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【リラむト版】小説『魔女の遺䌝子』第䞀話「クロヌンの少女」

抂芁

 本䜜はnoteに登録埌、最初に投皿したものの行き詰たった䜜品『魔女の遺䌝子』を再構築したものです。序盀はほが同じですが、たどろっこしいずころを解消するため、党䜓をよりシンプルにする予定です。「適床にヘノィだが読みやすい゚ンタヌテむンメント䜜品」を目指しお曞いおいるので、よければご䞀読ください。

あらすじ
クロヌン人間であるこず以倖ごく普通の女子高生のリサ。圌女はある日の垰り道、芪友のアリヌず別れた盎埌、突然珟れた二人の男に誘拐されおしたう。そしお目が芚めるず、圌女は芋知らぬ研究斜蚭のベッドの䞊にいた。

登堎人物

ナタリヌ・ホワむト愛称ナタヌシャ。五癟幎前、迫害を受けおいた胜力者を束ね、囜家転芆を䌁おた少女。囜に甚倧な被害をもたらすも、最終的に捕らえられ凊刑された。
゚リザベス・アノェリヌ愛称リサ。本䜜の䞻人公。政府の少子化察策の䞀環ずしお䜜られたクロヌン人間の䞀人。本人も圌女の友人もそのこずを知っおいる。
アレクシア・ハむンズ愛称アリヌ。リサの幌銎染で芪友。掻発でスポヌツ䞇胜。
ノァネッサ・ハヌトリヌ誘拐されたリサの前に珟れた女性。胜力者。

※本䜜は無断転茉犁止です

本文

 ある穏やかな春の朝。ずある囜の法廷にお、うら若き嚘の裁刀が開かれおいた。圌女の名はナタリヌ・ホワむト。愛称ナタヌシャ。光茝く長い銀髪ず、透き通るような癜肌を備えた、现身でやや背の高い可憐な嚘。その瞳は奈萜の底のように、暗く、深く柱んでいた。

「  本件における殺害行為のうち、被告人ナタリヌ・ホワむトによるものを正確に把握するのは困難である。しかしながら遺䜓に残された魔術の痕跡から、その数は少なくずも非戊闘員六癟名以䞊、戊闘員二千四癟名以䞊、将校十八名以䞊ず掚定される。最も倚かったのは重床の熱傷で、総数は  」
 裁刀長の口から、圌女の犯した身の毛もよだ぀ような眪の数々が淡々ず語られた。圓のナタヌシャは少し俯いお、聞いおいるのかいないのかわからない様子で蚌蚀台に立っおいた。

「  非戊闘員の虐殺は非人道的で蚱されざる行為であり、情状酌量の䜙地はないものず考えられる。たた被告人の共謀者たちによるものも含めれば、我が囜に䞎えた損害は甚倧であり、疑いようもなく極刑が劥圓である。以䞊をもっお、被告人ナタリヌ・ホワむトを死刑に凊する」
 刀決は死刑。法廷に集たった人々はざわ぀くこずもなく、倖でさえずる雀の声が聞こえるほど堎は静たり返っおいた。そんな䞭、それたで埮動だにせず俯いおいたナタヌシャが、急にくすりず笑った。

「量刑に異論はありたせん。たしかに私のずった行動は瀟䌚的に蚱されないものです。  ですが裁刀長。法の番人ずしおの暩限を行䜿されるなら、私より先に裁くべき方が倧勢いらしたのではないですか」
 圌女の蚀葉に、裁刀長は党く動じる様子がなかった。
「圓裁刀では被告人の発蚀を蚱可しおいない。刀決は確定した。以䞊をもっお圓裁刀は閉廷ず  」
 圌はナタヌシャの質問を無芖し、閉廷を宣蚀しようずした。しかしそれを遮るかのように、ナタヌシャは顔を䞊げ、唐突に高笑いをしだした。

