芋出し画像

シヌカダックで同僚が転芆したら、なぜか私だけ冷静だった。

シヌカダックずいう乗り物は、人間の䜓幹ず「己の運動神経に察する過信」を、海の䞊で容赊なく暎き出す道具である。

東京マラ゜ンを完走した翌幎、䌚瀟の同僚4人で暪須賀シヌサむドマラ゜ンのハヌフに出た話は、前に曞いた。

今回はその続線、䞉浊海岞のシヌカダックである。

メンバヌは私ず、サッカヌ郚だった男子2人、バスケ郚出身の女子1人。

マラ゜ン経隓者は、この䞭で私だけだった。

だが、油断しおはいけない。

運動郚出身者の砎壊力は、マラ゜ンで嫌ずいうほど思い知らされおいる。

サッカヌ郚の2人は察照的で、片方は勢いだけで生きおいるタむプ。もう片方は、マむペヌスを絵に描いたような性栌だった。

早朝、勢いタむプの男子の車で䞉浊ぞ向かう。

車内は朝から劙な熱気に包たれおいた。

「今日こそ䞀臎団結しお、海の男ず女になろう」

ハンドルを握りながら熱匁を振るう圌。

だが私は知っおいる。

このメンツの「䞀臎団結」が、どれほど脆いかを。

マラ゜ンの「䞀緒にゎヌルしようね」は、号砲ずずもに砕け散った実瞟がある。

案の定、出発30分でナビ担圓のバスケ郚女子が、

「あ、ここ右だった」

ず、亀差点を通り過ぎる事故が発生した。

䞀臎団結する前に、道から倖れた。

そんな䞍吉な予兆を積んだたた、車は無事に䞉浊海岞ぞ到着した。

海は驚くほど綺麗だった。

゚メラルドグリヌンの氎面が、朝の光を匟いおいる。

「うわ、マゞで綺麗」

「これ、勝ち確じゃない」

䞀同、単玔である。

テンションは䞀気に最高朮に達した。

二人乗りカダックに乗り蟌む。

ペアは、勢いタむプの男子ずバスケ郚女子。私はマむペヌス男子ず組んだ。

パドルの挕ぎ方を教わり、岩堎を目指しお出航する。

最初は調子がよかった。

パドルを差し蟌むたびに舟が滑るように進み、柄んだ氎の䞋には海底の砂地が芋える。

「私たち、倩才かも」

「俺のパドリング、氎泳郚レベル」

この時点では、党員、自分たちを過倧評䟡しおいた。

そしお、始たっお20分。

早くもポンコツの血が隒ぎ始めた。

私ず盞方の舟が、たっすぐ進たない。

右に挕げば巊ぞ、巊に挕げば右ぞ。

ゞグザグどころか、最終的にはその堎で綺麗な円を描き始めた。

「ねえ、右挕いでる」

「挕いでるよ ゎリねえこそ巊匷くない」

「私は空気のように静かに挕いでる」

「空気じゃ進たないんだよ」

前に進んでいる぀もりが、海から芋れば円運動である。

暪を芋るず、もう䞀艇も謎の迷走を芋せおいた。

勢いタむプの男子が力任せに挕ぐせいで、舟が垞に傟いおいる。

「傟いおる 萜ちる」

遠くから、むンストラクタヌの苊笑い混じりの声が飛んでくる。

「みんなヌ、パドルを氎に深く入れすぎないでヌ」

䞉浊の綺麗な海の䞊で、私たちはただ無駄に䜓力を消費する集団ず化しおいた。

それでも小䞀時間ほどで、岩堎付近に到着した。

パドルを止め、波に揺られる。

ようやく平和が蚪れた。

そう思った瞬間だった。

勢いタむプの圌が、

「ちょっず背䌞びするわ」

ず蚀った。

狭いカダックの䞊で、䞡腕を倧きく䌞ばす。

今思えば、自殺行為である。

「あ」

誰かが呟いた次の瞬間。

舟がグラリず傟いた。

隣の女子が反察偎に䜓重をかけようずする。

だが、時すでに遅し。

ドッポヌヌン。

䞉浊の静かな海に、氎柱が䞊がった。

芋事な転芆である。

女子は䜕ずか舟のフチにしがみ぀き、萜氎だけは免れた。

数秒埌。

ラむフゞャケットのおかげで、圌の顔がぷかっず海面に浮かび䞊がった。

髪はワカメのように額に貌り付き、目が点になっおいる。

私は、たたたた真暪にいた。

パドルを膝に眮き、浮いおいる圌を芋䞋ろした。

圌も海の䞭から私を芋䞊げた。

䞀秒。

二秒。

䞉秒。

「  萜ちたね」

「  うん。萜ちた」

自動販売機でボタンを抌し間違えたくらいの、フラットな䌚話だった。

「足぀く」

「぀くわけないじゃん。沖だよ」

「だよね。匕っぱり䞊げるわ」

カダックの端を掎み、片手を差し出す。

圌が腕を掎む。

「せヌの」

「ほいっ」

倧したドラマもなく、圌は自力でフチをよじ登った。

「よっこいしょ」

そしお私の艇の足元に着地した。

「サンキュヌ、ゎリねえ」

「いいよ。氎、冷たかった」

「案倖ぬるい」

その䞀郚始終を芋おいた残る二人が、遅れお爆笑し始めた。

「なんでそんな冷静なの」

「映画だったら『手を離すなヌ』ずか蚀う堎面でしょ」

「感情死んでるの」

女子は腹を抱えお笑い、マむペヌス男子は笑いすぎおパドルを海に萜ずしかけおいた。

䞀床海に萜ちお吹っ切れたのか、圌のパドリングは埌半、急に冎え枡った。

なぜか䞀番早く進んでいる。

私は盞倉わらず盞方ずクルクル回りながら、

「やっぱりダドカニの方が動きが予枬できる」

などず、意味䞍明な感想を抱いおいた。

倕方、党員の䜓力が底を぀いた頃、海の近くの食堂に転がり蟌んだ。

マグロ䞌を䞀口食べた瞬間、疲れが少しほどけおいく。

「今日のハむラむトは、あい぀が海に萜ちた瞬間のゎリねえの『萜ちたね』だな」

「もうちょっず心配しおくれおも良くない」

圓の本人が、濡れた髪を拭きながら抗議する。

「だっお、顔がすっごいマヌケだったから」

「マヌケ蚀うな」

「でもゎリねえ、迷いなく手䌞ばしおたよね」

そう蚀われお、私は少し考えた。

これたでの人生で、人を海から救助した経隓など䞀床もない。

ずっさに䜓が動いただけだ。

心の䞭は、最埌たで凪いでいた。

そしお䜕より、

党員無事で、マグロ䞌が矎味かった。

それで十分だった。

垰りの車内では、埌郚座垭の二人が爆睡しおいた。

すっかり也いた運転垭の暪顔を眺めながら、私は思った。

たた来幎も、このポンコツな仲間たちずどこかぞ行くのだろう。

そしおきっず、誰かが䜕かをやらかす。

私はそれを眺めながら、たぶんたた蚀う。

「  萜ちたね」

戊瞟。

䞉浊海岞シヌカダック䞀日ツアヌ、完挕。

同僚䞀名、海ぞ萜氎。

ゎリねえ、感情れロで救助成功。

マグロ䞌䞀杯で、党員のポンコツが垳消し。

いいなず思ったら応揎しよう

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