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「(新版)蒟蒻(こんにゃく)の歴史と化学」 ~伝統食材の奥深いメカニズムに迫る~

割引あり

リニューアルに際して

2019年に「蒟蒻の歴史と化学」を出版(Kindle)してから約6年が経過しました。
その間、蒟蒻の研究・調査が進み、コンニャクへの理解も深まりました。
そのため、「蒟蒻の歴史と化学」を大幅に加筆・修正し、新刊として出すことにしました。
リニューアル版をnoteで出すのには理由があります。
noteは記事への情報追加が手軽なため、改訂の手間が省けます。購入頂いた方にも負担がありませんし、更新の通知も出来ます。
リニューアルにあたって5章と6章を追加、コラムも4つ追加しました。1章(蒟蒻とは何か?)と3章(蒟蒻のゲル化)も大幅に加筆しています。
*他の章やコラムも加筆・修正しています。
文字数は初版の約2.5倍になりました。
それでは、面白くも不思議な蒟蒻の世界をお楽しみください!


はじめに

蒟蒻(こんにゃく)とは何なのでしょうか?
いつから食べられて、どのように作られているのでしょうか。
普段、料理に添えられた蒟蒻を見ても、そこまで気にする人は多くないと思います。
日常的に食べられている蒟蒻ですが、その化学構造や歴史には謎が多く、意外と知られていません。

私は高分子化学(特にゲル)を専門的に研究しており、ハイドロゲル(水を含んだゲル)の一種である蒟蒻についても研究を行っています。
その独特の触感と性質は、数あるハイドロゲルの中でも異彩を放っています。
そしてその性質は食品だけでなく、医療や工業材料としても有用で、様々な可能性を秘めています。

本書は、私が蒟蒻について調査・研究して得られた事をまとめたものです。
蒟蒻の歴史や生態、化学的性質、どんな応用がされているのかなど、様々な視点からアプローチしています。
蒟蒻のゲル化について述べた3章では、そもそもゲルとはどんなものなのか、基本的な事から解説しています。専門用語が多くなっていますが、難しいと思ったら飛ばして頂いて問題ありません。
どこからでも読めるようにしたつもりですので、興味のあるところから読んで頂ければと思います(3章は2章を読んでからの方が分かり易いです)。
4章の応用編では、私が蒟蒻を使って挑戦している研究についても詳しく触れました。

帰宅後や休日に実験・文献調査をしながら執筆するのは大変でしたが、とても楽しいものでした。楽しいからこそ続ける事が出来たんだと思います。
本書を通じて、蒟蒻に秘められた謎とその面白さを少しでも知って頂けると幸いです。

1.蒟蒻(こんにゃく)とは何か?

1-1 蒟蒻の歴史

市販の板コンニャク。日本人にはお馴染みの姿です。

おでん、田楽、筑前煮、精進料理。
日本人にはお馴染みの食材、蒟蒻。
実は、蒟蒻は多くの食材とは一線を画す、変わった食べ物なんです。
消化出来ない上に味付けは難しい、ほぼ食感を楽しむだけの存在です。
強いて言えば、ダイエット食でしょうか?
そして、多くの食品が酸性の中蒟蒻は珍しいアルカリ性食品、しかもpH12という極めて高いアルカリ性を示します
市販されている板コンニャクには水も入っていますが、その水は強アルカリ性です。そのため、開封後もその水と一緒に冷蔵庫に保管していれば長持ちします。少なくとも一ヶ月は大丈夫です。
とても食べ物とは思えません。日常的に食べているのは日本だけです。

そんな蒟蒻ですが、日本には5~7世紀頃に中国から伝わったと言われています。
ただし、詳しいことは分かっていません。長く精進料理として食されてきたため、仏教と共に伝来したのかもしれません。

私は7世紀頃に遣隋使もしくは遣唐使によってもたらされたと考えています(コラム①参照)。

蒟蒻の起源は中国ではないかと考えられています。最古の記録は中国の『三都賦(さんとのふ)』という書物。蒟蒻の作り方と食べ方が記されています。作り方は現代とほとんど変わりません。酢をつけて食べると記されています。

しかし、中国における蒟蒻の記録はそれだけで、しかも今の中国には蒟蒻という文字がありません。その表記自体が既に失われています。[1]

ちなみに、『三都賦』は紀元前3世紀頃の文学者、左思(さし)の代表作で、三国時代の各国(魏・呉・蜀)首都の様子を描いています。「洛陽の紙価を高からしむ」という故事の元となっていることで有名です。

司馬遼太郎は「街道をゆく」の中で、蒟蒻について触れています。[1]

それによると、蒟蒻は四川省の灌(かん)県で、今でも作られているようです。灌県は錦江の上流、山地の麓にあり、司馬遼太郎はそこを訪れたものの、「季節ではない」と言われ、蒟蒻は食べられなかったそうです。灌県では芋から蒟蒻を作っているため、日本のように精製した粉にして保存し、一年中食べられるようにはなっていないのでしょう(後述)。

そこでは、蒟蒻を磨芋豆腐(モーユードウフ)と呼んでいるそうです。

磨芋豆腐(https://www.88tph.com/sucai/12693156.html)

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