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中華BLの「甘くない青春」、受験と家庭環境の重圧にさらされる中国の若者たち

近年、ドラマ化やアニメ化、さらには小説の海外展開を背景に、中華BLは世界的に急速な盛り上がりを見せています。

壮大な世界観と繊細な描写をあわせ持ち、厳しい規制と激しいネット小説競争という環境の中で磨き上げられた中華BLは、もはや「恋愛もの」の枠を超えた、一つの文化とも言えるでしょう。

日本では、これまでに知られてきた中華BLの多くが「仙侠」や「武侠」といったジャンルに偏っている側面があるため、「中華BL=古風」というイメージを持っている方も多いかもしれません。

中華BL『伪装学渣』中国で販売されている関連グッズ

しかし、実は中華BLの世界はまだまだ奥深いのです!
日本ではあまり耳にしないジャンルとしても、ループ系BL、eスポーツ系BLなど、さまざまな作品が存在しています。

そこで今後は、中国の社会的背景や時事的なトピックも交えながら、なぜこうした人気ジャンルが生まれたのか、その背景についても解説していきます。あわせて、人気ジャンルごとに、中国で長年高い人気を誇りながらも、日本ではまだあまり知られていない「本場の中華BL名作」をご紹介していきます。

そして今回取り上げるのは、中国で最も幅広い読者層に支持されているジャンル——「学生BL(校园文)」です!


日本の学生ものとの違い


日本でも学生ものは非常に人気の高いジャンルですが、中国ではこの題材に異なるニュアンスが感じられます。

中国の学生BLの特徴は、中国特有の試験制度である「高考」による厳しい学業プレッシャーと、複雑な家庭環境に起因しているのではないでしょうか。激しい競争の重圧を背負う学生たち——その中で出会う二人の関係は、時にピュアで未熟でありながら、時にどこか重たい依存にも似た感情を帯びつつ、静かに育まれていきます。

それは、砂糖のように甘いだけのものではなく、どこか緑茶のようなほろ苦さを含み、淡い青というよりも、わずかに重みを帯びたインディゴブルーに近い——そんな独特の質感を持つ、特別な“学生時代で芽生える恋心”なのです。


「高考=大学受験」と「原生家庭=家庭環境」


中国特有の大学統一試験制度である「高考」は、日本の「共通テスト」と形式的には似ている部分もありますが、大きく異なる点があります。
それは、中国の学生がこの「高考」という一度きりの統一試験の結果によって、進学できる大学や専攻がほぼ決まってしまうという点です。

このような仕組みのもとで、「高考」は中国の学生にとって、将来の進路を左右し、人生を大きく変えうる、ほぼ唯一のルートとも言える存在となっています。言い換えれば、学生になったその日から課される、最も重要な“メインミッション”とも言えるでしょう。

中華BL『恒星時刻』グッズビジュアル(中国の高校制服姿)

さらに、近年中国の若者の間でSNSを中心によく使われる言葉に「原生家庭」があります。これは主に、自身の家庭環境について語る際に使われる言葉であり、多くの場合、悩みや葛藤を伴う文脈で用いられます。

たとえば、過酷な学業競争の中で、子どもに大きな期待を寄せる親からのプレッシャーやコントロール、あるいは複雑な家庭構成による精神的負担など——中国の学生たちは、学業だけでなく、家庭関係においても重いプレッシャーを抱えているケースが少なくありません。

こうした背景を反映するように、中国の学生BL作品では、登場人物の成績や受験をめぐる描写、再編家庭などの家庭環境問題、さらには社会の変化を映し出す時代背景などが、重要な要素として頻繁に描かれています。
だからこそ、こうした現実に根ざした“深みのある味わい”が、中国の学生BLの大きな魅力として読者の心に残るのです。


中国の学生BL三大名作


中国では、読者の間で広く認知されている中華BL小説の「学生BL三大名作」が存在します。これから、それぞれの作品の印象的な名セリフを導入として用いながら、この三作を紹介します。

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『某某』木蘇里

「人间骄阳正好,风过林梢,彼时他们正当年少。」
(陽光がちょうどよく照り、風が林の梢を揺らす──その時、彼らはまだ若く、青春の真っただ中だった)

