新規事業は、大手企業であるほど、立ち上がりにくいことがある。
こんにちは。
お読みいただきありがとうございます。
これまで新規事業の立ち上げ支援を専門に、60社以上のスタートアップや大手企業の新規事業をコンサルティングとBPOで支援してきました。
マーケティングと営業の両方を現場で回してきた経験をもとに、教科書には載っていないリアルを発信しています。
今回のテーマは「意思決定のスピード」です。
「大手の方が資本力があるから、新規事業も有利なはず。」
一般的にはそう思われるかもしれません。
しかし現場を見てきた実感は逆です。
大手の新規事業ほど立ち上がりにくい構造になっているケースが多い。
資本力があるから有利なのではなく、大手企業だからがゆえに遅くなる。
この構造を、実際の事例をもとにお話します。
新規事業は「速さ」自体が差別化になる
経営学を学ぶと必ず最初に学習する内容として、「規模の経済性」というものがあります。
大きいほど有利という発想です。
しかし新規事業には、別の原理も強く働きます。「速度の経済性」です。
新規事業の正解は最初から用意されていない。
市場に出して、断られて、修正して、また出す。このサイクルの中でしか見えてこない。
なので、このサイクルを速く回せる組織が勝ちます。
1ヶ月で10回小さく失敗しながら修正できる組織と、1回の挑戦に3ヶ月かける組織では、1年後の精度がまったく違う。
資本力がいくらあっても、このサイクルが遅ければ意味がない。
新規事業の競争優位は、資本の大きさではなく、学習サイクルの速さで決まるといっても過言ではありません。
同じ現場で見た、「3ヶ月」と「3日」
実際に経験した話をします。
ある「移動インフラ系のシェアリングサービス業界」で、両極端な2社の支援に関わったことがあります。
一方は大手企業が直接運営する事業。
先行者として市場に入り、当初は圧倒的なシェアを持つリーディングカンパニーでした。
もう一方は、スタートアップとして立ち上げられた後発の事業です。資本の出所は似ていましたが、組織の運営形態はまったく違いました。
同じ現場で、まったく同じ問題が起きました。
「拠点の看板が邪魔だ」というエンドユーザーや近隣住民からの声です。
些細に聞こえるかもしれませんが、シェアリングサービスにとって拠点の使い勝手の良さや地域住民との関係性は事業の根幹です。
この声をどう扱うかが、事業の分岐点になりました。
なぜなら
「サービス利用者が増える」
「サービス拠点が増える」
この2つが同時に速く増加しないと移動モビリティの事業は大きくならないからです。
大手新規事業部門はこう言いました。
「看板については規定で決まっているので、変えられません。」
スタートアップはこう言いました。
「サイズを変えよう。いや、設置型をやめて移動できる形にしよう。」
これは単なる一例です。
まだ成熟していない新規事業においては意思決定は、日常で数多く発生します。
同様に決断しないといけない場面が、支援の中で何度もありました。
そのたびに、両社の反応は対照的でした。
実際に現場で確認した数字があります。
大手がとある意思決定をするのに要した時間は「3ヶ月」。
スタートアップは「3日」。
同じ判断が、30倍の時間差で行われていたということです。
このようなことが積み重なり、
結果として、後発だったスタートアップが、先行していた大手のシェアを抜きました。
なぜ大手は遅いのか
本質的には、構造の問題です。
大手の新規事業は、稟議・複数部署の承認・社内調整を経て初めて動きます。
「変えたい」という意思があっても、組織がそれを止める。
「規定で変えられない」という言葉の裏には、その重さがあります。
加えて、リスクへの姿勢が違います。
大手は「失敗できない」というプレッシャーが強い。
失敗が許されない文化では、攻めた施策より守りの施策が選ばれやすい。
結果として、当たり障りのない打ち手に終始します。
スタートアップは、攻めることが前提です。
顧客の声を聞いたら、まず変えてみる。
失敗したら次を試す。
この姿勢の違いが、学習サイクルの回転数の差になる。
資本力で先行していたはずの大手が、後発に抜かれた理由はここにあります。
まとめ
新規事業の成否を決めるのは、資本力だけではありません。
それ以上に新規事業で、決定的な違いを生む重要素はスピードです。
市場に出して、学んで、修正するサイクルをどれだけ速く回せるか。それを支えるのは、意思決定の構造です。
承認の回数を減らせるか。現場が自分で判断できる範囲を広げられるか。顧客の声を、翌日の行動に変えられるか。
大手企業が新規事業を本気でやるなら、問うべきはこれです。
「この新規事業チームは、顧客の声を聞いた翌日に、自分たちで意思決定をして、行動をを変えられるか。」
資本力があっても、先行者であっても、意思決定が遅ければ後発に抜かれます。
現場で何度もそれを見てきました。
・日常の意思決定のスピードをあげること。
・小さい失敗を許容すること。
・試行して得た学びを事業に反映させること。
・そのサイクルを速く、多く行うこと。
決断や動きが慎重になりがちな組織構造の場合は、
上記を意識することが重要かもしれませんね。
最後までお読みいただきありがとうございます。
今後も新規事業の「成功・失敗」の経験談を発信していきます。
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