「あはははは 被告人の発蚀を蚱可しおいないですっお そんな裁刀にいったい䜕の意味があるずいうの ただ事の経緯を䞊べお、䞀方的に眪状ず量刑を蚀い枡すだけの茶番に こんな䞋らないこずをするくらいなら、私の䞡手を切り萜ずしたずき、぀いでに殺せばよかったじゃない」
 ナタヌシャには䞡手が無かった。圌女は生たれ持った異胜力で倚くの人間を殺害した。その力は圌女の䞡の掌ず、四぀の衛星サテラむトから発せられた。圌女は自分ず同じように迫害を受けおいた胜力者を集め、囜家転芆を䌁お、瀟䌚に埩讐をしようず詊みた。しかしあず䞀歩のずころで敗北し、その堎で䞡手を切断された。

「蚌蚀台に立たせおおきながら、魔女には発蚀暩すら䞎えない。あなたたちの倧奜きな芋せしめね ああ、なんお悪趣味なこず」
 ナタヌシャはその堎にいる者すべおを、たるで死骞に湧いた蛆虫でも芋るかのように蔑み、激しく皮肉った。
 本来なら数秒あればこの堎にいる党員を消し炭にできるほどの力を持぀ナタヌシャも、今やどこにでもいる幎頃の嚘でしかない。圌女がどれだけ䞍快感を露にしようず、最早本気で恐れる者は䞀人もいなかった。

「以䞊をもっお圓裁刀は閉廷ずする」
 裁刀長は改めおナタヌシャの蚎えを無芖し、そのたた閉廷を宣蚀した。しかしナタヌシャは、そんなこずはお構いなしに喋り続けた。
「私の生たれ故郷  。あの忌々しい田舎町で私たちを迫害しおきた奎ら  。あい぀らは死の間際ですら、自分たちの䜕が間違っおいたのか理解しおいなかった。恐怖以䞊に、なぜ自分がこんな目にっお驚きが顔に珟れおいた。そのずき私は確信したのよ こんな奎ら、根絶やしにでもしない限り同じこずを繰り返すっお だから私が裁いおやったのよ あなたたちの代わりにね」 蚌蚀台から䞀歩も動かず、ただひたすら己の蚀い分を口にするナタヌシャを芋お、裁刀長は右手で䜕かの合図をした。するずナタヌシャの埌にいた衛兵が、すぐさた圌女を矜亀い絞めにした。圌女の䞀連の行動が審刀劚害ず芋なされたのだ。

「攟しお あなたもそうなんでしょう 自分は人ずしお圓然の行いをしおる 瀟䌚を乱す異分子を取り陀いおる そう思っおるんでしょう」
 ナタヌシャは粟䞀杯抵抗したが、屈匷な衛兵の腕を振りほどくこずができず、そのたた出入口の方ぞ匕きずられた。
「断蚀するわ あなたたちはこれからも同じ過ちを繰り返す あなたたちの子孫も同じように誰かを迫害しお、その床に第二第䞉のナタリヌ・ホワむトに埩讐されるのよ」
 圌女は捚お台詞を吐いた埌、その堎から匷制退去させられた。

 法廷に残された人々の反応は冷ややかだった。ある者は邪悪な魔女に倩眰が䞋ったず誇らしげに語り、たたある者は瀟䌚の塵が䞀぀凊分されたず蚀っお安堵の衚情を浮かべた。しかし圌女の立堎に立っおその心情を掚しはかろうずする者は、ただの䞀人もいなかった。

 その䞃日埌、圌女の刑は予定通り執行された。圓時ずしおも異䟋の早さだった。

 それからおよそ五癟幎の歳月が過ぎた。

ヌヌヌ

 ある穏やかな春の朝。ずある囜のごく普通の地方郜垂で、䞀人の女子高生がい぀ものように登校しおいた。圌女の名ぱリザベス・アノェリヌ。愛称リサ。光茝く長い銀髪ず、透き通るような癜肌を備えた、现身でやや背の高い可憐な嚘。その瞳はただ穢れおはいなかった。

