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新規事業、「儲かりそうだから」と始めると、大抵儲からない。


こんにちは。
お読みいただきありがとうございます。

これまで新規事業の立ち上げ支援を専門に、60社以上のスタートアップや大手企業の新規事業をコンサルティングとBPOで支援してきました。

マーケティングと営業の両方を現場で回してきた経験をもとに、教科書には載っていないリアルを発信しています。

今回のテーマは「なぜやるのか」です。

「競合が儲かっている。だからうちもやろう。」

新規事業の立ち上げ理由として、よく聞く話です。

でも、この発想から始まった事業が成功したケースを、私はほとんど見たことがありません。




新規事業に「Why」がない会社は、立ち上がらない

新規事業を始めるとき、多くの会社が
「何をやるか(What)」と「どうやるか(How)」から考えます。

市場規模を調べ、競合を分析し、ビジネスモデルを設計する。
これ自体は正しいプロセスです。

しかし、決定的に欠けていることがあります。
「なぜ自分たちがやるのか(Why)」です。

Whyがない事業には、2つの問題が起きます。

一つは、現場が動かないことです。

営業マンは「何を売るか」は理解できても、「なぜ自分がこれを売るのか」が腹落ちしていなければ、既存業務を優先します。
新商材を売る必然性が、自分の中に存在しないからです。

もう一つは、競合との差別化ができないことです。

「競合が儲かっているから」という理由でビジネスモデルをコピーしても、競合にはその事業を始めたWhyがあります。
歴史があり、顧客との関係性があり、組織の文化がある。
そこを無視してモデルだけをコピーしても、机上の空論になります。


市場調査の結果は、完璧だった

ある大手通信会社の新規事業支援でマーケティング調査の支援をした際の話です。

この会社のメイン事業は通信回線や業務用端末の法人販売でした。

その周辺領域であるセキュリティやヘルプデスクなどを一括支援する新規事業を構想していました。

立ち上げた背景はシンプルでした。
儲かりそうだから。」
「大手商社がすでにやって儲かっているから。」
ただそれだけです。

そして、その競合にあたる大手商社からキーマンを引き抜き、事業責任者につぐポジションとして抜擢しました。

その中で、私たちが担当したのは市場調査です。

対象は当該企業の中心取引先企業群である「中小企業」に絞り、実施しました。

事業立ち上げ後に既存顧客に対して、各営業マンがクロスセルを図ることで拡大を図るのが重要なテーマだったからです。

本プロジェクトが有効かどうかを検証するため、調査設計から実査・レポーティングまでを実施しました。

結果は、事業の追い風を示すものでした。

経産省主導でサプライチェーンセキュリティ評価制度の法改正が控えており、大手企業と取引をしている中堅・中小企業の経営層はセキュリティ対応に強い課題感を持っていました。

大手との取引を継続するためなら支出も厭わない覚悟がある。逼迫した需要が見えました。

情シス不足の問題も顕著でした。
総務が兼務している状況が長らく続き、現場は崩壊寸前の企業も多く、
リソースと専門性の観点から外部への委託需要は高い。

市場としては筋が良い。私たちのレポートはそう結論づけました。


完璧な準備をした。でも、売れなかった。

プロジェクトチームは役員直下でエースクラスを集めたものでした。

コンサルティング会社を入れ、ビジネススキームを構築し、協力会社も確保しました。
足りないケイパビリティはM&Aで補う計画まで立てました。
売り方も整備し、目標も設定しました。

準備は完璧に見えました。

しかし正式な事業判断をする上で重要な、PoC期間に、売上は全く上がりませんでした。

販売を担当するはずだった既存の営業マンが、売らなかったんです。


なぜ売らなかったのか

表面的な理由は「既存の顧客対応で忙しい」でした。

でも本音は違っていたと思います。
「自分には関係ない」という感覚だったんだと思います。

「なぜ自分がこれを売るのか」が、営業メンバーに一切認識されていなかった。

「儲かりそうだから始めた」という経営側の論理は、それ以上のメッセージとして表現されませんでした。

新規事業としての社会的な意義も、顧客の課題を解決するという使命感も、何もなかった。

そもそも既存事業の通信回線・端末販売で日々忙しく動いている営業マンが、なぜ見慣れない新商材を、慣れない売り方で売らなければならないのか。

その理由が、誰にも示されていなかったんです。


引き抜いたキーマンも、チームから外れた

さらに、競合から引き抜いたキーマンも、結果を出せずにチームから外れました。

その人がやったのは、前職のビジネスモデルを真似ただけだったからです。
パッケージもプライシングも忠実に真似をした。いや、それ以上にした。

しかし、新しい組織特有のカルチャーを把握せず、
職場の営業マンとの関係性は希薄なまま、
組織の文化も理解できていなかった。

競合のマネをしただけの事業構想の中で、
その人がWhyを語ることはありませんでした。

常にHow、つまり「どうやるか」の話しかしませんでした。

結果として、PoC期間をもってこの事業は成立しないと判断され、ローンチにまで至りませんでした。


まとめ:Whyなき事業は、誰も動かない

この事例には、新規事業が失敗するパターンが凝縮されています。

市場環境は整っていました。
顧客課題も言語化できていた。
チームも優秀でした。
準備も整っていました。

それでも立ち上がらなかった。

なぜなら、事業を始めた理由とメッセージが「儲かりそうだから」だけだったからです。

使命に満ちたWhyがない事業は、現場に伝わりません。
伝わらなければ、動きません。
動かなければ、売上は上がりません。

どれだけ完璧な準備をしても、
Whyという土台がなければ、事業は機能しないんです。

競合が儲かっているからといって、
自社でも同じことができるわけではありません。

競合にはその事業を始めたWhyがある。
歴史があり、顧客との関係性があり、組織の文化がある。
そこを無視してビジネスモデルだけをコピーしても、同じ結果は出ません。

新規事業を始める前に、問うべきことがあります。

「なぜ、自分たちがこの事業をやるのか。」
「なぜ、自分たちの営業がこれを売るのか。」
「なぜ、顧客は競合ではなく自分たちから買うのか。」

この3つのWhyに答えられない新規事業は、どれだけ準備が整っても立ち上がりません。現場で何度もそれを見てきました。

最後までお読みいただきありがとうございます。

今後も新規事業の「成功・失敗」の経験談を発信していきます。

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