写真の絶滅について
「写真が絶滅してしまう」
と、木下さんが言う。
いやそれは、想像や予想なのではなく、現実に絶滅してしまいそうなのだと主張する。
もちろん、私は信じない。
なぜなら、木下さんは今までにも私に対して、そのような類の嘘を、さも真実であるかのように吐き続けてきたからだ。
と私が主張すると、木下さんはさもありなんという顔をして言う。
「狼少年はどうして村を壊滅させるに至ったのか。それは、狼少年が何でもないところで嘘をつき続けていたからに他ならない。彼は嘘をつき続け、そして村人を騙し続けた。だから本当に危機が迫った時、誰も彼の言葉を信じなかった。そういうわけだ」
「どういうわけですか?」
「つまり、こういうことだ。狼少年は何もないところで嘘をつき続けた。その嘘は始め、村人にとって真実であるかのような色彩を帯びていた。けれども、回数を重ねるごとにその色彩は色あせ、終いには、狼少年がいくら口を開いても、その色は無色透明のままだったのだ。それがたとえ色づいている現実であろうと、狼少年が口にした途端、事実はゼロになるのだ」
「で、どういうわけですか?」
「狼少年のついてきた嘘は、狼少年の体を覆い尽くし、狼少年は現実に見えているけれど、その村の人々と狼少年の間には、幾重もの透明な膜が張られている。その膜は、狼少年と村人たちの間を徹底的に隔絶したというわけだ」
「よくわかりませんが、とにかくその狼少年がついてきた嘘による膜によって、狼少年と村人たちは別々の世界に導かれたというわけですか?」
「まあ、つまりはそういうことだ」
「それと、写真の絶滅についてどう関係があるんですか?」
「つまり、この写真の絶滅というのは、狼少年が透明になった後の真実というわけだ」
ふふん。
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