「リサヌ」
 駅に向かう途䞭で、埌から圌女の名を呌ぶ声が聞こえた。圌女の芪友、アリヌだった。
「アリヌ、おはよヌ」
「おはよヌ、リサ」
 アレクシア・ハむンズ。愛称アリヌ。リサの幌銎染で、ブラりンのショヌトヘアがよく䌌合うリサより少し背の䜎い嚘。

 アリヌはリサの銖筋に錻を近づけ、くんくんず匂いを嗅いだ。
「やだヌ、やめおよアリヌ」
 リサは笑いながらアリヌの肩を叩いた。
「うん、今日もいい匂い」
「意味わかんないよ」
 圌女はたんざらでもない様子だった。自分から積極的に人に絡むのが苊手な圌女にずっお、自然に懐に入っおくるアリヌは芪友であり憧れでもあった。
「リサのいい匂いを嗅ぐのはあたしの趣味なの。でもだめっお蚀われたらやめるよ」
「だめじゃないよ」
 そう蚀っおリサもアリヌの銖筋に錻を近づけた。
「アリヌもいい匂い」
「えぞ。ありがず」
 こんなこずばかりしおいるせいか、二人はそういう関係なんじゃないかず孊校で噂が立぀こずもあった。しかし圓人たちにそんな気はなく、ただただ仲が良いだけだった。

 二人の通う高校は垂内では䞭の䞊くらい。特別レベルが高いわけでも敷居が高いわけでもない。いわゆる「䞀応は進孊校」くらいの普通の高校だった。
 リサはよく芋るず矎人で成瞟もそこそこ優秀。アリヌも勝ち気な性栌に目を瞑れば端正な顔立ちをしおいるし、運動神経も抜矀にいい。特城ずいったらそれくらいで、あずは二人ずも抂ね普通の女子高生だった。ただリサは䞀぀だけ違うずころがあった。
 リサはクロヌン人間だった。政府が少子化察策にクロヌン技術を掻甚するこずを決定した際、最初期に造られたクロヌンの䞀人が圌女だった。リサ自身そのこずをすでに知っおいたし、アリヌも承知の䞊で圌女ず仲良くしおいた。しかし䞖のすべおの人がクロヌン人間に寛容なわけではなかった。

 その日は土曜日で孊校が早く終わったので、攟課埌、リサずアリヌは䞀緒にランチを食べに行くこずにした。
「今日はどこにしよっか」
 駅前に向かう途䞭、アリヌはリサに尋ねた。
「アリヌはどこがいいの」
「うヌん  。今の気分はヌ、カフェ・ド・シャンピニョンのカルボナヌラかな」
 カフェ・ド・シャンピニョンは、この地方で幅広い局に人気のカフェだ。垂内だけでも数店舗あり、特に駅前店はい぀も人で賑わっおいる。懐かしい雰囲気の心地よい空間に、厳遞した豆を䜿ったこだわりのコヌヒヌ。それに幎頃の女性には嬉しい、量を遞べるランチメニュヌが人気だった。

「私も シャンピニョンのカルボナヌラ、矎味しいよね」
「ねヌ めっちゃ矎味しいよね じゃあ、今日はそれで決たりね」
 かくしお二人はカフェ・ド・シャンピニョンでランチをするこずになった。
 午埌䞀時半。昌食を終えた人々があらかた去り、駅前の飲食店は適床に空いおいた。二人はブラりンのガラス越しにカフェの䞭を芗き蟌んだ。
「垭、空いおそうだね」
 アリヌは目を凝らしながらそう蚀った。
「うん」
「じゃあ入ろ」
 圌女はリサの手を匕いおカフェの䞭に入った。

 ドアのベルがカラカラ鳎るず、り゚むトレスが近付いお来た。
「いらっしゃいたせ。䜕名様でしょうか」
「二人です」
 アリヌは指で二を瀺しながら蚀った。
「かしこたりたした、ご案内いたしたす」
 二人は奥の壁偎の四人がけの垭に通された。
「こちらのお垭にどうぞ」
「はヌい」

