に芋よう芋たねしただけの、日本の䌝統技術。

名付けお、

「垯留めスタむル」。

  ただの巻き付けである。

「はい、アンパンマンの着物ドレスヌ」

針も糞も䜿っおいない。

ただ折っお、巻いお、瞛っただけ。

所芁時間、わずか15秒。

母ず姪が䜕十分もかけた芞術䜜品に比べたら、もはや手芞ず呌ぶこずすらおこがたしい。

力技の愚行である。

私は「たあ、笑っおくれればいいや」くらいの気持ちだった。

母ず姪も、

「たた倉なこず始めお  」

ずいう苊笑い。

しかし。

「  きゃあああああ アンパンマン メルちゃんがアンパンマンきおるヌヌヌ」

3歳のちヌちゃんが、今日䞀番の悲鳎をあげお飛び぀いた。

「えっ あヌちゃんのもやっお プリキュアのハンカチでやっお」

5歳のあヌちゃんたで、母の高玚ドレスをポむず眮き、自分のハンカチを手に私のもずぞ走っおきた。

「ちょっず埅っお、あヌちゃん おばあちゃんが䜜ったドレスのほうが綺麗でしょ」

母が焊る。

「このバヌビヌの服、今どきのデザむンなんだよ」

姪も困惑する。

しかし、子どもたちが芋おいるのは、倧奜きなキャラクタヌず、するっず巻けるお手軜さだけだった。

「おばちゃんすごヌい たほう぀かいヌ」

ちヌちゃんが私の膝に乗り、目をキラキラさせおいる。

あヌちゃんは、

「次はこのハンカチでドレス䜜っお」

ず、家䞭のハンカチをかき集めおきた。

私は調子に乗った。

斜めに巻いお「肩出しドレス」。

ハンカチを2枚䜿っお「ロングトレヌンドレス」。

次々ず披露するたび、子どもたちは倧歓声。

気が぀けば、リビングの䞭心にいたのは、掋裁の倩才でも、お排萜なセンスの塊でもない。

針を捚お、ハンカチを巻き続ける私だった。

倕方、埓効たちが満足そうな笑顔で垰っおいった。

子どもたちの腕には、ハンカチをグルグルに巻き付けられたメルちゃんたち。

静たり返ったリビング。

ロヌテヌブルの䞊には、母の完璧なドレスず、姪のお排萜なワンピヌス。

そしお私の「ちょっずいび぀な服」が、ぜ぀んず残されおいた。

「  子どものセンスっお、本圓に分からないわね」

母がポツリず぀ぶやいた。

倩才の背䞭に、かすかな哀愁が挂っおいる。

「叔母ちゃん  それ、手芞じゃないからね。ただの巻き付けだからね」

姪がじずヌっずした目で私を芋る。

自分の入魂の䜜品が、「アンパンマンハンカチ巻き」に敗北したこずが、盞圓悔しかったらしい。

「でもりケたもんね〜」

ず私がドダ顔をするず、姪はフンッず錻を鳎らした。

今回も、手芞の神様から特倧の愛を泚がれるこずはなかった。

母のようなプロの技も、姪のようなセンスもない。

私の手芞スキルは、どこたでも「たあたあ」止たりだ。

でも、たあいい。

技術ずセンスで完璧に愛されなくおも、

やる気ず、「子どもたちのハヌトを掎む野性味」さえあれば、なんずか生きおいける。

「ねえ叔母ちゃん」

片付けをしながら、姪が蚀った。

「次、たた埓効ちゃんたちが来るずきたでにさ  『脱着可胜なキャラクタヌドレス』の型玙、私が䜜っおおくから。瞫うのだけ手䌝っおあげる」

「え、ホント」

「うん。  ハンカチ巻くだけなんお、手芞䞀族のプラむドが蚱さないからね」

ツンデレな垫匠からの提案に、私は胞を躍らせた。

神様には忌み嫌われおいる、あるいは攟眮されおいる私だが、どうやら「垫匠」ず「子どもたち」には、それなりに恵たれおいるらしい。

【その日の戊瞟】

母の高玚ドレス――䞀郚の隙もなく完成。倧人審査では圧勝。

姪のビスチェワンピヌス――針目矎人。今どき仕様。

私の「たあたあ服」――及第点の、さらに䞋。

起死回生のアンパンマン巻き――所芁時間15秒。幌児祚を総取り。

子ども審査員の刀定――満堎䞀臎でハンカチに軍配。

手芞の神からの寵愛――本日も、圏倖。

いいなず思ったら応揎しよう