嘘をまとった女と、切れ味のいい読書眼
「悪女について」は山吹がとても好きな小説の一つである。
虚飾にまみれた女社長、富小路公子が謎の死を遂げる。公子に関わった27人の人物がインタビュー方式で公子について語り、本人は一切出てこない。湊かなえの小説にもよくある手法だがこの当時は珍しかったのでは?(知らんけど)
公子は自分を高く見せるために本当は八百屋の子なのに旧華族と言ったり、自分の母は本当の母親ではないと言う。
SNSのない時代だが現代に公子がいたらブランディング力に長けたカリスマになっているだろう。
まあ、公子の場合は夜学で簿記を習いその後税理士の資格までとっているところが最近よくいる胡散臭いインフルエンサーとは違うところだ。
noteにもよくいるトップセールスマン、売り上げ8桁みたいな。一体なんのトップセールスなんだよ。noteで売り上げ8桁見すぎてこの前ホストの漫画読んだら「売り上げ4桁」って出てきたから「少なっ」って思っちゃっただろうが。「小っさ……いや待て、単位が違うわ!」って二度見しただろうが。
‥‥話が脱線してしまった。
私は何度読んでも公子の魅力にやられっぱなしで「犯人は誰か」とは全く考えていなかった。
真まるさんの『悪女について』記事を拝読し、「なるほど‥そういう視点もあるのか」と唸ってしまった。
公子の親友(?)烏丸は本物の旧華族。
公子とは一緒に旅行に行ったりジムに通う仲だが、公子のことをあまり良く言ってなかったし、公子の最後の恋人(多分同時進行で何人もいたが。)アランドロン似の小島には烏丸もご執心だった‥。
烏丸犯人説、と考えるとかなり違う楽しみ方もできそうだ。
何十回読み直しているのにまた読み直してしまった。
ちなみに、真まるさんのプロフィールにある「人として偉いけど、犬として偉いとは限らない」という一文も、私の密かなツボだ。 どこか斜に構えていながら文学を愛し、鋭い牙と柔らかいユーモアを持つこういう人たちと、noteという場所でこうして繋がれていることが、今の私にとっては何より心地よい。
真まるさんの雰囲気はなんとなく壇蜜さんに似ていると勝手に思っている。
程よく脱力していてそんなにウケ狙いを考えていないけど面白い。(考えていたらごめんなさい)
『壇蜜』は壇蜜さんの夫である清野とおる氏が壇蜜との日常を描いた漫画である。
壇蜜さんはブランド物などには興味はなく、必要以上に自分をよく見せようとしない。
飼っている動物たち(猫、鳥、猿など)には引くくらいの金額を注ぎ込み、散弾銃(ショットガン)を使用する「クレー射撃」の所持許可(銃砲所持許可)を取得したり存在自体が面白くて目が離せない。
昔、マツコデラックスが、壇蜜さんは芸能人だがブランド品を全く持ってなくて化粧ポーチも無印のメッシュポーチだし気の抜けた人なのよね、みたいなことを言っていた。その頃、壇蜜さんは人気絶頂期だったので、山吹は「演出じゃないの?」と思っていたが漫画を読んでいると本当にそんな感じの人らしい。
真まるさんの記事も面白くしようとしてないように見えるのに、文章の端っこからじわじわ面白さが漏れてくる。
観察眼が鋭いのに、本人が一歩引いてるから読んでいて疲れない。
そして真まるさんは、音楽(曲作り)の面でもすごい人だ。 以前から「メロディオタク」として我流で音楽を研究されてきた方なのだが、これがまた痺れる。 インストゥルメンタル(器楽曲)を作るとき、「同じ音をもう一度置くこと」に猛烈な緊張感を抱いていたという。音が少なければ少ないほど、一音一音に「なぜこの音なのか」と問い詰めてしまう。坂本龍一の旋律に恐れをなしながら、音を動かし続けなければ美しくならないと思い込んでいた――という苦悩。 それが、ヒップホップを作ったことで「同音は旋律の停滞ではなく、言葉が動くための静かな床だった」と気づく瞬間がある。 音高が同じでも、子音や母音、言葉が動けば音楽は進んでいく。その感覚のアップデートの仕方が、もうたまらなく知的でかっこいいのだ。
エセ深淵男子のように「この面白さがわからないお前がセンスない」と他人をこき下ろしたり、やたらうんこを連発しなくても面白いのだ。
文章の中で大声で「ここ笑うところです!」と旗を振っているわけでもない。むしろ、「まあ、そういうこともあるよね」と一歩引いている。
なのに、読んでいるこちらは不意に笑ってしまう。
これは結構すごいことだと思う。
笑わせようとする文章は、書き手の「ここで笑ってほしい」という意図が見えると、読者も少し構えてしまう。でも真まるさんの文章には、その構えがない。
だからこちらも油断して読んでいるところに、ぽつっと置かれた一言が妙に効いてくる。
たぶん、こういう人は日常でも面白いのだろう。
何か特別なことをしなくても、物事を見る角度が少し違う。みんなが素通りするところで立ち止まり、「そこ、そう見るんだ」と思わせてくれる。
そして何より、その視点を他人に押しつけない。
「私はこう思うけど、まあ知らんけど。」
このくらいの距離感が、ものすごく心地いい。
こういう人になりたい。
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