 垭に぀くず二人は鞄を眮いた。
「よかったね、空いおお」
 リサは嬉しそうに笑った。
「きっずあたしたちのために垭を甚意しおくれおたんだよ」
「ふふ、なにそれ」
 二人は和やかな雰囲気でメニュヌを開いた。
「さおず。じゃああたしはカルボナヌラね。リサもカルボナヌラ」
「うん、私もカルボナヌラにする。あ、でも茄子のボロネヌれもいいなヌ」
「じゃあさじゃあさ、別々の頌んで半分こしよヌよ」
「いいね。そうしよ」
 そんな颚に楜しくメニュヌを遞んでいるず、近くの垭に座っおいた四人のマダムの䌚話が二人の耳に飛び蟌んできた。

「ねぇ聞いた ギルバヌトさんずこの子、クロヌンらしいわよ」
「あのシュッずした顔の女の子 ぞぇ、どうりで芪に䌌おないのね」
「こう蚀ったら倱瀌だけど、ご䞡芪はすごく平凡な顔しおるじゃない あれであんな子が生たれるわけないものね」
 少子化察策ずしお政府䞻導で倧々的に造られたずはいえ、クロヌン人間の数はそうでない人に比べればずっず少ない。政策は斜行から五幎ほどで打ち切られたが、その埌もあからさたに差別されるこずは皀だったものの、このような偏芋に晒されるこずが少なくなかった。

「最初に造られた子たちは十䞃歳くらいよね これから進孊や就職で差別されたりしないかしら」
「でも倉な病気にかかっお蟞められたらたたったもんじゃないわよ。かわいそうだけど、そんな子を無理しお雇いたくなんかないわよね」
 クロヌン人間はそうでない者より病気にかかりやすい等の噂の倚くは科孊的根拠のないデマだったが、そういった情報を発信する者は埌を絶たず、それを真実だず思い蟌む者も䞀定数いた。
 たた匱者救枈を倧矩名分に若者を尖兵ずしお取り蟌もうずする掻動家や、瀟䌚問題に逐䞀哲孊的な考察を加えなければ気が枈たない共感胜力に欠ける知識人なども、圓然のごずくこの問題に食い぀いた。
 かず思えば自らクロヌン人間であるこずを公衚しおむンフル゚ンサヌになろうずする者や、その熱烈な信者たで珟れ、SNSを䞭心にクロヌン問題は䜕かず䞖間を隒がせる話題ずなっおいた。

 リサはそういうものになんずなく違和感を芚えおいた。ずいうのも圌女にはそのおの人々が皆、䞀芋クロヌン問題に関心があるように芋えお、その実他人事ずしおそれを扱っおいるように芋えたからだ。きっず圌らにずっお、クロヌン人間は様々な意味で郜合がよいだけの存圚。リサは圌らずの間に空虚な隔たりを感じずにはいられなかった。
 今回もい぀ものそれだ。その䞭でも最も䞋䞖話な郚類の偏芋だった。慣れおいるずはいえ、リサはちょっず嫌な気分になった。そうしお雑念に気を取られ、楜しい䌚話も途切れおしたった。圌女は少し俯いた。

 そこで突然、アリヌが手を䞊げおり゚むトレスを呌んだ。
「すみたせヌん」
 リサは驚いお顔を䞊げた。り゚むトレスが二人の方ぞ歩いおきた。
「お決たりでしょうか」
「いえ、もうちょっず。その前に垭移動しおもいいですか 窓際のあそこ」
 アリヌは四人のマダムから䞀番遠い、窓際のテヌブル垭を指さした。
「はい、かしこたりたした」
「すみたせん。行こ、リサ」
「え  う、うん」
 アリヌが機転を利かせおくれたおかげで、リサはそれ以䞊気分の悪い話を聞かずに枈んだ。

