長崎ヴェルカ、CS連勝の裏側にある 「GM兄弟」と「2つの魂」の物語
Bリーグ 2025-26シーズン、チャンピオンシップ準々決勝ゲーム2。長崎ヴェルカが、アルバルク東京を40点差で破るという歴史的大勝を成し遂げました。この初CSでの勝利は、単なる連勝ではありません。そこには、クラブ創設から支えた選手の「二つの魂」と、歩む道の異なった「二人の兄弟」の物語が交錯していました。
選手になれなかった兄と、スターだった弟
この二つのクラブの対決を語る上で欠かせないのが、長崎ヴェルカ・伊藤拓摩GMと、アルバルク東京・伊藤大司GMによる「兄弟GM対決」でした。
二人の歩みは対照的です。
兄の背中を追い、弟の大司氏は、名門モントロス・クリスチャン高校からNCAAディビジョン1、ポートランド大学へと進み、帰国後、日本代表やアルバルク東京、北海道、滋賀でプレーしました。海外バスケ留学のパイオニアでした。
対して、高校から留学した兄の拓摩氏は、大学以降、選手としてのキャリアを歩むことはありませんでした。帰国後、トヨタ自動車に入社し、11年間、アルバルクにてアシスタントコーチ、ヘッドコーチ。HC退任後、再び海外に出て、Gリーグ等の裏方を経験しました。だからこそ彼は、プロバスケットボールを外からも内からも深く、そして誰よりも冷静に見続けられます。ヘッドコーチとGMが全くの別物だと言う事を肌で理解しています。
かつて兄が指揮を執り、弟が選手として一緒に戦った古巣のアルバルクを、兄がゼロから作り上げた新参者のヴェルカが、完膚なきまでに撃破しました。選手になれなかった兄が、エリート街道を歩んできた弟の壁を「知略」と「情熱」で打ち破ったその瞬間、Bリーグの10年の歴史に新たな1ページが刻まれたのでした。
この歴代的大差は、ヴェルカ経営者の兄が弟に、アルバルク改革必然のメッセージ、すなわち引導を渡した事になります。
2年続けてのCS大敗、ルカ・アド路線の限界が再び露呈しました。CSでプロの試合で40点差、この興行的大失態の全責任は、大司GMにあります。再び米国に渡り、GM業を基礎から学ぶべき時だと。
刻まれた「ヴェルカの遺伝子」
勝利の歓喜の中で、古くからのブースターの脳裏には、ある二人の日本人選手の姿が浮かんだはずです。5年前、創設時の共同キャプテン、狩俣昌也選手と高比良寛治選手です。
「ヴェルカスタイル」という言葉がまだ形を成していなかったB3時代、泥臭く、激しく、ひたむきに走るカルチャーを最初にコートで表現したのは、彼らでした。特に、長崎出身として「地元の顔」を背負い続けた高比良選手が、この最高の舞台にいないことに寂しさを覚えるファンは少なくないでしょう。

秋田ノーザンハピネッツHPより引用
「長崎の子どもたちをホームゲームへ招待するシート「HASITシート」など、地域創生を体現し続けた高比良選手の活動に賛同し、移籍後も長崎での社会貢献活動は引き続きサポートを行います」、昨年の移籍時に、クラブは発表しました。
今回のCSで終始見せた長崎の激しいプレッシャーと、一歩も引かない勝負強さの根底には、間違いなく彼らが植え付けた遺伝子が流れています。
秋田に移籍した高比良選手や、ゲーム2で3ポイントシュートを決めた今季で引退する狩俣選手が、必死に繋いできたバトンは、今、確実に次なるステージへと引き継がれました。ヴェルカの遺伝子たち、ヴェルカの組織風土が、常勝軍団を作り上げて行くでしょう。
結語 結実した「高田オーナーの志」
まさに下剋上。年商50兆円のトヨタ自動車を、年商約3000億円のジャパネットグループが見事に破りました。100倍以上の差がある長崎の地域産業が、その地に生まれた高田オーナーの強い情熱で、豊田章男オーナーを討ち破りました。
高田オーナーと伊藤拓摩GMが描いたスポーツエンタメで地方創生を、長崎に「理想のクラブ」をという構想に、創設メンバーが命を吹き込み、現在の最高のロスターがそれをさらなる高みへと進化させました。厳しくも素晴らしい道程でした。
「兄弟GM対決」「最高の兄弟喧嘩」というドラマチックな物語性と、去っていった戦友たちへの想い。それらすべてを飲み込んで、長崎ヴェルカはさらなる高みへと、熱く突き進みます。
この二戦の勝利は、長崎という地にバスケットボールの文化を根付かせたすべての人々に捧げられるべき、最高の恩返しとなったはずです。
長崎の皆様、誠におめでとうございます。ありがとうございました。
次もワクワク。
お読み頂き、誠にありがとうございます。
