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5分で知る高知麻紙|絵の話


さくっと知る、画材の話。
今回は『高知麻紙こうちまし』。


また「紙」の話…ヤヤ地味!と思われたそこの御仁、

紙は絵にとっての世界です('∀)



前回は「日本画」を作り上げたと言っても過言ではない雲肌麻紙の熱いお話でした。
そこへ正面から挑んだ四国の雄・高知麻紙。
これを語らずして麻紙の話は終われません(*'ω)



高知麻紙とは


『雲肌』をもって、麻紙復興を遂げた岩野平三郎製紙所。
日本絵画を絹から紙へと推し進めるその流れに加わるように、高知からも新たな麻紙が誕生します。


漉いたのは尾崎金俊さん。

カゲロウの羽のように薄い典具帖紙てんぐじょうしを代々漉く家が、一転、厚く大判の麻紙に挑まれました。

戦後、産業の変化がある中、「画用も」とリクエストをうけたのがきっかけだそうです。

雲肌同様、使い手と作り手の結び付きが新たなものが生み出していく。
ものづくりの面白いところです。

製法が失われていた麻紙。
尾崎さんも初の試み。
苦心の末、楮を合わせる等の工夫を経て大判の製紙に成功しました。

また改良の末、安価な供給も可能に。
当時は「雲肌一強」のところ、次第に品質と価格の評判が広まり、今では押しも押されぬ一品として知られています。



特筆ポイント


主原料は苧麻とこうぞ
手漉きを機械に換え、表はキャンバスのよう、裏は味わいある凹凸が特徴的な紙肌です。

左が表、右が裏


特筆すべきは、最大で3✕4mというサイズです。

和紙寸法は様々ですが、襖サイズ(0.9✕1.8m)、や0.6✕0.9mくらいが定番。
大きな紙は接いでこしらえるのが当たり前だった時代、このサイズが登場した驚きはいかほどだったでしょう。


この大きさと、雲肌麻紙よりもリーズナブルな点が重宝され、近年は店頭品切れが多数あるほどの人気を博しています。

2026年現在、襖サイズ価格だと、雲肌7千円、高知5千円くらいですね
この15年で2千円ほど上がった印象



高知麻紙と土佐麻紙


そんな高知麻紙、留意点が1つあります。
名称です。

尾崎製紙所で作られているのは『高知麻紙』。
他のメーカーさんからは『土佐麻紙』という商品も出ています。

ややこしいのは、以前、尾崎製紙所にも『土佐麻紙』があったこと。
『高知麻紙』の前身です。

機械漉きに切り替える前の、いわば元祖・高知麻紙が尾崎製紙所の『土佐麻紙』でした。
そうした経緯からか『高知麻紙(土佐麻紙)』とあったり、画材屋さんによっては慣習で「土佐麻紙」と呼んで「高知麻紙」を扱っていたりされるところもあるので、初見の方にはややこしいところだと思います。

私の手持ちの『土佐麻紙』と、尾崎製紙所さんの『高知麻紙』がこちら。

土佐麻紙
手前が表、奥が裏面
左が土佐、右が高知(いずれも表面)




昭和の復興から半世紀以上を経て、今では種類も豊富になりました。

白麻紙、吉祥麻紙、みやこ麻紙、野洲麻紙…


白麻紙2号
吉祥麻紙


産地・漉き方・材料、多様な麻紙を選べるようになったのは、岩野、尾崎両氏の研鑽と、それを継いだ方々の熱意あってこそ。

近代工芸研究者の柳橋真氏は、昭和55年の美術手帖にこうした文章を寄せています。

どちらかといえば厚紙を得意とする越前和紙の紙漉きと、(中略) 和紙の中でもとりわけ薄い紙を漉くことを特色とする高知県伊予町の紙漉きが同じ道を目指し、たがいに自分の特色をいかして切磋し合って向上している現状は、日本画の世界にとってぜいたくといえるほどに恵まれた状態ともいえよう。

柳橋誠『日本画と和紙ー手漉きの意味』
美術手帖464号,美術出版社,1980





高知麻紙を使った作品


私も多数の作品に使用しています。

裏面を使うことが多いですね。

裏面(右)



裏面づかいは「邪道」なところもありますが、いかんせんものづくりに於いて、それは二の次となるのもまた事実('∀)

尾崎製紙所さんHPにも「その凹凸の風合いを生かし、あえて裏をご使用される作家さんもおられます。」と記載。
実際、そう珍しくないんですよね。


今年描いたこちらもその1つです。

『花の影』


この背景のもやもやっとした雰囲気こそ、高知麻紙の紙肌を活かしたもの。


凹凸にひっかけるようにして絵具をのせていきます


この凹凸があることで、微妙なムラが生まれます。
それを利用しながら色を重ねていく。



こちらも同様ですね。
引っ掛けたり、隙間に押し込んだりして色を詰めていく。


私としましては

高知麻紙の裏面こそ唯一無二!


の感がありまして、当初どこまで意図されていたかはわかりませんが、描き手からすると他の和紙ではちょっと替えのきかない特徴だと思っています(*'ω)


表面に描いた最近の作品はこちら。

『遠いおもいで』


薄塗りすると、独特のメッシュな感じが見て取れます。

ななめに細かく走るメッシュ感


厚塗りすると隠れますが、さらり仕上げる分には結構残る。
水少なめで描くと、プツプツと途切れるようなかすれが出る。
それもまた、この紙の描き味だと思います。




思えば高知麻紙は、社寺修復の見取図でもお世話になりました。
大きな一枚紙というと、雲肌麻紙か高知麻紙になるところは否めません。

ただ、昨今の入手のしづらさ、原材料・人手不足など考えますと、ただ買えば良いというものでもないような気がしています。

「必要とする時に必要な分を買う」
「材料を活かした描き方をする」


雲肌麻紙、高知麻紙。

この2つの麻紙を使う時、どこかものづくりの情熱に触れる想いがします。
それに応える使い方をしたいと、そう思います。

紙は「基底材」、絵にとって土台となるもの。

その基底材が支えているのは、絵具ばかりではありません。






㈱尾﨑製紙所


㈲画箋堂

画箋堂さん、麻紙製造の工程写真が見やすいです(*'ω)




おまけ

雲肌と高知の熱い2ショット(*'ω)


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