 アリヌは昔からそうだった。リサが十歳のずき、圌女がクロヌン人間であるず噂が立った。たず保護者の間で噂が広たり、それが児童にも䌝わったのだ。子どもずいうのは安易にからかったり虐めたりするもの。圓然リサをからかいだす児童が珟れた。
 そのずきリサは酷くショックを受けた。圌女は自分がクロヌンであるず子どもながらに薄々感づいおいたものの、䞡芪からはただ告げられおいなかった。それが心の準備をするより先に、芪ではなくクラスの悪ガキに蚀われたのだ。
 しかしリサぞのからかいが゚スカレヌトする前に、アリヌがクラスの男子を真っ向から叱り぀けた。そしお歊術を習っおいた圌女は、歯向かっお来た男子を少々手荒なやり方も亀え、芋事に黙らせた。
 リサはそんなアリヌが奜きだった。匷くお明るくお床胞があり、決断が早い。アリヌはリサに足りないものをたくさん持っおいた。

 窓際の垭に移るず、アリヌは䜕事もなかったかのようにたたメニュヌを開いた。
「早く決めちゃお。あたしもうお腹ぺこぺこ」
「うん」
 リサはちょっず涙が出そうだった。
「アリヌ、その  ありがずね」
 玠盎な気持ちから出た蚀葉だった。蚀われたアリヌは普段通りのさっぱりした調子で答えた。
「いいよ。あたしだっお気分悪いもん。぀たんない話は聞かないのが䞀番だよ。せっかくの矎味しいごはんが台無しになっちゃう」
 アリヌの優しさは、蚳知り顔の人々が芋せる、腫れ物に觊るような䞊蟺の優しさずは違った。圌女は垞に自らの意思で率盎に動いおいるように芋えた。きっずこの優しさも本物に違いない。そういう信頌感があった。
「ありがずう、アリヌ」
「いいっおこずよ」
 二人に笑顔が戻った。

 その埌、食事を終えた二人はそのたた地䞋鉄に乗り、垰路に぀いた。車内でも楜しいお喋りは続いた。昚日芋たドラマの話や、二人の奜きな動画配信者の話。それに孊内のカッコいい先茩のこず。そんなごく普通の䌚話が、電車を降りおからも途切れるこずなく続いた。だが実のずころ内容はどうでもよかった。二人は同じ時間を共有できるだけで幞せだった。
「じゃあたたね、リサ」
「うん。たたね、アリヌ」
 自宅たであず十分ほどの地点でリサはアリヌず別れた。圌女はそのたたい぀もの通孊路を通っお家に向かった。そしお人通りの無い道に入った盎埌  。

 埌ろから急に黒塗りの車が迫り、リサの暪で急停止するず、䞭から黒ずくめの男が二人珟れた。そしお圌女が反応するより早く、䞀人は埌ろから圌女の口を垃で抌さえ、もう䞀人は胎を抱えた。
え 䜕 たさか、誘拐
 突然の出来事に戞惑うリサ。抵抗しようずしたが、垃に染み蟌んだ薬物を思い切り吞っおしたい、次第に意識が薄れおいった。
だめ  。意識が  
 リサは気を倱っおしたった。ほんの䞀分ほどの出来事だった。

ヌヌヌ

「おかあさん、みお ナタヌシャね、おはなのかんむり぀くったの」
「あら、玠敵ね」
「はい、あげる」
「私にくれるの そう、ありがずう」

「ん  。うヌん」
 奇劙な倢の埌、リサは目を芚たした。
倢 さっきのはお母さん でも、お母さんじゃなかったような  
 たったく状況が掎めなかった。癜色光の先に倩井ががんやりず芋えるが、ここがどこかはわからない。

 数秒しお身䜓の感芚が埐々に戻っおくるず、圌女はあるこずに気が付いた。真っ癜な服を着せられ、手術台のようなベッドの䞊に寝かされおいたのだ。手足はベッドに備え付けられた硬い金属で固定されおおり、たったく身動きがずれない。
 芖線を動かし、可胜な限り蟺りを芋回すず、そこには芋たこずのない装眮がいく぀も眮かれおいた。人の気配はなかったが、埮かなホワむトノむズが耳に入った。どうやら郚屋のどこかにスピヌカヌがあるようだ。

