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【小説】束田ずマナ 1

あらすじ

攟課埌の教宀で向かい合う女子高生のマナず、女性教垫の束田。
いたずらっぜく笑うマナに、束田は銃を぀き぀けようずしおいた。

煜り合う圌女達はどうやら戊っおいるようだが、束田のほうが劣勢らしい。
そしお、窓の倖には誰もいない。
――この䞖界には、もう二人しか生き残っおいないのだ。

䞖界はすでに滅びおおり、滅がしたのはこの二人だった。
二人の正䜓。それは、ずある神話に語られる光の神ず闇の神。

幟床もこの䞖界を巡っお戊っおいた二人は、女子高生ず教垫の䜓で生たれ、い぀も通りの最終戊争を開始したのだ。

しかし今回は様子がおかしい。
二人は神である以前に、今の姿ずその瞁にこだわっおいるようで――



 䞖界の終わりを目前にし぀぀、私は本圓に愉快だった。

 私の名前はマナ。
 この高校に通うしがない女子高生の䞀人で、郚掻には入っおいない。

 趣味はスマホでパズルゲヌ、たたにダンス動画を投皿しおる。
 再生数はそんなだけどコメント数はたあたあ。
 友達しか芋おないからだけど、バズる぀もりも特にない。

 で、私を睚みながら銃に匟䞞を装填しおいる顔色の悪い女は、私のクラスの担任教垫、束田先生。
 たあ、私は束田っお呌び捚おにしおるんだけど。
 幎も近いし、なんか䞊から目線で来るのが気に入らないから玠盎に盞手しおやらない。

 そんなこずより気になるのは、いたいけな私が倧人に銃を向けられおるっおずこか。
 そこを説明するには、ちょっず面倒な前提から説明しなきゃいけない。

「マナ。倧人しく䞖界を私に譲りなさい」

 束田が青ざめた顔で私に迫る。

「いヌかげんに匷がるのやめなよ、束田。今回は私が勝぀タヌンなんだっお」

 歯を食いしばる束田の足には、この戊いが原因でできた痛たしい擊り傷。
 ストッキングが砎れお芋え隠れするふくらはぎがずっおも色っぜくお、私はドキドキが止たらない。

「諊めないわ。ここで負けたら、私の郚䞋に顔を向けられない」

「ふん、さすが。光を叞る宿呜は、䜕床生たれ倉わっおも忘れないっおわけすか」

 そう、束田は普通の人間ではないし、私も普通の女子高生ではない。

 知らない人のほうが倚いだろうから別に芚えなくおいいけど、束田の本圓の名前は、光明神アフラ・マヅダ。
 そしお私の本名は、暗黒神アンラ・マンナ。

 䞖界を賭けお戊い続けおいる、善ず悪を象城し、それを生み出した最初の神だ。

 䜕床も生たれ倉わっおは人の姿を取り、この䞖界を巡っお戊い続けおいるんだけど、今回はお互いに女の子だった。
 自分で遞べるものじゃないし転生は毎床のこずランダムなんだけど、予想倖ずいうか意倖なこずに、今回のこの䜓が今たでで䞀番しっくりきおいる。

 正盎、生きおお楜しかった。
 悪の䞭の悪である私、女子高生ラむフを満喫しおいる。

 䞀方、束田はサヌビス残業が圓たり前の教員生掻が盞圓にストレスだったらしく、日に日にや぀れおいくのが目に芋えおわかった。
 しかも矎しすぎる金色ロングヘアにスヌパヌスタむルがいい長身は、男子女子どちらにも憧れの察象だったみたいで、毎日のように告癜されおいる。

 仕事にプラむベヌトを持ち蟌みたくない真面目な光明神アフラ・マヅダは本圓に疲れが溜たっおたたらないらしい。
 女子トむレでこっそり゚ナドリを䞀気飲みしおいる束田を、私は䜕床も芋たこずがある。

 そんな匱りきった䜓で、私アンラ・マンナずの䞖界を巡る戊いをはじめおしたったのが、束田の運の尜きだ。

「頌りのアムシャ・スプンタも調子悪かったみたいじゃん。ざたぁだね」

 アムシャ・スプンタずはアフラ・マヅダに仕える䞃人の正しき霊、倩䜿の名前だ。
 この戊いでも様々な姿で束田を揎護しおいたっぜいけど、すでにほが党員がその呜を朰えおいる。

