人は形で理解している
― ゲシュタルト心理学とサイン設計 ―
「もっと分かりやすく説明したい。」
サインや案内計画を考えるとき、多くの人がそう考えます。
だから文章を増やします。
説明文を追加します。
補足を入れます。
注意書きを付け加えます。
しかし実際には、
説明を増やすほど分かりにくくなることがあります。
なぜでしょうか。
その理由は、
人は文字で理解しているのではなく、
形で理解しているからです。
これは心理学の世界では、
ゲシュタルト心理学として知られています。
そして実は、
サイン設計や空間デザインにおいて非常に重要な考え方でもあります。
人は部分ではなく全体を見る
例えば、
円を描こうとして少しだけ線が切れていても、
私たちは円として認識します。
点が並んでいても、
線として見えます。
バラバラの要素があっても、
ひとつのまとまりとして理解します。
人の脳は、
個別の情報を一つずつ読んでいるのではありません。
まず全体像を把握しています。
つまり、
「読む」
より先に
「感じる」
が起きているのです。
人は文字より形を先に認識する
空港のトイレを思い浮かべてください。
多くの人は、
「TOILET」
という文字を読んでいません。
男女のピクトグラムを見ています。
駅のエレベーターも同じです。
病院の受付も同じです。
人は文字を読む前に、
形で意味を理解しています。
なぜなら、
文字を読むには時間がかかるからです。
しかし形は一瞬で理解できます。
つまりサイン設計において、
文字情報は補足であり、
形そのものが主役なのです。
近くにあるものは仲間だと思う
ゲシュタルト心理学には
「近接の法則」
という考え方があります。
近くに配置されたものは、
ひとつのグループとして認識される。
例えば、
受付案内の下に関連情報が並んでいれば、
利用者は自然にセットとして理解します。
逆に、
関係のない情報が近くにあると混乱します。
つまりレイアウトは単なる見た目ではありません。
意味を作っているのです。
同じものは同じ意味に見える
もう一つ重要なのが
「類同の法則」です。
同じ色。
同じ形。
同じデザイン。
人はそれらを同じグループだと認識します。
例えば病院で、
診療科案内をすべて同じデザインで統一する。
商業施設で、
フロア案内を同じルールで作る。
オフィスで、
会議室サインを統一する。
すると利用者は学習します。
「あ、この形は案内サインなんだ」
と理解できるようになります。
これは空間全体の分かりやすさにつながります。
人は矢印を読むのではなく感じている
サインで最もよく使われるものの一つが矢印です。
しかし私たちは、
矢印を読んでいるわけではありません。
方向を感じています。
矢印は文字よりも速く認識されます。
だから空港でも駅でも病院でも、
方向案内に使われます。
これは人が形で理解する生き物だからです。
優れたサインは、
説明しません。
感じさせます。
ピクトグラムが強い理由
近年はユニバーサルデザインの考え方から、
ピクトグラムが広く使われています。
これは単に外国人対応ではありません。
人間の認知特性に合っているからです。
言語は学習が必要です。
しかし形は直感的です。
トイレ。
エレベーター。
階段。
非常口。
多くの場合、
文字より先に理解できます。
つまりピクトグラムは、
デザインではなく心理学なのです。
優れた空間は説明が少ない
高級ホテルに行くと、
説明が少ないことがあります。
商業施設でも、
優れた施設ほどサインが整理されています。
なぜでしょうか。
それは、
空間そのものが意味を伝えているからです。
受付が見える。
通路が分かる。
目的地が理解できる。
つまり利用者は、
文字を読む前に理解しています。
これはゲシュタルト心理学が空間設計に活かされている状態です。
サイン設計への応用
サイン設計で重要なのは、
情報を増やすことではありません。
まず形を整えることです。
まとまりを作る。
ルールを統一する。
視覚的な関係性を作る。
すると利用者は、
説明を読まなくても理解できるようになります。
これは病院でも、
ホテルでも、
オフィスでも、
工場でも同じです。
優れたサインは、
読ませる前に理解させています。
よくある失敗
・文字で説明しすぎる
・レイアウトに統一感がない
・関連情報が離れている
・色や形のルールがバラバラ
・ピクトグラムを軽視する
これらは利用者の認知を妨げています。
今日の結論
人は文字で理解しているのではありません。
形で理解しています。
だからサイン設計とは、
情報を並べることではなく、
意味のある形を作ることです。
優れたサインは説明しません。
見た瞬間に理解できる状態を作ります。
それが本当の「分かりやすさ」なのです。
デザインのいい街をつくるサインディスプレイを扱っております
