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【映画評】 『ドライブ・クレイジー:タイペイ・ミッション』

※後半にネタバレがあります。

 アメリカ麻薬取締局の捜査官ジョンは潜入捜査に失敗し、休暇を命じられる。週末旅行の名目で台北に向かうが、本当の目的は麻薬王クワンの尻尾を掴むことだった。そこで15年前に別れた恋人、ジョーイと再会。クワンの麻薬を運ぶ天才トランスポーターだった彼女は今、クワンの妻になっており、一人息子のレイモンドと暮らしている。ジョンの捜査はジョーイとレイモンドを巻き込みつつ、思わぬ方向へ進んで行く。

 ジョーイが運転技術を炸裂させて数々の危機を乗り越えるのかと思いきや、肝心な場面で守られるだけの存在になってしまう。ある場面では自由奔放で勝ち気、でも別の場面では非力で守られるだけの存在、というギャップ自体は人間の多面性として捉えられるけれど、一方で、冒頭で「天才的なドライブ・テクニックを持つ女性」と印象付けられているのに、それを発揮する機会がほとんどないのは映画的文法に沿っていないように思える。

 そもそもカーアクション自体が少ないので、タイトルに「ドライブ・クレイジー」を使うのは無理があると思う。もっとも原題は『Weekend in Taipei(直訳すると台北の週末)』なので、制作側は派手なカーアクションを謳っているわけではない。これは邦題の付け方の問題だと思う。くわえて日本の配給は「カーアクション」を強調していて、明らかに『ワイルド・スピード』シリーズの方向にミスディレクションしている。

 ジョーイのような「自由奔放で勝ち気な女性」は、リュック・ベッソンの常連とも言うべき女性キャラ。そしてアジアが舞台で、白人中年男性が主人公で、鍵を握るアジア人キャラは身内、という設定は『WASABI』と同じだ(ジョーイを見て同作の広末涼子を思い出した)。ベッソンはこういう設定が好きなのかなと思う。

 見せ方として面白かったのは、まず結果を見せておいて、後からその経緯が分かる、という語りが繰り返される点。冒頭のレストラン、盗まれた帳簿、そしてジョンとジョーイの関係がその手法で描かれる。ちなみにレストランでの格闘シーンが本作で一番笑えた。創意工夫があって良かったと思う。

(以下ネタバレあり)

 気になったのはジョンとジョーイの子ども、レイモンドの扱いだ。いわゆるミックスルーツのはずだけれど、そうは見えない(実際アジア人俳優のワイアット・ヤンが起用されている)。白人の父親の影響を全く受けないケースもゼロではないと思うけれど、現実的でないとも思う。あとジョンに輸血が必要になってレイモンドが血液を提供する場面があるけれど、16歳未満は採血できないはずなので、首を傾げてしまった(これはジョーイが融通を利かせられる病院だからと解釈できなくもないけれど、それだとジョーイが進んで我が子を危険に晒したことになり、話が整合しない)。

 こういう映画にそういう細かいことを求めるな、と言われるかもしれない。けれど細部の違和感が積み重なると、視聴の快適さが損なわれると思う。もちろん何がなんでもリアリティーを厳密に突き詰めろ、という話ではない。映画はそもそも作り物だし、例えばSFやファンタジーなど、非現実を扱うジャンルも当然ある。しかしどの映画においても、「こういう世界観だからこれはアリ、でもあれはナシ」みたいな法則はある。例えば一般的な人間の設定のキャラクターが、切られて青い血を流したら「ちょっと待てよ」という話になるはずだ。そういう法則違反は(その違反の度合いが強いほど)、映画の世界観に矛盾をきたし、破壊してしまう。

 レイモンドのそれはさほど深刻な矛盾ではないかもしれない。けれど「ちょっと待てよ」と思ったのも事実だ。そこで没入していた映画世界から弾き出されてしまうとしたら、残念なことだと思う。

 もう一つ残念だったのは、クワンの側近のムキムキ茶髪男性の扱いだ。顔面タトゥー、二丁拳銃、独特な銃の構え方など、まさに中二病キャラだけれど(たぶん一度も名前が呼ばれなかったので、私は「中二病くん」と命名して見ていた)、最後は嘘でしょ? と声が出るほど呆気なく退場してしまう。ちなみにその時のジョンの射撃もほとんど法則違反な気がした。

 そんな風に首を傾げるシーンが散見されるものの、総じて楽しめるポップなアクション映画だったと思う。また台北に行きたくなった。

 『ドライブ・クレイジー:タイペイ・ミッション』は10月24日(金)公開。

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