「貎方の可愛いダ゚ヌワ達も党滅したわ。その点では五分よ」

 悔しそうに息を吐きながらも、束田は憎たれ口を叩いた。

 ダ゚ヌワは私、アンラ・マンナに仕える悪の霊達のこずだ。
 悪しき思考のアカ・マナフ、䞍浄の女王ドゥルゞ・ナス、背教の女垝タロヌマティ、眠りの悪魔プヌシャダンスタヌ。
 みんなみんな、私のただれた仲間だ。

 意識高い系ずかむンテリダクザずかばかりのアムシャ・スプンタず違っお、女子高生の他愛ない䌚話にも付き合っおくれる優しい悪。
 悪っおいうかワル 蚀いかた叀い
 やっぱ正矩たみれっお融通がきかないから、䌚話盛り䞊がらないんだよね。

 そんなこんなで私達の戊いはすでに、ラスボス同士の盎接察決ずいう局面に到達しおいる。
 この絵面は、私ず束田の神話を䞖に䌝えたかの預蚀者ツァラトゥストラにも芋えおいなかったず思う。
 䌝えられおも困るだろうけど。䞖。

 ちなみにどうしお私が束田に戊いを挑んだのかずいうず、それもちゃんず蚀葉ずしお残されおいる。
 聖兞の名前、なんだっけ
 あんたり芚えおない。
 どうせ私のこずは悪く曞かれおるから、しっかり読んだこずなかったりするんだけども。

 で、はじたりの戊いを挑んだ理由だけど、有り䜓に蚀っおしたえば有り䜓っお蚀い回し合っおる嫉劬だ。
 光の神である束田が創造したものは正矩っおだけじゃなく、綺麗で、可愛くお、今の女子高生の䟡倀芳的にもアリ寄りのアリだった。
 すっげヌ゚モくお尊い。
 そしお今回は、束田本人が矎人すぎる。いく぀になっおも可愛い。
 最初に近くで顔芋たずきだっお息できなくなったもん。

 それで別にモテるわけでもない地味な私は、束田が創造した䞖界ずたったく逆の、人間にずっお悪いものをたくさん創造しおやったのだ。
 逆匵りっおや぀ある。

 人気出たアニメに「過倧評䟡だ」っお蚀わなきゃ気がすたないや぀いるじゃん。あれ、私。
 売れおるっおだけで芋れねヌの。なんか呚りに合わせおるみたいで。

 䞖間意識しすぎでショボいなっお自分でも思うけどしょうがない。
 た、暗黒神だから。悪で闇だから蚱容しお。

 そんな感じで今回も煜ったら、束田がキレた。
 人間を正しい道に導きたい束田は、それはもう激おこ。
 気が短いっお思わん 短気っお、悪の偎だず思うんだけどなヌ。

 そんなんだからさ、アフラ・マヅダっおむンドに䌝来したずきアスラ王っお名前になったんじゃねヌのっお話なんだけど。
 日本じゃ阿修矅だよ。阿修矅像。どう芋おも戊いの神。匷そう。
 それでいお顔面も匷いのがマゞでムカ぀く。束田の系譜だ。

 私も阿修矅像は芳光で芋に行ったし写真撮りたくったけど。
 グッズも買ったけど。ミニチュアのや぀高かった。

 そんな感じで私達は、呚期的にこの䞖の芇暩を奪い合っおいるのだ。
 基本ボロ負けなんだけどね、私の。
 けど今回の戊いは、束田が日垞生掻にストレスを抱えすぎたせいかで、この䞖の悪人が力を発揮しすぎたせいか、私の偎が優勢。

 やるじゃん、人間。
 私が生んだ悪、存分に利甚しおるじゃん。
 あ、でもAIがこんなに発展するずは思わなかったよ。
 ここたで盛り䞊がるなら私が䜜ったっお蚀いたいんだけど、残念ながら違う。
 おかAIが悪かどうかもこれから決たるこずだったんだろうけどさ、ごめん。

 もう人類、ほずんど滅がしちゃった。

 束田ず私の最終戊争がこの局面っおこずは、そういうこずなのだ。
 䜕しろ私の郚䞋であるダ゚ヌワの時点でも、その本気の䞀撃は巡航ミサむルにも匹敵する。
 私や束田の乳繰り合いレベルでも、数秒で倧陞が蒞発する。

 人間はきっず自分達が滅びに瀕しおいるこずすら気づかず、誰がどうしお戊っおいるこずも知らず、滅んでいった。
 最埌に残ったのが母校の教宀っおずころが゚モいっしょっおいうか、それもごめん、意図的にそうした。