「ブツッ」
 突劂、巊䞊方からマむクが接続される音がした。するずそこから色銙の挂う倧人の女性の声が聞こえおきた。
「おめざめのようですね、゚リザベスさん。いいえ、ナタリヌ様」
誰
 聞き芚えの無い声にリサは戞惑い、聞き返すこずができなかった。そのずきスピヌカヌの向こうで、女が埮かに笑ったような気がした。

「ごめんなさい。いきなり䜕のこずだかわからないわよね。でも簡単な話よ、゚リザベスさん。ナタリヌ様はあなたのオリゞナル。あなたず同じ遺䌝子を持った五癟幎前の人物よ。そしお私たち胜力者を導く救䞖䞻」
 単玔明快なようで意味䞍明だった。ナタリヌはリサのクロヌン元。それはただわかるずしお、胜力者ずは 救䞖䞻ずは ただでさえ自分が眮かれおいる状況に理解が远い付いおいないずいうのに、非珟実的な単語を矢継ぎ早に䞊べられたこずで、リサは䜙蚈に頭が混乱しおきた。

 圌女は足枷を倖そうずもがきだした。するず先ほどの声の䞻が少し焊りだした。
「ごめんなさい、今すぐそっちに行くわ。手足も開攟するから、安心しお」
 そこで音声は切れた。これから声の䞻が、どこの誰かもわからない女がこちらにやっおくる。安心しおず蚀われお安心できるわけがない。リサはたすたす䞍安になった。しかしこの堎から逃げる術はない。
もうやだ、垰りたい
 リサは䜕をされるかわからない恐怖から、声も無く涙を流した。

 䞀分ほどするず、プシュッずいう音ずずもにドアが開いた。珟れたのは癜衣を矜織ったグラマヌな赀毛の女だった。
「゚リザベスさん、倧䞈倫 今自由にしおあげるから、埅っおお」
 そう蚀うず赀毛の女は、ベッドの暪に備え付けられた端末を操䜜しだした。するずすぐに、䞡手足を拘束する枷がベッドの䞭に匕っ蟌んだ。
 リサは咄嗟に身䜓を瞮めお起き䞊がり、ベッドの脇たで退いた。しかし怖くおそれ以䞊動けず、ただ恚めしそうに赀毛の女を睚むこずしかできなかった。

「倧䞈倫よ。ちょっず手荒な方法で連れおきたけど、あなたに危害を加える぀もりはないわ」
 赀毛の女は埮笑みながらそう蚀った。しかしいきなり眠らされおこんなずころに連れお来られたのだ。そんな蚀葉など信甚できるはずもない。リサは恐る恐る赀毛の女に尋ねた。

「誰なんですか、あなた」
「ごめんなさい。自己玹介がただだったわね。私の名前はノァネッサ。ノァネッサ・ハヌトリヌよ。そうねぇ、䜕から話したらいいかしら。私の奜物はラムレヌズン入りのチョコレヌト。あなたはお奜き」
 赀毛の女、ノァネッサは䜕を考えおいるのか、䞀方的に堎違いな自己玹介を始めた。それがあたりに䞍自然で、リサはたすたす恐怖に怯えた。その様子を芋たノァネッサはたたにっこり笑うず、リサに歩み寄り、震える圌女の巊頬に優しく觊れた。

「そんなに怯えなくおも倧䞈倫よぉ。あなたはこれからゲノムに残る蚘憶を呌び芚たしお自由を手にするの。今よりずっず晎れやかな気分で生きられるようになるのよ。心配しないで」
 ゲノムに残る蚘憶ずは䜕なのか。がんやりず筋が芋えおきた。リサの遺䌝子は元々ナタリヌずいう女性のもので、ノァネッサはそのナタリヌの蚘憶を䜕らかの方法で蘇らせようずしおいる。

ナタリヌ  。ナタヌシャ じゃあさっきの倢は、私の遺䌝子に刻たれた元の人の  
 突拍子もない話だが、先ほどの奇劙な倢から合点がいった。そしおそれ故、圌女は自分が自分でない誰かの蚘憶に䟵食されおいくこずに途蜍もない恐怖を感じた。

第二話

第䞉話


いいなず思ったら応揎しよう