人知れず頑張る「誰か」が支える、「仕組みの歪み」
先月まで、介護施設に勤めていた。
リネンを扱う外部業者として、シーツ交換や掃除などをしていた。
リネン回収業務
入居者さんの居室のシーツ交換で取り替えた、
使用済みのシーツ・枕カバー・布団カバー・防水シートは
それぞれ、種類ごとに色の違うリネン袋に入れて、袋を閉じ
それを、回収日まで、部屋の壁際に積んでおく。
回収は、水曜日と土曜日の、週に2回。

各階にも不潔リネンを入れる袋が置いてあり、そこからの回収作業も、私たちの日々の仕事。
朝一番に、各階の袋から回収して、仕分けをして、袋を閉じる。
それだけで、最低でも10分はかかる。
私たちの始業時刻は9:00。
手当は出ないが、私は、いつも、30分早出をして作業をしていた。
回収に間に合わせたい
ただ、問題があった。回収に来るのが早い。
私たちの本来の始業時刻の10分前に、取りに来てしまう。
それについて、不満を訴えても、私たちの上司は
「みんながどうして、そんなに土曜日の回収にこだわるのかわからない」と言う。
全部、回収してもらって、ただ、スッキリしたいくらいに思っているのだと思う。
誰も知らない「調整」
スペースが足りない
私たちが、回収に間に合わせたいのには、理由があった。
土曜日に残した分が、水曜日の回収時に、壁際に積みきれなくなってしまうからだ。
壁から崩れて落ちてきたり、通路にはみ出してしまい、通行や作業の邪魔になる。
閉じられていない袋
ついでに言わせてもらうと
職員さんが浴室で使うタオルが入った袋は、口がちゃんと閉じられていない。
そのままにしておくと、積み作業と回収に支障をきたすので、私たちが整え直していた。
畳まれていない袋
それから、リネンが回収された後に、次回用の回収袋が置かれる。
5枚ずつまとめて三つ折りに畳まれて、2カ所をビニール紐で結んである。それが、6束。
それを、棚に収まるように1枚1枚小さく折りたたむのが、私たちの仕事だった。
でも、時々、畳まれもせずボールのように丸められた状態で乾いた袋が、置かれることがあった。
その皺を、一枚一枚伸ばして何十枚も畳むのは、時間も掛かるし、すごく大変だった。
誰かが、自分の範囲の仕事を放棄して楽をしようとすれば、次の人に影響がある。
私たちが、そのままの状態で、タオル用の袋を施設の職員さんたちに渡せば、迷惑が掛かる。
私たちは、人知れず、
一連の作業の流れの「狭間」で、その詰まりを取り除くことをしていた。
問題を見える形に
始業時刻より早い回収作業に間に合うように無理をするから、不満がたまっていた。
だったら、無理をやめればいい。
そうすれば、どんなに回収が早くても関係ない。
回収を諦めれば、執着を手放せば、楽になれる。
元を正せば、施設側が、「リネンの量に見合った置き場所」を確保してないのが問題なのだ。
いっそ、その無理なことをやめて、混沌とした、その現場を見てもらえばよかった。
「目に見える形」にすることで、隠れていた問題が明らかになる。
私たちが、「何を防ごうとしていたのか」、私たちの上司も、施設側も、初めて知ることになる。
そうすれば、置き場を増やしてもらえたかもしれない。
回収の時間を「始業10分後」と、徹底してもらえたかもしれない。
初めから諦めて、自分たちで全て引き受けないで、
一度は、委ねてみてもよかったのではないか?
先が見通せるからといって、それを全部、自分で背負うことはないのだ。
その、無理をやめることで、全体で、仕組みを見直すきっかけが生まれたのかもしれない。
きっと世の中には、人知れず、仕組みの歪みを整えようとしている人が、たくさんいる。
そのような人たちが、無理をして、身体を壊したり、精神を病んだりしないことを、祈りたい。