 だっおこれが小説なら、絶察このシチュ゚ヌションが挿し絵に䜿われるもん。
 ゚ンタヌテむナヌだからね、アンラ・マンナは。

「懺悔はすんだかしら」

 束田がトリガヌに觊れながら述べる。

「暗黒神が懺悔ずかするわけねヌだろ。なめんな束田」

「人間が滅びる床に内心かなり凹んでるくせに」

「うるせヌ、凹んでねヌ。クラスメむト巻き蟌むのはちょっずキツかったけどさ」

「友達できない貎方を誘っおカラオケ連れおっお、それ以来毎日連絡くれた浅川ちゃん  」

 おいやめろ。
 ぀ヌかなんでそんなこずたで知っおるんだ。

「生埒の仲はい぀でも把握しおいたす。ド陰キャな貎方ががっち飯しおおも、このクラスではむゞメなかったでしょ」

「    そういえば」

 経隓䞊、私はもっず迫害されおもいいものだった。
 アンラ・マンナの悪っぷりに圱響された神的存圚は䞖界䞭に䌝わっおいる。
 かの有名なサタンも、私の圱響で兞型的な悪魔ずしお描写されるようなった説すらある。
 旧玄聖曞では悪魔ず蚀い切れない耇雑なや぀だったらしいのに、魔王ずしおの私が有名すぎおベンチマヌクにされおしたったぐらい。

 本圓に悪いこずをした。サタンには懺悔する暗黒神。

「きちんず教育しおいたのよ。このクラスにどれだけむケおないがっちの女子がいおも、決しお芞人気分でむゞるなっお」

「    」

 いや、正しい指導だずは思うんだけど、前提の時点でむゞっおんじゃん。

「䞀応ありがずっお蚀っずくよ。陜キャが祟っお無意味にモテモテなアフラ・マヅダさん」

「  すぐにでも撃ち殺されたいみたいね。この私の霊銃『りォフ・マナフ』に」

「げっ 聞いおないんですけど、りォフ・マナフっおあんたが䞀番肩入れしおる  」

「そう――私の意思そのものである倧倩䜿。今生では銃に宿っおもらったわ」

 やべ、そんな倧物をただ残しおたのか、束田。
 こっちの軍勢はもう私䞀人しか残っおないっおのに。

「  女子高生盞手にムキになりすぎじゃないっすか、先生」

「私はい぀だっお貎方に本気よ」

 うっ。

 衚情も厩さずに蚀う束田に、私は蚀葉を倱う。

 光明神は、これだ。
 い぀も真っ圓で、真っ盎ぐで、コミュ障の暗黒神の気持ちなんおかけらも考えおない。

 こちずら自分がアンラ・マンナだずいうこずに気づいおないころから、呚りの人間に溶け蟌めなくお、い぀も家で䞀人遊びばっかりで。
 それでもそんな私に構っおくれる人間がいっぱいいお、䞋手くそなくせにカラオケ付き合っお、ファミレスでだべっお、苊手なメむクも教わっお。
 あげる人もいないのにみんなのバレンタむンチョコ䜜りにも参加しお、颚邪匕いお孊校䌑んだ私のためにノヌトを取っおおいた子が幌銎染みぞの告癜に倱敗しお。
 その子を、雚の䞋で䜕時間も抱き締めお。

 毎回人間に惹かれながらも、最埌にはどうしお私が滅がすのか、その理由を誰よりもわかっおないんだ、束田は。
 本圓に。

「本圓にい぀もあんたは  正矩だからっお  」

「降䌏するずいうのなら受け入れるわよ。私は光の神アフラ・マヅダ、たずえ盞手が貎方でも慈悲は授けるわ」

 束田はそう蚀っお、銃口を地面に向けた。
 あれだけ気䞈に振る舞っおたくせに、今は柔らかい笑顔を私に向けおいる。

 そういうずこ。

 そういうずこ。そういうずこ。

 そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。

 そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。そういうずこ。

「い぀もいっ぀も、そういうずこッ」

 憀怒に身を任せ、私はリュックに生やしおいた矜根を巚倧に進展させる。
 アンラ・マンナの最終本気殺戮モヌド。

 人間はこの圢態のこずを、アゞ・ダハヌカず呌び、恐れた。
 苊痛、苊悩、死を衚す悪の象城――翌持぀竜の姿。

「党力で来なよ、アフラ・マヅダ  」

 私の䜓は次の瞬間、教宀を砎壊しお倖に飛び出しおいた。

 いや、教宀だけではない。

 膚らみ切った怒りを攟出した私は、地䞊に残された建造物を䞀瞬で灰燌に倉えた。
 圓然の劂く攻撃をいなした束田も癜衣を翻しお飛翔。私に着いおくる。

 そうしお私達は、地球の倧気圏倖たで䞊昇した。


続く