『某某』

傲慢で反抗的、押しに弱く引きには強いクール系
× 
自分をとても大事にする怠け者のお坊ちゃま

「兄弟」から「恋人」へ、すれ違いと再会の物語

・STORY
父親の都合で引っ越してきた盛望(ション・ワン)は、転校先の学校で校内一の秀才・江添(ジアン・ティエン)の前の席になる。しかし江添は盛望に対し不機嫌な態度をとり、険悪な雰囲気になってしまう。
さらに家に帰ると、父親の再婚相手が江添の母親であることが判明。2人は兄弟として同じ家で暮らすことに。正反対の性格の盛望と江添。最初こそ反発し合うも、新たな家庭と学校で日々を共に刻むうちに、2人は次第に心を通わせていく。

(実写化あらすじ一部引用)

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『撒野』巫哲

「你是我用余光就能看清的人」
(君は、視界の端にいようとはっきりとわかる存在だ)

『撒野』

爽やかでどこか尖った一面を持つ超優等生

無愛想な不良に見えて実は優しく責任感の強い少年

二人とも強い「强x强」作品!※リバ注意

・STORY
お前がいれば、俺はしっかりとこの世界に立っていられる。優等生で裕福な暮らしを送っていた蒋丞(ジャン・チェン)は、自分が養子であることを知り、「本当の故郷」製鋼工場のある町に帰ることにした。
そこに実父がいるが、毎日酒とギャンブルに溺れている。一変した環境に慣れない蒋丞は悶々としている時に、この町で生まれ育ったヤンキーの同級生・顧飛(グー・フェイ)に出会う。二人が寄り添いながら成長していく「救い」と「希望」の物語がここから始まる。 

漫画あらすじ引用

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『伪装学渣』木瓜黄

「一起去啊,更远的地方。」
(一緒に行こう、もっと遠くへ)

『伪装学渣』

生涯独身予備軍の芝居上手な攻め
 × 
気に入らなければ即やる、容赦なしの受け

シリアス顔でふざけ倒すコメディ作品

・STORY(amazonあらすじ翻訳引用) 
クラス分けを経て、校内で話題の“問題児”である二人が、同じクラスになっただけでなく同席の隣同士になるところから物語が始まる。
本来はトップクラスの優等生でありながら、あえて“落ちこぼれ”を装い、全身がまるで芝居のよう。試験ではわざと下位を争い、表向きは毎日ゲームに明け暮れているが、実際には陰で真面目に勉強している。

amazonあらすじ翻訳引用) 



最後に


ここまで見てきたように、中国の「学生BL(校园文)」は単なる青春恋愛ではありません。厳しい「高考」という制度のもとで背負わされる将来への重圧、そして「原生家庭」に象徴される複雑な家庭環境——そうした現実の重みが、物語に独特の深みを与えています。

中華BL『撒野』中国で販売されている関連グッズ


だからこそ、そこで描かれる関係性は、
ただ甘いだけではなく、未熟さや不器用さ、時に痛みや依存にも似た感情を伴いながら、
ゆっくりと形を成していきます

今回紹介した三作品、『某某』『撒野』『伪装学渣』はいずれも、まったく異なる切り口を持ちながらも、「過酷な現実の中で、それでも誰かと出会い、変わっていく」という共通のテーマを内包しています。

『某某』
家族と再編される関係の中で芽生える静かな感情

『撒野』
閉塞した環境の中で見つける“救い”と“希望”

『伪装学渣』
仮面の裏に隠された本音と成長をコミカルに描く物語

それぞれの物語が示しているのは、「学生時代」という限られた時間の中でしか得られない、かけがえのない経験です。

中華BL=古風・ファンタジーというイメージを持っていた方にとって、この“現実に根ざした学生BL”は、新たな入り口になるかもしれません。

そして何より——彼らが全力で駆け抜けたあの時間は、恋愛という枠を超えて、「人生の中で誰かと出会い、共に変わっていくこと」の尊さを教えてくれます。もし少しでも気になったなら、ぜひ一度、その世界に触れてみてください。


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