喫茶店で座席を奪われた休日の朝
モーニングをしようと、最寄り駅の喫茶店に足を運んだ。
朝から店内は賑わっていた。
ボックス席は満員で、
カウンター席がひとつ空いていたので、そこに腰を下ろす。
若い大学生くらいのバイトの子が、懸命にホールを走り回っている。
注文、配膳、レジ。
すべてを一人で回しているように見えた。
明らかに手が足りていない。
店内のざわつきは、そのまま業務の滞りの音でもあった。
しばらくしてから、水とメニューが運ばれてきた。
ピザトーストと本日のコーヒーにしようと決め、手を挙げる。
しかし、なかなか来ない。
視界の端で、足を組んだ男性客が店員に向かって
「お兄さん、コーヒーまだ?」と催促しているのが見える。
やっと注文を取りに来た店員に、ピザトーストとコーヒーを頼んだ。
どう考えても提供には時間がかかりそうだったので、
「少し席を外します」と伝え、御手洗いに向かった。
御手洗いは店の外にあった。
用を済ませて席に戻ると、そこに見慣れない背中があった。
私が座っていた席に、中年の男性が座っている。
机の上にはキャップが置かれていた。
一瞬、状況が理解できずに立ち尽くす。
「あの、そこ私の席なんですけども。」
そう声をかけると、近くにいた店員も「そこ、座ってます。」と言った。
中年の男性は少し驚いた顔をしたが、席を立とうとしない。
仕方なく、私は隣の席に座り、
机に置かれていたキャップを手に取って男性に渡した。
飲食店の机に帽子を置くという感覚にも、軽い違和感があった。
すると男性は、ぽつりと「3人来ます」と言った。
それは、私に言うことだろうか、と思った。
ほどなくして、中年のカップルがやってきた。
そして、彼が確保していたらしい二つの席に、
何の躊躇もなく座った。
男性は何も言わず、ただそこにいるだけだった。
結局、そのあとも彼の「3人」は揃わなかった。
やがて、ピザトーストとコーヒーが運ばれてきた。
待たされた分だけ味わう余裕もなく、
私はそれをぱくっと平らげ、急いで会計を済ませた。
店を出ながら、妙な疲労感が残っていた。
席を奪われた、という出来事そのものよりも、
「当たり前」が共有されていない空間に身を置いたことの消耗だったのだと思う。
荷物と口を付けていないコップが置いてある席に、
【普通】座るだろうか?
店員さんも人数を確認して席まで案内すれば良かったのではないだろうか?
休日の喫茶店の朝は、
本来もっと静かで、優雅で、均質な時間が流れているはずだったのだが。
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